ビジネスの場では頻繁に何か問題が現れるもので、順調に業務をすすめられることのほうが珍しいと感じている方も少なくないでしょう。

とはいえ、発生した問題を放置しては仕事が成功することはありません。

問題の根本的な原因がわからないままプロジェクトの目標が未達で終わってしまったり、そもそも問題がどこにあるかわからずじまいになったりする場合も少からずあります。

問題が発生した際に、原因がわからないままただやみくもに対処するだけでは、根本的な解決は見込めません。

今回紹介する「現状問題構造ツリー」は、作成することで問題点に対する思考が整理され、根本原因を特定することができます。

具体的な作成方法と作成時のポイント、おすすめのツールも合わせてご紹介しますので、是非ご覧ください。

現状問題構造ツリー(CRT)とは

 

現状問題構造ツリー(Current Reality Tree / CRT)とは、TOCの思考プロセスといわれる問題解決方法のひとつです。

TOCは、例えば生産工程やプロジェクトスケジュールの中でボトルネックとなる箇所を特定・強化し、全体の生産性を高める手法です。

そのTOCにおいて、ボトルネックや問題点を突き止めるために活用される手法は「思考プロセス」と呼ばれます。

思考プロセスには5つのフレームワークがあり、そのうち現状問題構造ツリーは、現状の問題点を特定するために用いられます。

因果関係と結果、もしくは目的と手段の関係を構造化することで、今起きている問題を整理し、根本的な原因を突き止めるのが目的です。

参考:TOCの思考プロセスを利用した問題解決手法を紹介!

現状問題構造ツリーの完成イメージ

ここでは、実際に作成する際にイメージをしやすいように、例として作成した現状問題構造ツリーを使って解説します。

問題を分析していくと、上記の図のようなアウトプットが完成し、問題の根本原因が特定できます。

現状問題構造ツリーの作成方法

1. よく聞く・よく悩む問題を洗い出す

まずは、構造を意識せずにメンバーからよく聞く問題点であったり、自身でよく悩む問題点について洗い出しをします。

上記の図では、灰色にハイライトされた項目がよく聞く・よく悩む問題になります。

  • 全プロジェクト/タスクに十分なリソース割り当てができない
  • 優先度の判断基準が人によって異なる
  • 意思決定が遅れる
  • 課題への対応が遅れる
  • 手戻りが発生する
  • 使用の追加変更が頻発する
  • 計画行程通りに進捗しない
  • プロジェクト/タスクのリードタイムが長期化する

2. 原因と結果の因果関係を結ぶ

続いて、洗い出した問題を因果関係で結んでいきます。

例えば「手戻りが発生する」原因は、「仕様の追加変更が頻発する」ことの結果であるように、
それぞれの問題が起きているのは、何が原因なのかをつなげていきます。

その際に、スタートで洗い出していた問題点とは異なる新たな問題が見えてきます。

上記の図だと、ハイライトのない白色のボックスがステップ2で見えてきた新たな問題です。

3. 根本原因を特定する

新たな問題点を発見しながら因果関係を結んでいくと、上記の図が完成します。

ここでようやく問題の根本原因が判明します。
図の中で、矢印のスタート地点となっている箇所が根本原因になります。

今回の事例では、下記4つが根本原因にあたります。

  1. 早く着手しなければ間に合わない(という焦り)
  2. リソースは限られている
  3. 同時に意思決定すべき事項が多すぎる
  4. 優先度の判断基準が人によって異なる

これら4つの問題が、すべての問題の発生源となっています。

4. 根本原因を分類して、対処すべき問題を見極める

最後に、特定した根本原因を下記3つに分類します。

  1. 短期間で自分たちが影響を与えられる問題
  2. 時間はかかるが、自分たちで影響を与えられる問題
  3. 自分たちでは影響を与えることができない問題

Aに分類される問題こそ、対処すべき問題にあたります。
すぐに対処法を検討して、改善を進めるべき問題になります。

BやCに分類される問題は、即座に対処できず、また改善できる可能性も低い場合があるため優先度は下がります。

対処法の検討方法については、「対立解消図」が生きてきます。
別記事で詳しく解説していますので、リンクより是非ご確認ください。

現状問題構造ツリーの作成に役立つツール

現状問題構造ツリーは、ビジネスシーンでよく使われるツールをはじめ、Web上にあるサービスを使って簡単に作成できます。

ここでは、現状問題構造ツリー作成に役立つツールを紹介します。

現状問題構造ツリーはTOC思考プロセスの中でも最初に取り組む箇所です。

適切なツールを導入すれば、他のツリーを作成する際にも役立ちます。

エクセル(Excel)

現状問題構造ツリーは、ビジネスシーンで頻繁に使われるエクセルで簡単に作成できます。

図表を挿入し、それをカードに見立てUDEを書き込んでいけば、現状問題構造ツリーが完成します。

セルによく聞く・よく悩む問題を記載して作図するのも方法のひとつです。

作成が容易であり、1ブック内でツリーが完結できるため、全体が把握しやすいツリーを作れます。

ただし、セルを使う場合は場所が固定されているため、見やすく仕上げるのが困難な点には注意しましょう。

パワーポイント(PowerPoint)

パワーポイントは図形を使って表やグラフを作るのに向くツールなので、よく聞く・よく悩む問題をカードとしてスライド上に貼り付けられます。

また、原因と結果の関係を結び付ける際にも、矢印などを使って視覚的に分かりやすいツリーを作成しやすいツールです。

ただし、現状問題構造ツリーは記載する情報が多く、スライド1枚でまとめるのは困難です。

まとめ:現状問題構造ツリーで根本的な問題を見つけよう

現状問題構造ツリーは、プロジェクト内の問題点を明確にし、問題解決の糸口を示してくれます。

問題を細かく細分化し、中核問題を明らかにする際に向いているでしょう。

もしプロジェクトの進行中に問題が発生した場合、この記事を参考に現状問題構造ツリーを作って、問題点を洗い出してみてください。

TOC思考プロセスを身に付けることでスムーズに問題解決につなげられますが、急に始めて運用するというのはなかなか難しいでしょう。

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