TOCとは
TOC(Theory of Constraints:「制約条件の理論」)は、「現在から将来にわたって繁栄し続ける」 という企業の目的を達成するため、それを妨げている”制約条件(Constraints)”に集中して改善することで、企業全体の業績改善/向上が期待できる経営改善/マネジメントの手法です。
簡単に表現すると、全ての課題に対策を打つのではなく、その課題の根本原因となっているごく少数の制約条件に対策を打つことで、最小の手間/時間で最大の改善効果を得ることができるマネジメント手法となります。
また、『どんなに複雑なシステムでも、常に、ごく少数の要素に支配されている』という仮定から出発した包括的な経営哲学であり、「ごく少数の要素」つまりそれは「制約条件」がシステム(組織)のパフォーマンスの鍵を握っていることを指します。
TOCの考えを各事業に導入して定着させることで、どのような規模の組織でも、最小の変化で短期間のうちに改善成果を上げることができます。弊社では、TOCに則って各事業を取り巻く「制約条件」にフォーカスし、組織を改善し続けるための継続改善プロセスを提供。各事業環境を取り巻く制約条件に合わせた汎用的で実務的なソリューション(アプリケーション)を導入し、様々な組織のパフォーマンス改善を行います。
組織における「制約」とは

組織を「バラバラな要素の集まり」と考えるのではなく、組織を「相互に関係し依存しあう要素からなる一体のシステム」と考えてみましょう。すると組織の中の何の各要素が、どこに影響を与えているのかが見えてきます。その相互に影響しあう要素の根本的な要素こそが「制約」という概念です。
組織は、組織固有の目的を持っており、関係のある組織/外部と常に影響しあいます。ここで重要になるのは「組織においてどのメンバーの活動と結果も、他のメンバーの活動と結果に依存あるいは影響を及ぼす」ということです。そのため組織としての目的と目標を達成するには各要素の連携が非常に重要です。

TOCを提唱したエリヤフ・ゴールドラット博士は組織を一本の鎖に例えました。
鎖(組織)を構成する1つひとつの環(要素)は、人、設備、部門、工場、サプライヤーなどの組織の構成メンバーのほかに、製品・サービスのプロセスや成果物などが挙げられます。また組織内の活動を制限または促進する方針やルールも要素に含まれます。
組織が目的や目標を達成するためには、組織に属する要素が生んだ結果の連携が必要不可欠。言い方を変えれば、組織が目的や目標をどこまで達成できるかは、ごく少数の弱い要素がどのような動きをするのかにかかっているのです。
各要素をつなぐ制約という繋がり、関係性を強くすることで、これまで見えてなかった新たな制約が見えてきます。問題の解決を繰り返し、問題を掘り下げることで見えてくるのが、大部分の問題の発生源になっている根本の問題である制約の「中核問題」。ここを解決することで組織のパフォーマンスを阻害しているものを取り除き、「3期連続利益が低下している」などの大きな問題も解消します。
制約の特定と、非制約との区別
TOCが他の経営改善手法と決定的に異なる点は、制約とそれ以外(非制約)の区別を明確にすることです。
この区別は、パフォーマンスの弊害はどこで起きてるのかをきちんと認識し、何をどこに集約すればいいのかを明確にするために行います。非制約が全く関係ない、重要でないといういうものではなく、あくまでも1つの問題解決するための、制約のピックアップ作業です。
『工場での生産能力を向上させることに成功した結果、在庫を過剰にかかえてしまった』といった、制約の1つを改善したことによる新たな問題が見えてきます。これを「制約を別のところに移す」と考えます。
制約を別のところに移した場合、また1からプロセスを見直す必要があります。
継続改善プロセスのフレームワーク
まずはTOCを落とし込んだフレームワークの1つ「5段階集中プロセス」を使って継続的に制約を解消していきます。

STEP1 制約を見つける
業務の流れ(フロー)を最も遅くしている箇所を探します。
STEP2 制約を最大活用する方針を決める
非制約で可能な仕事は非制約に回し、制約は制約にしかできない仕事に専念させ、全体のフローを大きくします。
STEP3 制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる
ステップ3の実行により、非制約はフル稼働しなくなり、フローによっては非制約の余裕が生まれます。この余裕を新たな利益を生み出すことに使うことができます。
STEP4 制約を強化する
要素の連携をより強化し、定着させます。
STEP5 制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る
新たに見つかった問題点や、そのほかの問題点を解決するため、新たに制約を見つけます。
思考プロセス
5段階集中プロセスを何周か回すと、制約が移動する度にフローが大幅に改善し、大きな余剰能力が生まれるはずです。そうすると、組織パフォーマンスを制限する制約は、人や設備能力の不足といった物理的な制約から、市場の需要(市場制約)や運用方針(方針制約)といった非物理的な制約に変わります。
非物理的な制約に適切にフォーカスするには4つの疑問に正しく答えて、何をすべきで何をすべきでないかを明確にしなければなりません。
- ・フォーカスがオペレーションの問題でなくなったら、どのように制約を見つけるのか?
- ・制約を最大活用するとはどういうことなのか?
- ・非制約を従属させるとはどういうことなのか?
- ・制約を強化する効果的な方法をどのように見つけるのか?
継続的改善プロセスのもう1つのフレームワークである「思考プロセス」は、フローの大幅改善で獲得した新たな競争力を、どのように長期間持続し、収益に変えていくかをという問題をより戦略的に行います。
「何を変えるか?」
ここでは組織のパフォーマンスを制限する一番根源の問題「中核問題」が何かを突き止めることから始めます。
「何に変えるか?」
「中核問題」の解決の方向性を定めます。その解決の方向性を理解するだけでなく、その解決の方向性が中核問題を解決すること、実行に移す際に障害となることを取り除くこと、マイナス反応を取り除くことを意識して、解決の方向性が中核問題を解決できるかを確認します。
「どのようにしてその変化を起こすか?」
この答えは、定めた解決の方向性を具体的な「実行のロードマップ」にすることです。実行の副作用と実行を阻害する障害を見つけて、それを克服するためのアクションとその実行順序を決めていきます。
そしてフローの大幅改善で獲得した新たな競争力を、どのように長期間持続し、収益に変えて行くかといった、より戦略的な面にフォーカスを移していきます。
思考プロセスには、「CRT:現状ツリー」、「EC:対立解消図」など、上記の3つのステップを実行するための思考ツールが提供されています。また、「どのようにしてその変化を起こすか?」の答えとなる「実行のロードマップ」は、「S&T(戦略・戦術)ツリー」という階層的なツリーを用いて表現。実際に現場では、CCPMを始めとしたTOCの全ソリューションはS&Tツリーを使用しています。