今回の内容は、“Bottom-up implementation of Multi-Project CCPM -Case study of Mazda, Japan-”(日本におけるマルチプロジェクトCCPMのボトムアップ導入 –マツダ株式会社の事例-)として、TOCICO国際カンファレンス2014@ワシントンで発表し、世界中のTOCコンサルタントから賞賛されたプレゼンテーションをベースとしています。 

前回、“Reliability-driven implementation(信頼駆動型インプリメンテーション)”、つまり、「解決策への信頼がイノベーションを加速させる方法」の事例のひとつとしてマツダ株式会社をご紹介いたしました。今回は、アルパイン情報システムの画期的な事例をご紹介します。

(マツダ株式会社の記事についてはこちらをご参照ください)

 背景
アルパイン情報システム株式会社は、車載音響機器事業や車載情報通信機器事業のメーカーであるアルパイングループの情報システムの設計・開発・運用・保守を担っており、日本のみならず、世界中のグループ企業の連携強化を支援されています。
自動車業界におけるビジネス変化が年々加速する中、アルパイングループ全体の組織能力の強化によって、よりスピーディに変化に適合する必要性が高まっていました。それは、IT化への促進につながり、アルパイン情報システムには、より短期間でシステム導入を要求される傾向が年々強まっていました。

しかし、現実はプロジェクトが計画通りには進まず、遅れ対策としてリソース追加、スコープ縮小、プロジェクト期間延長などが発生しており、限られたリソースで、より高いパフォーマンスを発揮する組織を実現する必要性に迫られていました。

 

 

 はじまり
2012年末、アルパイン情報システムの中では、「限られたリソースで、より高いパフォーマンスを発揮する組織の実現」に向けた活動が行われていました。プロジェクト管理からのアプローチを考えていた推進チームはCCPMに可能性を感じ、変化に向けたチャレンジをスタートさせました。

「とにかくやってみよう!」
2013年1月から3月までのプロジェクト限定でCCPMのトライアルを実施し、その可能性を検証しました。
予想通り、はじめからすべてが上手くいくことはありませんでしたが、改善点はあるものの全社展開することでの大きな効果を感じた推進チームは、課題の洗い出しと共に全社展開に向けた活動を開始しました。

当時のトップマネジメントの心強い支援もあり、2013年4月に全社展開に向けた活動がスタートしました。

しかし、現実は
「Yes=いいね!いけそうだ!」
「But…=CCPMへの全幅の信頼/確証はまだなし
               悪いマルチタスクを解消するためのプロジェクトの凍結はすぐにはできない
               パイプラインマネジメント(プロジェクト投入管理)も簡単ではない」
という2つの思いが交錯し、まずはCCPMへの信頼/確証獲得のために全プロジェクトの見える化からスタートすることを決断されました。

 

 ○ターニングポイント
2013年7月、全プロジェクトの見える化から4ヶ月後、大きな転機が訪れます。
その当時、全プロジェクトのバッファやリソースの負荷状況が見えるようになっていました。毎日の「朝会(プロジェクト単位)」と「プロジェクト調整ミーティング(マネジメント層)」の課題エスカレーションの実行管理サイクルも定着し始めた中、トップマネジメントやミドルマネジメントはある“事実”に気づきはじめていました。

多くのプロジェクトが赤バッファやそれを超える状態、さらにプロジェクト自体の難易度が年々上がっている上に、リソースも過剰負荷になっており、支援したくても打てる支援策も数少ない状態にありました。
プロジェクトの詰め込みすぎで悪いマルチタスクが蔓延してリソースが疲弊しているという“事実”が明らかになったのです。

実は、トップマネジメントやミドルマネジメントは以前からこの“事実”に薄々は気づいていました。それが、見える化によって現実に目に見えるようになり、リアルに感じ取ることができるようになったのです。

トップマネジメントもミドルマネジメントも“プロジェクトの詰め込みすぎで悪いマルチタスクが蔓延してリソースが疲弊している”という問題に合意し、それを解消するための対策実行への活動を開始します。
この時が、トップマネジメントやミドルマネジメントがCCPMというソリューションに信頼/確証を得た瞬間だったのかもしれません。

 

 

  • 次回へつづく
    次回は、アルパイン情報システムでのソリューションへの信頼獲得後のイノベーションの実現とその成果、そして、現在についてお話いたします。

以上

シニア・コンサルタント
後藤 智博

 

この記事は、弊社サイトで過去に掲載していた内容を再掲載しております。