「プロジェクトを進めるうえで障害が多くメンバーが積極的に行動してくれない」という課題を抱えているプロジェクトマネージャーの方も多いのではないでしょうか。
プロジェクトの障害を取り除き、よりスムーズに進行するためには前提条件ツリーが役立ちます。
前提条件ツリーとは、障害の洗い出しとその克服方法を模索するためのもので、TOCにおける問題解決のフレームワークのひとつです。
前提条件ツリーを作成することで、より精度の高いプロジェクト管理が実現します。
本記事では、前提条件ツリーの作成方法を具体的に解説します。
前提条件ツリー(PRT)とは?
前提条件ツリーはロジックツリーの一種です。
目的の達成に向けてどんな障害があるのか、そしてそれをどのように克服していくかを決めるために作成します。
ここでは、前提条件ツリーの役割や目的を紹介します。
思考プロセスにおける前提条件ツリーの位置付け
思考プロセスはTOCの手法のひとつで、プロジェクトの制約(ボトルネック)を見つけて問題点を明らかにするための考え方です。
「何を変えるか・何に変えるか・どのように変えるか」という3つの問いかけに回答する形で、問題の抽出や課題策の検討を実施します。
前提条件ツリーは、思考プロセスの3つの問いのうち、「どうやって変えるのか?」という質問に答えるために作成します。
前提条件ツリー以外にもロジックツリーは用いられ、以下順序で作成されます。
- 現状構造ツリー
- 対立解消図
- 未来構造ツリー
- 前提条件ツリー
- 移行ツリー
上記の順序でツリー作成を進めることを5ツリー法と呼び、対処すべき問題への賛同を得やすい手法です。
TOCの思考プロセスについては以下記事でも紹介していますので、是非ご覧ください。
関連記事:TOCの思考プロセスを利用した問題解決手法を紹介!
前提条件ツリーの目的
前提条件ツリーでは、目的の達成に向けてどんな障害があり、どう克服していくかを明確にします。
例えば、「自社サービスの売上高を前年対比30%増やす」という最終目標を設定した場合、設定した目標に対する障害としては次の要因が考えられます。
- サービスに対する認知度が低い
- 販売経路が乏しい
さらに、上記をもとに次の2つの対策を考えることが可能です。
- サービスの露出機会の増加
- 販路を拡大すること
次に以上の対策を中間目標として、設定した中間目標の障害が何なのかを考え、対策を具体化していきます。
他にも例えば、優れたシステムを作るには優秀な人材を採用する必要があり、そのために採用戦略の見直しや予算の増加といった解決策を考えられるでしょう。
このようにして目的達成のための障害を克服していきます。
図に起こす際には、下記のように最終目標に対する目標を、六角形で示して、障害への対策を四角形でブレイクダウンしていきます。
前提条件ツリーの作成方法
ここでは、前提条件ツリーの作成方法を以下の流れでご紹介します。
- ステップ1:目的を明確にする
- ステップ2:目的を達成する際の障害を洗い出す
- ステップ3:障害を克服するために必要な中間目標を定める
- ステップ4:ステップ2からステップ3を繰り返す
- ステップ5:全ての中間目標の実施順序を整理し、ツリー構造にする
- ステップ6:完成したツリーをレビューする
ステップ1:目的を明確にする
まずは、思考プロセス「対立解消図」で判明した問題解決の方向性から、問題解決の目的を明確にします。
目的が抽象的なままだと、具体的な障害が見えてきません。
例えば、「納期遵守率を20%向上させる」といった定量的な目的を設定できると解決の精度が増します。
結果として具体的な障害を特定でき、アクションプランまでをも策定しやすくなります。
ステップ2:目的を達成する際の障害を洗い出す
目的が定まれば、達成するための障害を洗い出します。
ステップ3:障害を克服するために必要な中間目標を定める
次に、それぞれの障害を克服するための解決策を中間目標として定めます。
ステップ4:ステップ2からステップ4を繰り返す
目的に対する障害を洗い出したように、中間目標にも障害を設定しましょう。
ステップ2から4までの流れを繰り返すことで、漏れなく障害を抽出でき、より精度の高い中間目標が完成します。
ステップ5:全ての中間目標の実施順序を整理し、ツリー構造にする
今までに挙げた障害と中間目標の依存関係を考慮しつつ、時間順序に従ってツリー構造を作成します。
ステップ6:完成したツリーをレビューする
最後に、完成した前提条件ツリーをメンバー同士で評価します。
会議を開いて評価をする場合、なるべく多くのメンバーの目を通しましょう。
多数の人員でレビューしたほうが、より目標や障害の抜け漏れがなくなり精度が高まるためです。
特に同じプロジェクトのメンバーには、プロジェクトをスムーズに進めるためにも情報共有を徹底します。
抽出した障害を取り除くためには、前提条件ツリーの後に移行ツリーを作成します。
移行ツリーの考え方や作成方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
前提条件ツリーの作成に役立つツール4選
ここでは、前提条件ツリーの作成に役立つツールを4つ紹介します。
1. エクセル(Excel)
普段使用している方も多いエクセル(Excel)で、前提条件ツリーが作成可能です。
エクセルには「SmartArt」という機能があり、比較的初心者の方でもすぐに作成できます。
ほかのツールを比較すると、多くの人が使い慣れているというメリットがあります。
Office Onlineを使用すればメンバー同士でリアルタイムな情報共有も可能で、今までOfficeを使用してきた企業におすすめです。
色やツリーの形、文字など自由に変更可能なので、自分が見やすい前提条件ツリーを作成しましょう。
2. パワーポイント(PowerPoint)
パワーポイントでも前提条件ツリーの作成が可能です。
パワーポイントの場合は、白紙のスライドから図形や線を挿入して作成します。
カスタマイズ性が非常に高く、図や線引きを自由に決めることが可能です。
組織に合ったロジックツリーを徹底的に追及したい場合にはパワーポイントが向いています。
3. Cacoo(カクー)
出典:Cacoo(カクー)
Cacoo(カクー)は、作図に特化したツールです。
豊富なテンプレートとシンプルなUIが特徴で、素早く前提条件ツリーを作成できます。
図に対するフィードバック機能もあるので、気軽に作成した図に対する意見交換ができコミュニケーションも捗ります。
個人であれば月額最低660円と手ごろな価格帯です。
無料のツールでは満足できず、さらに効率良くロジックツリーを作成したい方におすすめです。
14日間の無料トライアルも用意されてます。
料金プラン(税込 or 税抜) | プロプラン:¥ 660/月 チームプラン:¥ 1,980~/月 |
主な機能 | シート数無制限 豊富なテンプレート リンク1つで簡単共有 ビデオ通話コメント エクスポート 外部サービス連携 サイトへの図の埋め込み プレゼンテーション |
ユーザー数 | プロプラン:1人 チームプラン:3人~ |
公式サイト | https://cacoo.com/ja/ |
4. XMind(エックスマインド)
XMindはマインドマップ作成とブレインストーミング機能を備えたツールですが、形状が似ているため前提条件ツリーを含むロジックツリーの作成にも便利です。
シンプルで見やすいUIに簡単な操作、かつ日本語にも対応しているため、慣れない方でも比較的すぐに使用できます。
テンプレートがありながらも手書きでの作図にも対応しているため、効率性とカスタマイズ性の両方が備わっています。
前提条件ツリー以外にも、組織図や魚骨図の作成も可能です。
図の作成自体は無料アカウントの作成のみでも可能ですが、より高度な機能を使いたい場合は有料版がおすすめです。
プラン | 無料版 | 有料版 |
月額 | 無料 |
【通常価格】
4,400円(税込)/半年 6,800円(税込)/年 【アカデミック割引適用】 2,618円(税込)/半年 4,081円(税込)/年 |
機能 | マインドマップ等の作図 |
画像の貼り付け
画像スタイルの変更 パスワード設定 ブランチの自由配置 トピック形状の制限 |
公式サイト | https://jp.xmind.net/ |
まとめ:前提条件ツリーで問題解決方法を明確にしよう
今回の記事の内容を以下にまとめました。
- 前提条件ツリーは、TOCの思考プロセスで用いられる
- 前提条件ツリーは、思考プロセスの「どうやって変えるのか?」に答えるためのもの
- 前提条件ツリーの作成では、障害の洗い出しとその克服方法の設定が重要
- 前提条件ツリーの作成にはツールの使用がおすすめ
TOCは、単なるマネジメントの概念にとどまらない、現場や実践で使える高度なマネジメント手法です。
組織の状況に合わせた導入すると、組織規模や業種を問わず業績改善やプロジェクトのスムーズな進行に寄与します。
TOCの導入の際には、前提条件ツリーを含む5つのツリーを適切に作成することが求められます。
ビーイングコンサルティングは企業各々に適切なTOCの導入と運用のサポートを続けており、今では豊富な導入実績があります
TOCの導入にご興味をお持ちの方は、こちらの資料をダウンロードしてみてください。