働き方改革を進めるには、勤務制度の多様な変化に合わせて、柔軟に勤怠管理を行う必要があります。
特に、残業時間の上限規制に対応するには、労働時間の現状把握や管理体制の構築など見直すべき項目が山のようにあります。
しかし、いざ勤怠管理の最適化を進めようにも、「制度が複雑で何から手を付けてよかわからない」と悩んでいる人事担当者も多いでしょう。
このような課題に対処するには、働き方改革で変化した複数のポイントを知り、一つひとつの対策方法を入念に検討することが重要です。
その結果、働き方改革の改正に合わせて正しい勤怠管理を行えるようになります。
本記事では、働き方改革で勤怠管理がどう変わるのか8つの改正点や対策方法を解説します。
働き方改革(労働時間法制の見直し)の8つのポイント
労働時間法制の見直しには、残業時間の上限規制や勤務間インターバル制度の導入促進などが含まれており、従来のように長時間労働を行うと罰則の対象になります。
企業は働き方改革により、どのように労働時間法制が見直されているのか理解しておくことが必要不可欠です。
そこで、働き方改革の(労働時間法制の見直し)8つのポイントについて解説します。
8つのポイントは以下の通りです。
- 残業時間の上限規制
- 勤務間インターバル制度の導入促進
- 年5日間の有給休暇取得の義務化
- 残業が週60時間を超えた場合の割増賃金引き上げ
- 労働時間の客観的な把握を義務化
- フレックスタイム制の拡充
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 産業医・産業保健機能の強化
1.残業時間の上限規制
労働時間法制の見直し施行前では、残業時間の上限が設けられていなかったため、企業によっては長時間労働を強いられる場合もありました。
そこで、ワークライフバランスの向上や多様な働き方などを実現するため、残業時間の上限規制が設けられるようになります。
施行後は原則「月45時間、年360時間」の上限が設けられ、例外的に考慮すべきことがない限りこれを超えることはできません。
例外的に考慮すべき事例があり、労働者が合意した場合であっても「年720時間以内・休日労働を含めた複数月平均80時間以内・休日を含めた月100時間未満」を超えることはできません。
また、原則である「月45時間」を超えた残業が可能なのは年間6ヶ月までであり、上限を超えた場合には罰則対象になります。
残業時間の上限規制は、働き方改革により、ワークライフバランスの向上や多様な働き方などを実現するために必要な施策です。
長時間労働を抑制できるため、従業員の健康管理にもつながります。
一方で、事業や業務内容によっては、上限規制の猶予・除外対象になります。
猶予・除外対象は以下の通りです。
自動車運転の業務 |
2024年4⽉1日に上限規制を適用。ただし、適用後の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般側の適用については引き続き検討。 |
建設事業 |
2024年4⽉1日に上限規制を適用。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用しません。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討。 |
医師 |
2024年4⽉1日に上限規制を適用。ただし、具体的な上限時間等については、医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討。 |
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業 |
2024年4⽉1日に上限規制を適用 |
新技術・新商品等の研究開発業務 |
医師の面接指導(※)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しない。ただし、時間外労働が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととする |
2.勤務間インターバル制度の導入促進
働き方改革の法案施行後は、勤務間インターバル制度の導入を企業の努力義務で行いましょう。
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の出社までに一定時間以上の休息時間を設け、労働者のワークライフバランス向上を目指す制度です。
勤務間インターバル制度を設けると、労働者が一定時間以上の休息が取れるようになり、ワークライフバランスが向上します。
その結果、勤務中の集中力が増し、生産性向上やミス防止につながります。
