仕事を進めるうえで、一度は経験するのがマルチタスクです。
「マルチタスクができる方がいい」「マルチタスクは効率が悪い」など、さまざまな意見を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
中には、マルチタスクが苦手なことを引け目に感じている方もいらっしゃるでしょう。
今回の記事では、人によって認識が異なることも多い「マルチタスク」について解説していきます。
改めて確認しておきたい「マルチタスク」とは
非常によく知られた言葉である「マルチタスク」。
しかし、マルチタスクの正しい意味を解説できる方は多くありません。
ここでは改めてその意味について確認しておきましょう。
マルチタスクとはどういう状態?
マルチタスクとは、「複数の作業内容を同時に進めること」を指します。
実際に同時に進める場合に限らず、短い時間で作業内容を切り替えている場合も含みます。
パソコンの普及によって、意識しなくとも多くの方がマルチタスクを行うようになりました。
電話をしながら他のことをする、といったマルチタスクでの作業は誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
マルチタスクとは反対に、シングルタスクとは「ひとつの作業に集中すること」を指します。
また、シングルタスクと比較し、マルチタスクの方が業務効率がいい、もしくは能力が高いと考える方もいますが、決してそうとは限りません。
業務内容やそれぞれの人間が持つ特性などによって、最適な業務進行方法を選ぶ必要があります。
マルチタスクのメリットは?
ここでは、マルチタスクを行うことのメリットを3つご紹介します。
①複数の仕事を同時に進められる
まさにマルチタスクならではといえるメリットです。
例えば、抱えている複数の仕事の納期が全て同じであっても、マルチタスクによってどの仕事も停滞することなく進行できます。
効率よく同時進行することで、突発的な業務の発生にも対応しやすく、方針が変わっても柔軟に対応可能です。
②全体の進行を把握できる
マルチタスクとは、簡単に言うと、抱えている作業全てに着手し把握していることです。
目の前の仕事だけに集中せず、全体の進行具合を俯瞰しながら作業を進めることが可能です。
さらに、異なる作業が互いに業務進行のヒントとなる場合もあります。
タスクや考え方を切り替えることで、頭のリフレッシュになるというメリットも期待できます。
④仕事が停滞しにくい
マルチタスクには複数の作業が同時に進んでいくため、業務が停滞しにくいというメリットがあります。
未着手の仕事がないため、重要業務や急ぎの業務が停滞しにくいのもマルチタスクならではの特徴です。
チームで仕事を行う際にも、全体のバランスを見て最も重要な作業を優先して進める、などといった対応も可能です。
マルチタスクのデメリットは?
一方で、マルチタスクにはデメリットも存在します。
①生産性低下の原因に
一見効率がいいマルチタスクですが、実際はシングルタスクの方が一件一件のタスクの作業効率は高くなっています。
ひとつの作業途中が中断した場合、作業開始の際には「内容を思い出す」ことが必要になります。
こうした些細なロスタイムの積み重ねが、後から大きなロスになっている場合も少なくありません。
また、ダラダラと進めてしまいがちで集中力を保てない点も、デメリットとして挙げられます。
②キャパオーバーの危険性
マルチタスクの作業時間を見積もる場合に忘れがちなのが「ロス」があること。
マルチタスク管理は、シングルタスクを管理するのに比べて難易度が高く、キャパシティを超えてしまう可能性が常に付きまといます。
また、納期タイミングが重なりやすく、ひとつの作業が滞ると複数の業務に影響が出るため、対応しきれない可能性もあります。
マルチタスクが得意な人の特徴は、計画時に適切な余裕を見込める人、不測の事態を盛り込んで予定を立てられる人とも言えるでしょう。
②切り替えが難しい
マルチタスクで業務を進めていると、気持ちの切り替えが難しい場面に直面することは少なくありません。
失敗やトラブルを抱えたまま他の業務を進めるストレスは、シングルタスクにはないデメリットと言えます。
「悪い」マルチタスクが存在する!
良い面と悪い面のどちらもあるマルチタスク。
そんなマルチタスクに「悪い」マルチタスクが存在するってご存知ですか?
ここでは「悪い」マルチタスクとはどういったものか、またどんな弊害があるかについて解説を行います。
「悪い」マルチタスクとはどういう状態?
改めて、マルチタスクとは複数のタスクを同時進行で進めることです。
同時進行で進めることは、他のタスクの作業を行うため、現在行っているタスクを一度停止すること、とも言い換えられます。
マルチタスクそのものに問題はありません。
しかし、ひとつのタスクが完了する前に他のタスクに切り替えることが、作業やプロジェクトのスムーズな進行や早期完了に貢献していない場合があります。
この状態が「悪い」マルチタスクです。
シングルタスクで進めるよりも効率が悪く、円滑な業務進行を妨げる存在となり得るのです。
「悪い」マルチタスクによる弊害
ここでは「悪い」マルチタスクがどうやって発生するのか、そしてどんな弊害があるのか解説していきます。
一個のタスクの完了前に次のタスクを開始する
ひとつのタスクを完了させずに次のタスクに着手した経験はありませんか?
