「多様な働き方を認めていきたい」

「自社の働き方改革をどう進めれば良いかわからない」

このような悩みは昨今多くの企業で見られます。

「働き方改革」という言葉は一般的にもよく知られるようになってきており、対策することで就職活動をしている方へのアピールにもなります。

しかし現代は価値観が多様化してきており、単一の施策のみでは働き方改革に対応することはできません。

自社や自社の社員に沿った施策を試行錯誤しながら展開する必要があります。

ここでは、働き方改革で実施すべき施策や課題点を紹介します。

本記事は、社員の満足度をより高くし、会社の売上や利益向上を図るきっかけとなります。

組織の多様な働き方を実現させたい経営層の方は、ぜひ最後までご覧ください。

厚生労働省が推進する働き方改革とは?

厚生労働省は働き方改革を以下のように定義しています。

働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す活動
引用元:「働き方改革」の実現に向けて |厚生労働省

長時間労働の是正や雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、ダイバーシティの推進など厚生労働省も積極的に改革に取り組んでいます。

一人ひとりの事情に寄り添った働き方を提供することが、働き方改革の本質だといえるでしょう。

多様な働き方が求められている背景

多様な働き方が求められている背景には、以下のような日本特有の事情があります。

  • 少子高齢化や出生率の低下に伴う生産年齢人口の減少
  • 育児や介護との両立をはじめとする働き手のニーズの多様化

現在生産年齢人口は総人口を上回るペースで減少しており、国立社会保障・人口問題研究所によると、2060年にはピーク時の半分になると推定されています。

生産年齢人口が減ると国力の低下は避けられないとして、政府は働き方改革に乗り出しています。

これらの事情は日本企業も同様に課題であり、生産年齢人口が減るということは働き手が減り、採用できる人に限りが出てきます。

これまでと同様に働き手を確保するには、今まで労働市場に積極的に参加していなかった女性や高齢者を採用し定着してもらうことが必要です。

しかし、女性や高齢者はフルタイムで働くのは難しいケースも多いため、企業には個々の事情に沿った多様な働き方の提供が求められます

特に女性が多様な働き方を実現すれば、育児しながら働くこともできるようになるため、出生率の向上も期待でき、長期的には働き手が増え企業の成長につながるでしょう。

多様な働き方を推進するメリット

ここでは、多様な働き方を推し進めるメリットを4つ紹介します。

優秀な人材が集まりやすい

働き方改革に熱心な企業は社会的な評価を得やすく、自由な働き方ができる企業として魅力的に映る傾向にあります。

魅力的に思ってもらえれば応募数の増加が見込め、母数が増えればその中から優秀な人材を選びやすくなります。

たとえば株式会社パプアニューギニア海産では、フリースケジュールという施策を実施しました。

内容としては、パートスタッフを対象に「連絡なしで好きな日・時間に出勤でき、欠勤も自由、休憩時間も自由に取れる」というものです。

結果として定着率が大幅に向上し、パートスタッフ人件費は年間で約3割減少しました。

働きにくさを感じる企業よりは、以上のようにきちんと働き方改革が進み働きやすく感じる企業で働きたいと考える人がほとんどでしょう。

参考:「自由に出勤・欠勤できる制度」で職場の争いごとをなくす!人間の本質的な感情と向き合った食品工場の大改革(第4回GOOD ACTIONアワード受賞)

従業員満足度(ES)が高まる

多様な働き方を実現するには、テレワークやフレックスタイム制の導入のほか、副業を解禁するといった方法を採用する必要があります。

たとえばテレワークを導入するだけでも、育児中の母親が自宅で働けるようになり、従業員それぞれの働き方に柔軟性が生まれます。

個々の従業員が働きやすい環境を見つけられると、満足度の向上につながる可能性があるでしょう。

満足度が上がれば今の職場から離れようと感じる人も減るので、離職率が低下します。

厚生労働省が発表したデータによると、令和2年度における新規学卒就職者の離職率は、就職後3年以内の離職率で新規高卒就職者で約4割(36.9%)、新規大卒就職者で約3割(31.2%)となりました。

