複数プロジェクトの同時管理は、単体のプロジェクト管理より難易度が高いものです。
複数のプロジェクト運用していると、タスク管理や進捗管理の煩雑化・悪いマルチタスクの発生など、さまざまな課題が発生します。
どの課題も、マネジメントを行う方にとっては悩みの種になりがちでしょう。
この記事では、複数プロジェクトの同時管理における課題や適切な管理方法などをお伝えします。
さまざまな課題を解決し、プロジェクト管理がスムーズになると、成果や生産性の向上につながります。
複数のプロジェクトを管理する際に発生しがちな課題
ここでは複数プロジェクトの同時管理に際して、発生しがちな課題を解説します。
複数のプロジェクトを同時管理する場合、さまざまな課題が発生します。
対策をすることによって、よりスムーズなプロジェクトの運用を実現できるでしょう。
工数見積もりが難しい
複数のプロジェクトを同時管理する場合、工数見積もりが難しくなりがちです。
プロジェクトがいくつもあると作業時間を正確に把握しづらくなり、スケジュールや納期を優先するあまり、作業時間を短く見積もるミスが発生しやすくなります。
この状態を放置すると、期日までに必要な日数の逆算がうまくできず、スケジュールが滞る恐れがあります。
複数のプロジェクトを管理する際は、作業時間を正確に把握し、スケジュールに適度なバッファを持たせましょう。
関連記事:バッファとは?使用するシーンや重要性・プロジェクトにおける役割を説明
多数のタスクに必要な作業時間の把握は簡単ではありませんが、余裕のあるスケジュールなら万が一見積もりが誤っても対応しやすくなります。
タスク管理や進捗管理が煩雑化しやすい
プロジェクトが複数あるとタスク管理や進捗管理が煩雑化します。
複数あるプロジェクトを管理する場合、プロジェクトマネージャーの業務が煩雑化し、適切な指示出しや現状の把握が困難になります。
その結果、すでにタスクを多く抱えている部下に追加でタスクを振ってしまい、過剰な負担や生産性の低下を招くかもしれません。
このような状況は、プロジェクトマネージャーが各チームメンバーのタスクや進捗状況の管理・把握ができていないことが原因です。
タスク管理や進捗管理が煩雑化しているなら、トラブルを防ぐためにも進捗状況の正確な把握と共有が欠かせません。
そのため、タスク管理や進捗管理のプロセスは入念にブラッシュアップしましょう。
チームのメンバーがタスクの進捗を適切に管理し、共有できるようになれば、トラブルが発生しても迅速な対処ができます。
悪いマルチタスクが発生しがち
プロジェクトを運用するうえで発生する、悪いマルチタスクにも注意する必要があります。
そもそもマルチタスク自体は悪いものではありません。
しかし、無駄な業務が重複し、何度もタスクを切り替える状況になると生産性や作業効率の低下を招きます。
また、各タスクにリソースを割り振った結果、それぞれに費やせる労力が低下するため、円滑な進行を阻害します。
このようにプロジェクトのスムーズな進行に寄与しないものが、悪いマルチタスクです。
悪いマルチタスクを防ぐためには、プロジェクトの進行に際して必要なタスクの精査が不可欠です。
とりわけ重複しているタスクは人的リソースを無駄に疲弊させる要因になるため、なるべく取り除きましょう。
ほかのプロジェクトに悪影響を与える
ほかのプロジェクトに悪影響を与えるリスクが高い点も、気をつけなければならない課題です。
複数のプロジェクトがあると、類似したタスクの並行や掛け持ちなどによって、プロジェクトが互いに影響します。
そのため、特定のタスクでトラブルが発生すると、複数のプロジェクトが同時に停滞するリスクが高まります。
とりわけ、同じジャンルのプロジェクトを複数抱えている際は注意しましょう。
同じジャンルのプロジェクトは類似のタスクが発生しやすく、同じトラブルやミスでプロジェクトが一斉に頓挫する可能性があります。