未着手のタスクが減るため、一見余裕があるようにも見えるこの状態。
実はプロジェクト完了遅延の原因でもあります。
ひとつのタスクに集中して取り掛かれないため、それぞれのタスクの完了までの時間が伸びていきます。
結果として全体の進行が遅れ、プロジェクト自体の遅延を引き起こしかねないのです。
リソースを分散してマルチタスクを進めている
各タスクの優先順位が分からず、抱える全てのタスクを最優先として同時に進める…これはとても危険な行動です。
均等にリソースを分散し、ひとつのタスクに割くリソースが少なくなると、全体の進行スピードは低下してしまいます。
さらに、遅延しやすいタスクが含まれる場合はより問題が大きくなります。
納期間近でタスクにトラブルが発生しても、他のタスクも余裕がなく、リカバリーが期待できないのです。
日々のプロジェクトを行う中で、実は「悪い」マルチタスクに陥る危険性はあちこちにあります。
タスクに優先順位をつけないままマルチタスクで業務を進めて、気付けば思わぬロスを重ねていたというケースも。
「悪い」マルチタスクを複数メンバーが実行していると、マネージャーの負担が増え、プロジェクトの失敗に繋がってしまう場合もあります。
悪いマルチタスクの問題を体感できる記事をご紹介!
マルチタスクって悪いこと? 3分で体感できるマルチタスクゲーム
「悪い」マルチタスクを改善するためにできること
「悪い」マルチタスク改善のためには、プロジェクト管理の考え方の導入が効果的です。
特にプロジェクト管理では「CCPM」と呼ばれる管理手法が「悪い」マルチタスク改善に大きな効果を発揮します。
ここでは、改善のために有効なCCPMについて、そしてCCPMの前提となる考え方「TOC」についても解説を行います。
TOCとは
TOC(Theory of Constraints)とは、日本語で制約条件の理論と呼ばれるマネジメントの手法です。
「現在から将来にわたって繁栄し続ける」という企業の目的達成のために生まれた手法で「制約条件」と呼ばれる箇所に絞って改善を行うことで、効率的に改善を行うものです。
全体を浅く広く改善する場合と異なり、最小限のコストや労力で最大限の改善効果が期待できます。
さらに、TOCを導入することでプロジェクト管理の改善のみならず企業の業績改善にも効果があります。
「悪い」マルチタスク改善に最適なCCPMとは
前述したTOCの中で、プロジェクト管理に特化したマネジメント手法がCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」です。
プロジェクトの最長の工程「クリティカルチェーン」に注目し、納期遵守や効率化を目標に改善を行います。
また、改善のためのツールが充実しているのもCCPMの大きな特徴です。
ここでは、3つのツールについて簡単にご紹介します。
バッファマネジメント
プロジェクト全体を俯瞰的に捉え、タスクごとではなくプロジェクトそのものに対して戦略的なバッファ配置を行います。
これによりタスクの優先順位が見える化するため、優先度の高いタスクに集中することができ、マルチタスクを防ぎます。
フルキット
プロジェクト開始前にプロジェクト進行のため準備すべき項目をチェックリスト化します。
リストをメンバーに共有し抜けや漏れを確認しつつ、事前に共通認識を形成しておきます。
これにより準備不足のまま着手して仕掛中のまま停滞するタスクが無くなるため、マルチタスクを未然に防ぐことができるのです。
パイプラインマネジメント
プロジェクト開始前に進行内容をシミュレーションし、リソース投入のベストな時期を策定しておきます。
プロジェクトの無計画な詰め込みによる弊害をなくし、スムーズな完了を目指すものです。
これにより平行したプロジェクトの実行数が制限されるため、マルチタスクを防ぎます。
まとめ:マルチタスクを正しく活用し、効率的な作業を実現しよう!
ここまで、マルチタスクとはどういったものか、また「悪い」マルチタスクの存在とその改善方法についてお伝えしてきました。
マルチタスクは正しく使えば大きな武器となりますが、一方でプロジェクトを停滞させる原因となることも。
プロジェクト進行の改善には、記事でご紹介したTOCやCCPMの導入が非常に効果的です。
私たちビーイングコンサルティングは、TOC導入アシストのプロフェッショナルです。
TOC導入を検討される方はぜひ下記の資料より詳細をご確認ください。