「優秀な人材だと思い採用したものの、すぐに辞めてしまう人が多い」と悩んでいる人事担当者も多いのではないでしょうか。

まずは働きやすい制度を導入し、多様な働き方を実現してみることで従業員満足度(ES)が高まり、定着率の向上が期待できるでしょう。

生産性が向上する

多様な働き方を実現する過程で、生産性の向上も見込めます。

仮にテレワークを認めたとすると、今まで通勤していた時間も仕事に充てられるので、より生産性も向上するでしょう。

他にも副業を認めた場合、労働者が副業で得られた経験が本業に活かされることもあります。

また、時短勤務を認めれば限られた時間で成果を出すことが求められるため、だらだらと仕事を続けてしまうことが減るでしょう。

多様な働き方を認め十分な休養を取ることにより、従業員の肉体的や精神的疲労の回復が見込めるという点も、従業員の生産性向上に寄与します。

生産性が向上すれば業務プロセスやプロジェクト、企業全体に良い影響を与えます。

コスト削減につながる

柔軟な働き方につながる施策は、従来の業務の無駄を浮き彫りにし、コスト削減という成果をもたらします。

たとえばテレワークを導入することで、交通費削減やオフィス縮小によるスペースを確保するためのコスト削減、書類をチャットやメールでやり取りすることで紙の購入費やインク代を抑えられます。

また、時短勤務を認めることで従業員に支払う給料が減るでしょう。

コストが減れば、その分事業に投資したり優秀な社員の給料を上げたりして生産性を更に向上させることが可能です。

多様な働き方を実現するうえでの課題

ここでは多様な働き方を実現するにあたり、企業側の課題点を説明します。

時間外労働に上限がある

かつては残業時間などの制約は法律によって定められておらず、行政指導のみでした。

しかし今では法改正が行われ、臨時的かつ特別な事情を除き時間外労働は原則として月45時間、年360時間までと定められています。

企業側にはこれまでの行政指導には無かった厳格なルール規定と罰則が設けられるため、これまでの就業規則や社内制度を根本的に見直す必要に迫られています。

これらの作業を通常業務と並行して行うことはかなりの労力や時間を費やす必要があり、企業側の課題点となっています。

社員への積極的な呼びかけや、時間内で強制的にオフィスを消灯させるなどの企業努力が必要です。

利益の減少

多様な働き方を認めることは基本的に労働者の待遇改善・業務環境改善・多様な働き方の実現など、労働者寄りの施策になります。

そのため本業の成果が低下するほか、結果的に売上や利益の減少となる可能性があります。

労働時間の短縮により未完の業務の発生し、日常業務に支障をきたす可能性もあるでしょう。

一からルールや制度づくりに着手する企業の場合は、利益の減少といった難題に直面する恐れがあるため、注意が必要です。

日頃から多様な働き方の重要性を認識し少しづつ施策を講じていれば、利益を減らすことなくスムーズに移行することが可能でしょう。

いずれの取り組みもしっかり検討を重ねてどの程度利益に影響するか想定した上で実施していかないと、利益の減少につながってしまう可能性があります。

高度プロフェッショナル制度の乱用

政府が掲げる働き方改革の一環として、「高度プロフェッショナル制度」が設けられました。

高度プロフェッショナル制度とは厚生労働省によると、以下のように定義されています。

⾼度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で⼀定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本⼈の同意を前提として、年間104⽇以上の休⽇確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休⽇及び深夜の割増賃⾦に関する規定を適⽤しない制度
引用元:高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説.indd

この制度は労働時間ではなく業務の成果にフォーカスされているため、早く成果物を納品できればその分早く帰宅することが可能です。

しかし実際の現場ではこの制度を悪用して長時間労働が発生していることが問題視されています。

現場で悪用されないよう、現場での注意喚起が企業には求められます。

一時的なコスト増

多様な働き方の実現には一時的に膨大なコストを企業が負うことになります。

効率化のためにシステムの導入を検討する企業も少なくありませんが、抜本的な改革のためには労務管理がシンプルにできるような大規模なシステムが必要です。

大規模なシステムは導入コストが莫大になり、これも企業が負う必要があります。

これらの一時的な出費を考慮しても、長期的には採算があうような施策を考える必要があります。

多様な働き方を支える制度の種類

ここでは、多様な働き方を実現するための具体的な制度を紹介します。

  • テレワーク
  • 育児休暇
  • フレックスタイム制

テレワーク

テレワークとは、場所に囚われず仕事をすることを指します。

従来はオフィスに出社することが当たり前でした。

しかしテレワークが実施できることで、通勤の負荷低減や時間の有効活用につながります。

自宅でテレワークする場合は在宅勤務、リゾート地など楽しめる地域でテレワークする場合はワーケーションと呼ばれます。

テレワークは柔軟な働き方推進には欠かせない施策ですが、企業側としては労務管理が煩雑になるという課題があります。

勤怠管理システムやメールなどによる報告で管理するしかないので、テレワークを許可制にして信用できる社員から許可していくというように、一定の制限が必要です。

育児休暇

育児休暇は、事業主が独自に設置する育児のために休暇を取ることのできる制度です。

育児休業とよく混同されますが、育児休業は国が定めた休業制度である点で異なります。

育児休業では基本的に子どもが1歳になるまで休めますが、それだけでは十分な休みとは言えないケースもあります。

たとえば株式会社丸井グループでは、出産までのサポートとして産前休暇を妊娠直後より取得可能、育児のサポートとして育児休職は子どもが3歳になるまで取得可能としています。

