「プロジェクトが複雑すぎて適切なスケジュール管理ができない」
「プロジェクト全体を把握できる手法を知りたい」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
PERT図は、工程間のつながりや所要時間などプロジェクトに必要な情報を可視化した図です。
PERT図を用いることにより、プロジェクトの流れを正確に理解し、適切な進捗管理ができます。
この記事では、PERT図の詳細や作成方法について具体例を交えて解説します。
複雑なプロジェクトの進捗管理にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
PERT図とは
PERT図は工程のつながりや所要時間、プロジェクトにおいて最も重要な経路など、プロジェクト進行に必要な情報を可視化するために用いられる図です。
PERTは略称で、正確には「Program Evaluation and Review Technique」といい、1958年にアメリカ海軍によって考案されました。
PERT図には「アロー型」と「フロー型」の2種類があり、作業の流れや順序をメインにする場合はアロー型、作業内容を詳細に記す必要がある場合はフロー型が用いられます。
2つの型は、上記のように表現方法の違いはあるものの、基本的な使い方は同じです。
PERT図でわかること
ここでは、PERT図の作成によって得られる情報を「納豆ご飯」を作る際のPART図を用いて解説します。
最早開始時刻
最早開始時刻は、該当する工程を最も早く開始できる時間です。
前行程の最早開始時刻に所要時間を足すことで算出できます。
「時刻」という言葉を使っていますが、時間にこだわる必要はなく、日付や月などでも問題ありません。
最遅開始時刻
最遅開始時刻は、納期に影響しない範囲で最も遅く作業を開始できる時間です。
最遅開始時刻を超えてから作業開始となった場合、プロジェクトそのものが遅延してしまいます。
後工程の最遅開始時刻から所要時間を引くことで算出可能です。
例図で見た場合、①の最遅開始時刻は48分です。
つまり、調理開始から48分後にネギを刻み始めても、完了までの所要時間に影響はないことを示しています。
余裕日数
余裕日数は、作業開始が可能となってから作業を始めなければならない時間までの余裕を指し、フロートとも呼ばれます。
最遅開始時刻から最早開始時刻を引くことで算出可能です。
例図で見ると①の余裕日数は45分あります。
これは前工程である「納豆を混ぜる」を完了させてから、後工程である「ネギを刻む」を開始するまでに最大で45分の余裕があることを示しています。
クリティカルパス
クリティカルパスは、プロジェクト開始から終了までの流れにおいて最長となる経路を指します。
プロジェクトの納期を決定づける経路となり、クリティカルパス上にある作業の遅れはプロジェクト全体の遅れに直結します。
余裕日数が0の作業をつなぐことで割り出しが可能です。
例図で見た場合、②と③が余裕日数が0になっているため、それらをつないだ「START→②→③→GOAL」の経路がクリティカルパスになります。
クリティカルパスの詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:クリティカルパスとは?特定するメリットや見つけ方・注意点を説明
PERT図のメリット
ここではPERT図のメリットを次の通り解説します。
- プロジェクトに必要な工程を可視化できる
- 適切なスケジュール管理ができる
- 各メンバーと情報共有を行いやすい
プロジェクトに必要な工程を可視化できる
PERT図の作成によって、プロジェクト全体の工程を可視化できます。
可視化すると、各工程の依存関係や所要時間が明確になり状況を整理しやすくなります。
状況を整理しやすくなった結果、優先度の低い作業を先に行う、クリティカルパス上の作業を遅らせてしまうといったミスを回避できるでしょう。
そのため、仮に経験の浅いプロジェクトマネージャーであっても、PERT図を用いることで適切なプロジェクト管理が可能です。
効率的なスケジュール管理ができる
PERT図を作成すれば、効率的なスケジュール管理が可能になります。
工程の順序や使える時間が明確になり、余裕日数を無駄にすることなく作業を割り当てられるためです。
また、優先度の低い作業にリソースを割かずに済み、上手く活用すれば作業短縮も期待できます。
各メンバーと情報共有を行いやすい
プロジェクト規模が大きくなるにつれ、関わるメンバーも多くなります。
多くのメンバーに対して、口頭や文章だけでプロジェクトの流れを正確に伝えるのは、簡単ではありません。
しかし、PERT図を用いればメンバー全員に分かりやすく情報を伝えられます。
メンバー全員が必要な情報を共有していることで、スムーズなプロジェクト進行が可能です。
PERT図の構成要素
ここでは、PERT図を構成する要素をアロー型の図を例に解説します。
構成要素は次の通りです。
- ネットワーク
- イベント
- アクティビティ
- ダミー
詳しく見ていきましょう。
ネットワーク
ネットワークは、プロジェクト全体の工程図を指します。
PERT図というと、このネットワークを指すことが一般的です。
イベント
イベントとは、図内にある丸のオブジェクトのことです。
基本的にはアルファベットや数字などで管理しますが、「開始」や「完了」などの状態を記入する場合もあります。
アクティビティ
アクティビティは、図における矢印のことです。
通常、矢印の付近に作業内容や所要時間が記載されています。
ダミー
図にある破線の矢印はダミーといい、イベントやアクティビティの関係性を表すものです。
矢印元までプロジェクトが進んでいないと、矢印先の作業が開始できないことを表しています。
また、ダミーは作業を示す矢印ではないため、所要時間は0です。
上図では、ダミーの矢印が①から②へと向かっていますが、これは①までイベントが進んでいないと②が開始できないことを意味します。
PERT図の作成手順を5ステップで解説
ここからはアロー型のPERT図作成手順を、次の5ステップで解説します。
- タスクの洗い出し
- 必要時間の見積もり
- ネットワークの作成
- ダミーの設定
- プロジェクト完了までの各タスクの進捗管理
ステップ1.タスクの洗い出し
はじめに、必要なすべてのタスクを洗い出します。
抽出精度が低く抜け漏れがあった場合、スケジュールの大幅な変更にもつながりますので、時間をかけてでもしっかりと抽出しましょう。
タスクを洗い出す際は、WBSという手法の活用がおすすめです。
WBSとは、プロジェクト完了までの全タスクを抜け漏れなく洗い出すことを目的とした、タスクを分解し構造化する手法です。
タスクを高精度で抽出できるほか、プロジェクトメンバーやクライアントの満足度を上げられる、プロジェクトの管理・運用が容易になるといったメリットもあります。
一方でデメリットもあり、長期的な作業になるほど情報が不足し抽出精度が落ちる点です。
そのため、最初からプロジェクト内容が明確に決まっている場合を除き、プロジェクトの後半になるほど最初に作成したWBSは使えなくなってきます。
このような場合は最初から無理に分解せず、必要に応じて段階的に分解していくと良いでしょう。
ステップ2.必要時間の見積もり
次に、各タスクに必要な時間を見積もります。
見積もりの方法としては、予想される最速の時間・最遅の時間・実際の時間の3つを使って割り出す3点見積法の活用がおすすめです。
それでも情報が足りず、必要時間が的確に予想できない場合もあります。
そのような場合は、最初はある程度目安となる時間を記載し、実際にプロジェクトをスタートさせてから、予想と実績の差を埋めつつ現実的な時間へと変更を加えると良いでしょう。
また、トラブルが発生しても期限内で対応できるよう余裕を持った時間設定をすることも重要です。
ステップ3.ネットワークの作成
これまでの情報を基にネットワークを作成します。
作成時は次の6つのルールに沿って、作業をつなげていきましょう。
- 各アクティビティは、必ず前後でイベントとつながっている
- 開始と完了を除き、各イベントは必ずアクティビティとつながっている
- イベントに記すアルファベットや数字は、完了に向かうほと大きくなる
- イベントやアクティビティは一方通行であり、戻る経路を作ってはならない
- イベントの前工程に複数のアクティビティがある場合、すべてのアクティビティが終わっていないと、そのイベントは開始できない
- 並行作業がある場合はイベントを増やす
ステップ4.ダミーの設定
ネットワークが完成したら、次に行うのはダミーの設定です。
上の項で、ネットワーク作成ルールの最後に「並行作業がある場合はイベントを増やす」と記載しましたが、これがダミーの設定です。
作成したPERT図を確認した際に、上図Aのようにイベント①から②にかけて所要時間の異なる作業が並行して存在している場合があります。
このような場合、そのままにしておくと順序が不明瞭となるため、上図Bのようにイベントを2つに分けた上でダミーを設定します。
万が一、イベントを分けたのにダミーを設定し忘れた場合、それ以降の計算がすべてずれてしまうのできちんと設定できているかの確認も忘れないようにしましょう。
ステップ5.プロジェクト完了までの各タスクの進捗管理
最後のステップは、プロジェクト完了まで各タスクの進捗管理をすることです。
「タスクが順序よく進んでいるか」「スケジュールにズレがないか」などを常に確認し、トラブルが発生した場合はリソース調整やスケジュール調整を行い解決します。
進捗状況を正確に把握し、トラブルに迅速に対応するためには、日頃からプロジェクトメンバーとのコミュニケーションを取っておくことが重要です。
朝礼やミーティングといった他タスクのメンバーとコミュニケーションが取れる場の設定や、コミュニケーションツールを活用して報告がもらえる仕組みを構築するなど、報告や提案がしやすい環境を整えましょう。
まとめ|PERT図を活用し適切なプロジェクト管理をしよう
PERT図は、工程間の依存関係や所要時間などプロジェクトに必要な情報を可視化した図です。
プロジェクト全体の流れが一目でわかるようになるほか、メンバー間で情報を共有するとスケジュール管理の効率性が高まります。
スムーズにPERT図を作成できるよう、WBSを用いて必要なタスクのみを抽出したり、現実的な作業時間を見積もったりといった工夫を行いましょう。
ここまででクリティカルパスの説明をしましたが、このクリティカルパスに更にリソースの要素を盛り込んで
より実現可能なスケジュールに近づけた手法が「クリティカルチェーン」です。
そして、そのクリティカルチェーンに着目してプロジェクトマネジメントをするのがCCPM(クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント)です。
CCPMとは、バッファ(時間的な余裕)の消費具合と進捗率に注目した管理手法で、タスクの優先順位やプロジェクトの遅れ具合を把握できるメリットがあります。
PERT図が完成した後は、プロジェクト全体の納期遵守率を高められるようCCPMを導入してみてはいかがでしょうか。
関連記事:CCPMは何の略?有名マネジメント手法の意味と活用法を解説!
こちらの資料にCCPMの定着ポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。