また、タスク同士の関係性も見えにくくなるため、一見無関係に見えるミスが別のプロジェクトを停止させる事態を招きます。
複数のプロジェクトを管理する際の進め方
- 各プロジェクトのタスクを抽出
- タスクごとの関係性や優先度を決定
- スケジュール表の作成
- 進捗管理・スケジュール調整
一連の進め方を実践すれば、複数プロジェクトの同時管理がスムーズになります。
1. 各プロジェクトのタスクを抽出
複数プロジェクトの同時管理を行うなら、最初に各プロジェクトのタスクを抽出しましょう。
タスクの抽出作業をする際は、WBSを用いると便利です。
WBSとは、プロジェクトの運用で発生するタスクを分解して構造化する手法であり、「作業構造分解図」とも呼ばれます。
WBSを用いればタスクを抜け漏れなく把握できるうえに、無駄な作業を見つけやすくなるため、プロセスのさらなるプラッシュアップが可能です。
それだけでなく、必要な工数を明確にすることでスケジュールの精度を引き上げられます。
タスクの抽出と整理はプロジェクトの運用をより円滑化にするため、効果的な手段だといえるでしょう。
関連記事:WBSの作り方とは?|メリットや精度を高めるコツも解説
2. タスクごとの関係性や優先度を決定
タスクの抽出を終えたら、それぞれの関係性や優先度を決定しましょう。
複数のプロジェクトの各タスクは相関しており、種類によってはプロジェクト全体の進行を左右する優先順位の高いものもあります。
このようなタスクは後回しにできないため、各タスクの抽出を行う過程で相関性や優先順位を整理しておきましょう。
結果的に期限を厳守したうえで、必要なタスクを最も効率的に行えるルートを見出せます。
また、複数のプロジェクトがスムーズに進行できるスケジュールを組みやすくなります。
3. スケジュール表の作成
複数プロジェクトの同時管理において、正確なスケジュール表の作成は欠かせません。
各タスクの納期を可視化するだけでもプロジェクトの進行具合はかなり変わります。
それだけでなく、タスクの内容やプロジェクトのプロセスを共有しやすくなり、トラブルの防止にも役立ちます。
スケジュール表を作成する際は、まず洗い出したタスクの優先順位に沿って、どのプロジェクトから完了させるかを決めましょう。
この際、プロジェクトの開始と終了のタイミングを重ならないようにすれば、各プロジェクトに専念しやすくなります。
また、同じようなタスクが重複している場合は、無駄なものを削ったり、一度で終わるように日付を調整すれば、効率的にプロセスを進められます。
なお、スケジュール表は必ず適度なバッファ(日数的な余裕)を持たせるようにしましょう。
適度なバッファがあれば、トラブルが起こった際にも対応しやすくなります。
4. 進捗管理・スケジュール調整
スケジュール表が完成したら、進捗管理・スケジュール調整に着手しましょう。
進捗管理・スケジュール調整は、週に1回程度の定期ミーティングなどを通じ、チームのメンバー全員と情報を共有しながら行いましょう。
メンバーそれぞれがスケジュールを正確に把握していれば、進捗が安定し、より迅速なトラブル対応が可能です。
ただし、過度にミーティングを行うとメンバーに負担がかかるので注意しましょう。
また、進捗管理は各プロジェクトに分けず、一元管理すると全体のプロセスを把握しやすくなります。
この際にガントチャートのような一目で理解できるチャートや図を用いると、スムーズな進捗状況の共有が可能です。
複数のプロジェクトをスムーズに管理するコツ
よりスムーズに複数のプロジェクトを進行させたいなら、知っておきたいコツがいくつかあります。
プロジェクトの管理・進行プロセスをブラッシュアップするうえで役に立つので、ぜひ参考にしてください。