努力義務であるため、勤務間インターバル制度の導入を行わなくても罰則を受けませんが、労働者のワークライフバランスや業務の効率向上を考えると、積極的に導入して損はありません。
3.年5日間の有給休暇取得の義務化
働き方改革が改正されたことで、労働者の心身のリフレッシュを図るため、年5日間の有給休暇取得が義務化されています。
原則として、これまでは労働者が自ら申し出なければ、年次有給休暇を取得できませんでした。
改正後は、労働者の希望を踏まえて使用者が取得時季を指定し、年5日取得できます。
年次有給休暇の請求権には、2年の時効があり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に繰越せます。
例えば、全年度は事業が忙しく年有給休暇の取得ができず、今年度は事業が落ち着いているため、前年度の繰越し分を含めた10日間の年次有給休暇が取得できます。
労働者は、日々の労働により疲労がたまっており、心身をリフレッシュするため、年5日間の有給休暇取得が義務化されています。
また、年次有給休暇を取得した労働者を対象に、賃金の減額や不利益な取り扱いを行うことは厳禁です。
4.残業が月60時間を超えた場合の割増賃金引き上げ
以前までの月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、大企業で50%、中小企業が25%でした。
大企業と中小企業で25%の差があり、働き方改革の雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が行えていません。
そこで、2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金が大企業、中小企業とも50%になります。
この法案により、中小企業の残業が月60時間を超えた場合の割増賃金率が25%引き上げになり、雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保できます。
中小企業に該当するかどうかは、以下の条件によって判断されます。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外のその他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
5.労働時間の客観的な把握を義務化
労働時間の客観的な把握を義務化する以前、長時間労働や残業代未払いなどで企業と労働者がトラブルになることがありました。
「労働時間の客観的な把握」に関しては、労働安全衛生法第66条にて以下のように定められています。
事業者は、第66条の8第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
引用元:e-gov法令検索
企業と労働者間のトラブルを避けるため、働き方改革の改正により、企業には労働時間の客観的な把握が義務付けられました。
厚生労働省が定める労働時間を客観的に把握するには、以下の3つの方法があります。
- タイムカードによる記録
- パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録
- その他の適切な方法
このような方法は、勤怠管理システムを活用すると効率良く実施できます。
なぜなら、ICTにはICタイムカードやデータ入力などの勤怠管理システムがあるからです。
労働時間の客観的な把握により、労働者の勤怠管理が可能になるため、前述した残業時間の上限規制や勤務間インターバル制度の導入につながるので、とても重要です。
また、労働者の管理を行う管理職の労働時間の把握も対象となるため、配慮を忘れないよう注意しましょう。
6.フレックスタイム制の拡充
働き方改革の改正により、フレックスタイム制が見直されました。
以前のフレックスタイム制では、清算期間の上限が1ヶ月までのため、割増賃金を支払う必要があり、業務を自由に配分できませんでした。
また、働いていない期間は欠勤扱いになっていました。
そこで、フレックスタイム制の拡充により、清算期間が3ヶ月に延長されました。
法定労働時間の総枠が多くなった結果、働き方に柔軟性が生まれるようになります。
フレックスタイム制は、労働者が自らの労働時間を決めることにより、ワークライフバランスの向上と柔軟な働き方の調和を図る制度です。
メリットとして、労働者があらかじめ総労働時間を決めた上で働く長さを自由に決定できる点やプライベートと業務を自由に配分できる点があげられます。
フレックスタイム制により、働き方の多様化につながり、働き方改革が促進されます。
7.高度プロフェッショナル制度の創設
労働時間法制の見直しにより、高度プロフェッショナル制度の創設が必要になりました。
高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識等を必要とする業務の労働者を対象に労働時間に則った制限を排除する制度です。
高度プロフェッショナル制度の創設により、要件を満たしていれば、時間による対価ではなく、成果による対価を受け取れるため、働き方に柔軟性が生まれます。
高度プロフェッショナル制度の対象業務は以下の通りです。
対象業務の前提条件 |
・高度で専門的な知識・技術を要する |
対象職種・業務 |
・金融商品の開発業務 |
8.産業医・産業保健機能の強化
働き方改革の改正によって産業医・産業保健機能の強化されました。
以前までは、長時間労働者の事業者に対して勧告までしかできませんでした。
しかし、改正後は情報提供や実効性のある健康確保対策が行えるようになります。
産業医・産業保健機能の強化は、労働者の心身を健康にし、結果的に安心して働ける企業へと成長させます。
労働者の心身が健康である場合、業務に集中でき、企業として生産性を高められます。
また、心身の健康により、労働者の過労防止につながり、労働者のエンゲージメントを高められるため、産業医・産業保健機能の強化はとても重要です。
働き方改革への業務対応には勤怠管理システムが便利
働き方改革により、業務対応は大きく変化します。
そこで、勤怠管理システムを活用すると、労働者の出退勤や労働時間などを簡単に管理できます。
勤怠管理システムの概要
勤怠管理システムとは、労働者の出退勤の打刻や不正打刻の防止、労働時間の管理などの勤怠管理を行えるICTツールです。
勤怠管理システムには、自社サーバーを利用するオンプレミス型とインターネット環境があれば利用できるクラウド型があります。
オンプレミス型は、自社サーバーを利用することからセキュリティの高さが特徴です。
一方で、クラウド型は、インターネット環境さえあれば利用できる手軽さに特徴があります。
勤怠管理システムを活用すると、以前までエクセルやスプレッドシート等の表計算ソフトに手作業で入力していたものを自動的に行えるようになるため、業務を大幅に短縮できます。
勤怠管理システムのメリット
勤怠管理システムのメリットは以下の3つです。
- 勤怠管理の時間を短縮できる
- 労働時間をリアルタイムに管理し法令順守につながる
- 不正の防止につながる
勤怠管理の時間を短縮できる
以前のタイムカードでの勤怠管理では、打刻漏れの可能性があり、その際に確認が必要になり、手間がかかっていました。
勤怠管理システムを活用すると、打刻漏れ防止のアラート機能や集計機能により、業務時間を大幅に短縮できます。
労働時間をリアルタイムに管理し法令順守につながる
勤怠管理システムを活用すると、タイムカードやシフト管理などの機能により、労働者の労働時間をリアルタイムで管理できます。
労働者の労働時間の超過を未然に防止し、法令順守につながります。
長時間労働は、労働者の合意があったうえでも罰則対象になるため、勤怠管理システムで管理することをおすすめします。
不正の防止につながる
以前の手書きで行うタイムカードでは、時間を変更したり自分以外に打刻を行わせるといった不正が可能でした。
勤怠管理システムを活用すると、システム内の認証システムのみでしか打刻ができなくなり、不正の防止につながります。
働き方改革に伴い必要となる3つの勤怠管理方法
前述したように働き方改革に伴い、労働時間法令の見直しが行われます。
以前の勤怠管理方法では、打刻漏れや長時間労働、不正などにつながる可能性があります。
ここでは、働き方改革に伴い必要となる3つの勤怠管理方法を解説します。
3つの勤怠管理方法は以下の通りです。
- 労働者の労働時間をリアルタイムに把握・管理する
- 柔軟な働き方に対応する
- 幅広い雇用形態に対応するための管理手法を確立
1.労働者の労働時間をリアルタイムに把握・管理する
労働者の労働時間をリアルタイムに把握・管理する必要があります。
働き方改革に伴い、残業時間の上限規制や労働時間の客観的把握が義務化されるからです。
以前の手書きによるタイムカードや打刻を行うと、労働者の労働時間を適切に把握できず、残業時間の上限超過が起こりやすくなります。
そこで、勤怠管理システムの打刻機能やシフト管理機能などを活用すると、リアルタイムに労働時間を把握・管理できるため、労働時間の客観的把握が可能です。
2.柔軟な働き方に対応する
社内に働き方改革の制度を取り入れるには、柔軟な働き方に対応する必要があります。
働き方改革を進めようと思うと、どうしてもテレワークやハイブリッドワークという選択肢が出てくるからです。
例えば、在宅ワークを行う方は、インターネット環境から利用できるクラウド型の勤怠管理システムを利用することで遠隔地からタイムカードを打刻できます。
勤怠管理システムを活用し、柔軟な働き方をサポートすることが重要です。
3.幅広い雇用形態に対応するための管理手法を確立
フレックスタイムや高度プロフェッショナル制度を導入する場合、幅広い雇用形態に対応するための管理手法を確立しなければなりません。
例えば、労働時間を柔軟に設定するために、非正規雇用を拡充するケースもあるでしょう。
雇用形態に多様性が生まれると、シフト管理が煩雑化しがちですが、勤怠管理システムを使えば、自動的に集計できるため、ミスを防ぎつつ勤怠管理が行えます。
多様な雇用形態を効果的に管理するために勤怠管理システムを活用することがおすすめです。
おすすめの勤怠管理システム3選
勤怠管理システムを活用することで、働き方改革に伴う勤怠管理を効果的に行えます。
ここでは、おすすめの勤怠管理システム3選をご紹介します。
1.KING OF TIME
画像出典:KING OF TIME
ツール名 | KING OF TIME |
基本機能 |
・残業時間の管理 |
料金プラン |
導入価格:月額300円/1ユーザー |
KING OF TIMEは、豊富な打刻手段を搭載した勤怠管理システムです。
PCやモバイル端末などさまざまなデバイスに対応しており、複雑な作業のサポートも行えます。
また、シンプルなユーザーインターフェースで誰でも簡単に利用できるわかりやすい操作感です。
専門スタッフによるサポートを利用できるため、勤怠管理システムを初めて導入する場合でも安心して利用できます。
2.HRMOS勤怠 by IEYASU
画像出典:HRMOS勤怠 by IEYASU
ツール名 | HRMOS勤怠 by IEYASU |
基本機能 |
・打刻機能 |
料金プラン |
・ベーシックプラン:月額~9,800円(1~149名向け) |
HRMOS勤怠 by IEYASUは、法改正があるたびに即座に対応する勤怠管理システムです。
多様な打刻方法が可能であり、レポートや管理方法などの機能がカスタマイズ可能となっているため、さまざまな企業で利用できます。
サポート体制は、動画やオンラインでの質問、セミナーなどにより、初めてでも安心して導入できます。
料金プランは2種類のみで、安い価格で利用可能です。
また、無料トライアルも行っているため、試してから本格的に導入することがおすすめです。
3.TIMEVALUE
画像出典:TIMEVALUE
ツール名 | TIMEVALUE |
基本機能 |
・日別集計機能 |
料金プラン |
月額290円/1ユーザー |
TIMEVALUEは、クラウド型の勤怠管理システムで、PCやスマホから利用可能です。
勤怠管理の一連の流れである勤怠から給与計算までを一元管理し運用可能となっています。
また、有給休暇機能や残業申請管理機能といった手間がかかるものもデータを入力するだけで自動的に行えます。
料金プランは1ユーザーにつき月額290円とわかりやすく、サポート体制も万全であるため、安心して利用できます。
まとめ:働き方改革に合わせた適切な勤怠管理を実施しよう
本記事では、働き方改革で勤怠管理がどう変わるのか8つの改正点や対策方法を解説しました。
働き方改革(労働時間法制の見直し)の8つのポイントは以下の通りです。
- 残業時間の上限規制
- 勤務間インターバル制度の導入促進
- 年5日間の有給休暇取得の義務化
- 残業が月60時間を超えた場合の割増賃金引き上げ
- 労働時間の客観的な把握を義務化
- フレックスタイム制の拡充
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 産業医・産業保健機能の強化
上記のものの変化に対応するためには、ICTツールの活用がおすすめです。
特に、働き方改革の業務対応には勤怠管理システムが便利です。
勤怠管理システムの活用により、労働時間をリアルタイムに把握し、管理できるようになり、多様な働き方や多様な雇用形態に対応できます。
また、働き方改革(労働時間法制の見直し)に合わせた適切な勤怠管理を実施するためには、プロジェクトを立ち上げたうえで、徹底した効果検証やPDCAサイクルの回転が欠かせません。
しかし、経験のない方がいきなりプロジェクトマネジメントを行うのは至難の業です。
当社ビーイングコンサルティングは、数々の企業でプロジェクトマネジメントを成功に導いてきたプロフェッショナルです。
働き方改革を促進するプロジェクト立ち上げを検討されている企業様は、ぜひ以下の資料をご覧ください。
プロジェクトマネジメントのポイントを記載しています。