2022年10月には改正育児・介護休業法が施行され、子の出生後8週間以内に4週間まで分割で2回休業を取得が可能になりました。

企業側には、従来の育児休業と同様労働者が容易に取得できるよう制度設計することが求められます。

従業員がより安心して仕事が続けられるように、育児休暇を整備する必要があるでしょう。

参考:「多様性」を活かす組織づくり | 重点テーマ2 | サステナビリティ | 丸井グループ-maruigroup website-

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、定められたコアタイムに出勤していれば出社時間と退社時間を自分で決められる制度です。

コアタイムのないスーパーフレックス制を採用している企業もあります。

フレックスタイム制により、従業員の都合に合わせて早く帰りたい日は早く帰り、仕事を終わらせておきたい日は長めに働けます。

労働者が仕事とプライベートのバランスを取りながら充実感を持って働くためにも、フレックスタイム制は重要な制度です。

副業・兼業

副業・兼業とは、本業以外でお金を稼ぐことです。

近年働き方改革で国は副業の解禁を推奨しており、まだ副業に消極的な企業は多いですが導入を進める企業が増えつつあります。

たとえば、近畿企業で2021年に兼業・副業を認めている企業は16.8%と、4年前2017年の約1.8倍まで増えています。

副業によって労働者側は収入を増やせ、本業では得られない経験やスキルアップが得られます。

本業の生産性が低下するのではないかという課題があるため、本業と副業それぞれでお世話になっている方からの理解は得ておく必要があります。

副業で得られたスキルや経験が本業に活かされ、より生産性高く仕事ができるようになる効果も期待できるでしょう。

時短勤務

時短勤務とは、言葉の通り時間を短縮して仕事をする働き方です。

介護や育児をしている方は長時間仕事に従事するのが難しい傾向にあるため、時短勤務は便利な制度だといえるでしょう。

育児・介護休業法において時短勤務制度の勤務時間は原則6時間となっていますが、企業が独自に規定を設け、30分単位や5時間・7時間の勤務も選択できるようにしている場合は、規定の範囲内で選べます。

企業側としても支払う給料が少なくなるため、限られた時間で効率よく働いてもらえたら十分にメリットのある制度です。

業務委託化

業務委託とは、名前の通り業務を外部に委託することを指します。

雇用契約と違い、納期さえ守れば時間や場所に縛られず自分のペースで仕事を進められます。

また、社会保険料の負担が減るためその分給料に反映させることもできるでしょう。

ただし労働基準法は適用されず、確定申告は業務委託された側が自分で実施する必要があります。

電通やタニタ等、実際に正社員を業務委託として「再契約」することで柔軟な働き方を推進する動きも出てきています。

多様な働き方を実現する企業の事例

ここでは、多様な働き方を実現する企業の事例としてトヨタ自動車を紹介します。

トヨタ自動車では、2002年から多様な働き方の実現に向けた制度充実に力を注いでいます。

具体的な取り組み内容は次の通りです。

  • 在宅勤務制度の新設
  • 年次有給休暇の取得促進
  • 女性の定着・活躍のための制度整備
  • 定着を進めるための制度拡充
  • 育児者保護から意欲喚起、早期復帰

たとえば、裁量労働制勤務またはフレックスタイム勤務をベースとしている事務員や技術員に対し、新しい在宅勤務制度を新設しました。

結果として、女性の退職率の減少や女性幹部・技術者の増員を実現しています。

参考:トヨタ自動車株式会社:働き方・休み方改善取組事例 | 働き方・休み方改善ポータルサイト

その他企業の具体的な働き方改革の事例は、以下記事を参考にして下さい。

関連記事:働き方改革の具体的な施策例12選!3つのテーマから解説

まとめ:制度改革で多様な働き方を実現しよう

今回の記事の内容を以下でおさらいしておきましょう。

  • 近年働き方改革への取り組みが推奨されている
  • 現代は多様な働き方が求められている
  • 企業は個人の事情に合わせた働き方ができるようにしよう
  • 働き方改革の推進は企業側にも将来的には大きなメリットがある

働き方改革という労働者側のメリットに目がいきがちですが、企業側も長い目では生産性の向上やコスト削減などのメリットがあります。

テレワークや副業の解禁など施策はさまざまあるので、自社に合った施策を選んで試行錯誤しながら導入を進めましょう。

自社に合った制度を実施するためには、新しくプロジェクトを立ち上げ制度を適用し推進させながら検証する必要があります。

当社ビーイングコンサルティングは、数々の企業でプロジェクトマネジメントを成功に導いてきたプロフェッショナルです。

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