各プロジェクトの進捗状況を可視化する
各プロジェクトの進捗状況は最大限可視化しましょう。
プロジェクトの進捗状況が明示されると、タスクを効率的に遂行するプランを立てやすくなります。
さらに、チーム全体でプロジェクトの状況やお互いのタスクを共有するきっかけが生まれるのも利点です。
チームのメンバー同士でタスクを把握すれば、お互いの様子をチェックしやすくなり、トラブルやミスの防止も可能です。
可視化するなら、進捗状況は各プロジェクトに小分けせず、まとめて開示しましょう。
ひと目で把握できるようになれば、共有がスムーズになります。
また、定期的なミーティングなど、逐一進捗を共有する機会を設ければ、よりスムーズなコミュニケーションがはかれます。
メンバー間の密なコミュニケーションを心がける
複数のプロジェクトを完遂するなら、メンバー間の密なコミュニケーションが重要です。
メンバー間でコミュニケーションを取り合う目的は、スケジュールや進捗状況を共有するだけではありません。
タスクの量が過剰になっているメンバーを見つけたり、ミスやトラブルの前兆を捉えるきっかけにもなります。
とりわけ複数のプロジェクトのタスクを兼務しているメンバーは、負担がかかりやすいので、逐一状況を把握する必要があります。
密なコミュニケーションは、チーム同士で気軽に話せる雰囲気を作らなければ成立しません。
スピーディーに連絡が取れるコミュニケーションツールを取り入れたり、お互いに声をかけ合う習慣を作るなど、環境作りを徹底しましょう。
悪いマルチタスクを解消する
悪いマルチタスクの解消も、複数プロジェクトをスムーズに管理するうえで効果的です。
悪いマルチタスクを防ぐには、リソースを分散するのではなく、集中的に投入できる体制が不可欠です。
集中的にリソースを投入する体制作りをするなら、まず無駄なタスクを排除し、各タスクの優先順位を明確にしましょう。
また、マルチタスクを増やすのではなく、なるべくコンパクトなシングルタスクを作ることも意識してください。
スピーディーに対応できるシングルタスクが増えれば、各タスクにかかるリードタイムを減らせます。
そうすれば、チームメンバーの負担を減らせるうえに、効率性を引き上げられます。
さらに人や設備などさまざまなリソースを集中的に投入できるため、より円滑なプロジェクト運用が可能です。
プロジェクト管理ツールを活用する
スムーズなプロジェクトの同時管理を実現するなら、プロジェクト管理ツールを活用しましょう。
事業規模が小さい企業や、プロジェクト総数が少ない組織であれば、エクセルやGoogleスプレッドシートでも十分にプロジェクト管理を実行できます。
エクセルやGoogleスプレッドシートのような表計算ソフトは、導入が簡単なうえに、スケジュールを可視化しやすいからです。
ただし、エクセルやGoogleスプレッドシートは、プロジェクトの変更やトラブルの発生時に逐一記録しなければなりません。
そのため、事業規模の大きい会社やプロジェクト総数が多い組織だと、記録作業が膨大になる恐れがあります。
この場合、スケジュールを一元管理できるプロジェクト管理ツールを使う方法が有効です。
プロジェクト管理ツールは進捗状況の変更などをリアルタイムで記録できるため、記録作業の手間を省けます。
また、サービスによってはチャットやコメントを使ったコミュニケーション機能を搭載しているため、情報共有もスムーズです。
以下の表に代表的なプロジェクト管理ツールを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
サービス名 |
主な機能 |
料金プラン |
進捗管理 |
Basic:無料 |
|
プロジェクト管理 |
Free:無料 |
|
工数管理 |
要問い合わせ |
TOC/CCPMの導入で複数プロジェクト管理を徹底改善!
