プロジェクトを開始する際に、予定通りにタスクが進まないために納期ギリギリになってしまう、ということはありませんか。

タスクが停滞して完了しないままで次のタスクをはじめた結果、かえって手戻りが多くなったご経験をお持ちかもかもしれません。

そのような事態にならないために、プロジェクトの開始前の準備を手厚くする「フルキット」が重要となります。

プロジェクト開始前には、事前計画や工程表を作成したり、必要なリソースを準備したりといった手続きが欠かせません。

この記事では、フルキットの活用方法や注意点について解説しています。

フルキットを最大限活用すれば、プロジェクトの成功に大きく近づくでしょう。

フルキットとはプロジェクト前の準備段階

プロジェクト開始前の準備が不十分だと、作業の抜けや漏れが発生し、納期遅れに繋がる恐れがあります。

フルキットは、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)の考え方のひとつで、プロジェクトやタスクの開始前の「万全な準備」を促す手法です。

ちなみにフルキットはもともと軍事用語として用いられていました。

「戦いの前に十分な訓練を行っていれば、戦場において血を流すリスクを最小限に抑えられる」という考え方です。

現在はその考え方がビジネスの領域に反映され、「プロジェクトの準備を万全にすること」をいう意味で活用されています。

フルキットによって事前にやるべきことを想定しておくことで、滞りなくプロジェクトを進められるでしょう。

関連記事:組織パフォーマンスの最大化を実現するプロジェクト管理手法のCCPMとは?

プロジェクトを開始する際にフルキットを活用するメリット

プロジェクト開始前にフルキットを活用するメリットを3つご紹介します。

  • プロジェクトの成功率が高まる
  • 手戻りが減る
  • 業務の効率化が図れる

プロジェクトの成功率が高まる

フルキットを活用する際は、プロジェクト開始前に中間目的や最終目標を設定します。

設定した目標と運用中の実績を常に比較できるため、軌道修正を行いやすくなり、万が一問題が発生しても迅速な対処が可能です。

その結果、設定した目標を達成しやすくなり、プロジェクトの成功率が高まります。

手戻りが減る

タスクの手戻りが減ることも、フルキットを活用するメリットのひとつです。

手戻りが発生する原因のひとつとして、「早くタスクを開始したい」という想いから必要な情報がすべて整う前にタスクを開始してしまうことがあります。

このような場合でも、プロジェクトの開始前にチェックリストを作成し、必要な情報がすべて揃っていることを確認することで、作業のミスや抜け・漏れを防ぐことも可能です。

作業ミスや抜け・漏れが減少した結果、おのずと手戻りのリスクが抑えられます。

業務の効率化が図れる

フルキットを活用し、タスクが万全に整理されていれば、業務が滞る可能性は低くなります。

あらかじめタスクが整理されているため、プロジェクトを円滑に進められるからです。

また、プロジェクト進行中に問題が生じると、所々のタスクが中断し、現場では別のタスクを先に進めようとする場合も珍しくありません。

上記はプロジェクト管理で「悪いマルチタスキング」と呼ばれる問題です。

悪いマルチタスキングが発生すると、次第にプロジェクト全体のパフォーマンスが落ちてしまうため、いかにシングルタスキングへと軌道修正できるかが重要になります。

そのためには、プロジェクト開始前にフルキットを活用し、必要なタスクと想定できる課題を明確にする必要があります。

フルキットを活用する手順

フルキットの手順は次の通りです。

  1. 目的の明確化
  2. 目的を基に最終目的と中間目標を作成する
  3. 目標達成の障害を抽出する
  4. 障害を取り除くための計画を立てる

正しい手順でフルキットを活用すれば、プロジェクトをスムーズに進められるでしょう。

ここでは、4つの手順に沿ってフルキットの活用方法を詳しく解説します。

1.目的の明確化

まずは、プロジェクトの目的を明確にすることが大切です。

目的とはプロジェクトチームの目指すべき方向性のことです。

一方、目標は目的を達成するために必要となる、具体的な行動を表しています。

目的を明確に設定しなければプロジェクトを進める方向性や課題がわからず、具体的な目標を立てることも難しくなるでしょう。

だからこそ、プロジェクトが開始する前に優先的に目的を設定しておく必要があります。

2.目的をもとに最終目標と中間目標を作成する

プロジェクトを達成するためには、最終目標とその最終目標に到達するまでに必要な中間目標を作成することが重要です。

中間目標を達成してはじめて最終的なゴールにたどり着けるため、やるべきタスクを必要十分に細分化させることが重要になります。

タスク内容が明確になれば、おのずと具体的なアクションプランが定まり、適切な担当者を決められるでしょう。

このような考え方は、5つあるTOC思考プロセスのなかで「前提条件ツリー」を作成する際にも活用されています。

前提条件ツリーとは、最終目標と中間目標を達成するための障害を可視化し、適切な解決策を考える方法です。

フルキットを実施する際の手順と非常によく似ているため、前提条件ツリーを使いながらプロジェクトの準備を進めるのも良いでしょう。

前提条件ツリーに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:前提条件ツリーの作成方法【TOC思考プロセス】

3.目標達成の障害を抽出する

続いては、目標を達成するために障害となる問題点をあぶり出します。

小さな事柄であっても、後に大きな障害にもなり得ます。

目標達成の障害を抽出しておけば、一つひとつ課題に対して具体的な対処法を見つけられるでしょう

4.障害を取り除くための計画を立てる

次は、先に抽出した障害を取り除くための計画を立てます。

取り除くためにかかる時間やコスト・人員などを盛り込み、プロジェクトの納期を意識して、タスクをどのように進行するかスケジュールを組みます

起こりうる障害をひとつずつ解消すれば、スムーズにプロジェクトを開始できるでしょう。

フルキットを活用するコツ

ルキットの考え方や手順がわかったところで、うまく活用するコツをお伝えします。

  • フルキットリストを構築する
  • プロジェクトの段階ごとにフルキットを考える

次から、詳しく解説します。

フルキットリストを構築する

前章のフルキット活用の手順で検討した項目は、リストアップしながら整理します。

明確にしたプロジェクトの目的から、達成のために必要な要件や目標/達成を阻害する障害などを記載します。

リストで整理することで、マイルストーンごとに達成しておくべき目標や、後回しにしても問題ないものを発見しやすくなります。

 

プロジェクトの段階ごとにフルキットを考える

このコツは、特に大規模なプロジェクトほど必要になります。

小さいプロジェクトであれば、プロジェクト開始前のフルキットを活用して最終ゴールまで走り切ることができますが、
大規模なプロジェクトになると、プロジェクト開始前には見えていない課題や作業があったり、確証のないまま意思決定をしてプロジェクトが進んで行くこともあります。

そこで、前章で検討したプロジェクトのマイルストーンと、作成したフルキットリストを照らし合わせながら
マイルストーンごとに細かくフルキットを活用することで、プロジェクトの遅延を防止します。

 

フルキットを活用する際の注意点

 

フルキットを活用する際には、次の3つの注意点があります。

  • チームメンバーとのコミュニケーションを軽視しない
  • プロジェクトスコープ外の要素に目を向けない
  • タスク同士の依存関係に注意してスケジュールを立てる

注意点を意識してフルキットを活用すると、よりスムーズな準備活動を実践できます。

チームメンバーとのコミュニケーションを軽視しない

チームメンバー同士のコミュニケーションが軽視されれば、タスクの重複や漏れが起きる可能性が高まります。

なぜなら、チームメンバーのなかでも、プロジェクトの見解やタスクの理解度が異なるケースがあるからです。

そのためにはチームメンバーの役割はもちろんのこと、定期的なタスクの進捗管理が必要です。

チームメンバーとのコミュニケーションが円滑であれば、情報の共有がしやすくなるため、プロジェクトを効率よく進められるでしょう。

プロジェクトスコープ外の要素に目を向けない

プロジェクトスコープとは、プロジェクトの「作業範囲」のことです。

プロジェクトスコープ外の業務に目を向けてしまうと、プロジェクトに他の要素が加わってしまったり、本来の目的からずれてしまう可能性が高くなります

そのため、実行するべき作業と実行する必要のない作業は明確にしておくことがポイントです。

また、プロジェクト開始前にプロジェクトスコープを、チームメンバー全員で情報共有を行うことが重要です。

タスク同士の依存関係を注意してスケジュールを立てる

プロジェクトのスケジュールを立てる際は、各タスクの依存関係を意識することが大切です。

たたとえば、A・Bの2つのタスクがあり、Aのタスクが完了しないとBのタスクには手が付けられないような関係があったとします。
その場合、スケジュールを立てる際に、AとBのタスクは同時に進めることができないことを注意してスケジュールを組みます。

詳細に関しては、下記記事が参考になりますので、ご覧ください。

参考記事:クリティカルパスとは?プロジェクト管理者が押さえたい特定方法の4手順

まとめ:フルキットを活用してプロジェクトの成功率を高めよう

 

フルキットを活用し、プロジェクト開始前に必要な準備を十分にしておけば、進行中にトラブルが発生しても対処に時間がかからなくなります。

フルキットを活用する際には、まず最終目標を決めて、必要に応じて中間目標を設定して「今やるべきこと・今やらないこと」を段階的に決めていくことが重要です。

フルキットは、プロジェクトマネジメントのCCPMの考え方のひとつです。

CCPMは、相互に関連するタスクに優先順位を決め、最も効率的な方法でプロジェクトを実現させるプロジェクト管理方法で、理解しておくと、よりスムーズなプロジェクト進行が可能になります。

ビーイングコンサルティングは、CCPMの理論を用いたコンサルティングサービスを提供しています。

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