タスクやプロセスが煩雑になりやすい複数プロジェクト管理の問題に対し、私たちが用いる方法がTOC/CCPMです。
TOCとは、制約理論または制約条件の理論と呼ばれるマネジメントの手法です。
大きな特徴は全体を浅く広く改善するのではなく、まず妨げとなる制約条件に集中して改善を実施する点です。
TOC/CCPMを導入すれば、プロジェクト管理の最適化はもちろん、企業全体の業績改善も期待できます。
今回の場合、プロジェクトやタスクの停滞を最小限に抑え、プロジェクトがスムーズに流れる状態を目指します。
具体的な改善に使用する管理手法は、TOCの「CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」です。
まずはプロジェクトの期間を決定づける、最長の工程「クリティカルチェーン」を特定します。
クリティカルチェーンに注目し、納期を守るプロジェクトマネジメントを目標に下記項目の導入で達成を図ります。
- プロジェクト全体の進捗の把握
- 遅延の危険性の可視化
- タスク優先度の明確化
- 適切なリソース投入のコントロール
具体的には、主に以下の3つの手法で多角的にプロジェクト進行の改善を進めていきます。
バッファマネジメント
円滑なプロジェクト進行で重要なのが、トラブルなど不確実性に対応するバッファの設定です。
しかし実際は、経験や勘で設定したバッファが無駄になったり、不測の事態による遅延をカバーしきれなかったりするケースが多いです。
個々のタスクのみを見て、それぞれに必要そうなバッファをなんとなく割り当てるだけでは、プロジェクトに貢献できないバッファが生じてしまいます。
そこで、CCPMではプロジェクト全体を俯瞰的に捉え、プロジェクトそのものに対し戦略的なバッファ配置をおこないます。
CCPMによるバッファマネジメント
- プロジェクトの進捗、バッファの消費状況=危険度を可視化する
- バッファの消費状況を把握しつつ、残るタスクに明確な優先順位をつける
全体の進捗とバッファを可視化した上でプロジェクトを管理すると、不測の事態が発生しても大きな停滞や損害を避けた確実な進行が可能になります。
同時に各タスクの優先度が明確になるので、タスクが整理され、プロセスが明確になります。
関連記事:CCPMに不可欠なバッファマネジメントとは?重要な理由やコツを説明
フルキット
とりあえずタスクに着手してみるような方法でのプロジェクト進行は、手戻りやプロジェクト停滞につながります。
CCPMでは、タスクやプロジェクトがスタートする前の段階を改善し、問題解決にあたります。
事前にプロジェクト進行にあたって準備すべき項目をチェックリストに入れましょう。
リストを共有し複数人で抜けや漏れを確認しつつ、共通認識を形成します。
CCPMによるフルキット
- 組織としてプロジェクトを開始する準備を整え、今すべきことを認識する
- 進行中に何をどのタイミングで決定していくべきかを同時に策定する
個人がバラバラの考えでプロジェクトに向かうと、過剰なシングルタスクやトラブルの発生につながります。
あらかじめ共通認識があれば、品質やプロジェクト完了スピードの向上も期待できます。
フルキットについて、より詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。
関連記事:【CCPM】フルキットとは?プロジェクト開始前の準備方法や活用のコツ
パイプラインマネジメント
行き当たりばったりでプロジェクトを進行するのではなく、本来はすべてのプロジェクト投入は戦略的に行われるべきものです。
パイプラインマネジメントでは、プロジェクト開始前に進行をシミュレーションし、プロジェクトやリソース投入の最適なタイミングを決定しておきます。
プロジェクトの無計画な詰め込みによる停滞をなくし、プロジェクトのスムーズな完了を実現します。
CCPMによるパイプラインマネジメント
- 組織の制約に基づき、戦略的にプロジェクト投入時期を決定する
- 組織内のリソース状況を可視化し、将来的なリソース計画を立てる
パイプラインマネジメントについて、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:CCPMにおけるパイプラインマネジメントとは?役割や手順も解説
複数プロジェクト管理には管理ツールやTOC/CCPMを活用しよう
複数プロジェクトの同時管理は、タスク管理・進捗管理の煩雑化や悪いマルチタスクの発生など、注意すべき課題が多いです。
これらの課題の解決には、タスクの精査・進捗状況の可視化・密なコミュニケーション・プロジェクト管理ツールの導入などが必要になります。
また、CCPMの導入も検討しましょう。
CCPMはプロジェクトの期日を決定づけるクリティカルチェーンを特定したうえで、各タスクの優先度を決定し、進捗の把握やリソースのコントロールなどを徹底する管理手法です。
CCPMを導入すれば、各タスクに必要なバッファや遅延した時のリスクが明示されるため、スケジュールのさらなるブラッシュアップが可能です。
それだけでなく、メンバーの共通認識を形成し、進捗状況を共有しやすくするので、より円滑なコミュニケーションを実現するベースも作れます。
もしCCPMの導入を本格的に検討するなら、以下の資料に定着ポイントをまとめています。
無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてみてください。