※本記事では2022年度に申請受付を実施していた助成金についてご紹介しています。

働き方改革推進支援助成金は厚生労働省によって行われている制度の1つで、改革に関する取り組みを実施し達成することで支給される助成金です。

働き方改革は生産性や企業の評判の向上につながるため、何らかの取り組みを実施しようと考えている企業も多いでしょう。

そのような際に役立つのが上記の助成金制度です。

この記事をご覧になっている方の中にも、今すぐ制度を利用して改革を推進したいと考えていないでしょうか。

本記事では助成金制度の利用を検討中の方に向け、各コースの詳細や受給までの流れについて詳しく解説します。

助成金を上手く活用することで、「予算的に働き方改革の導入は難しい」といういままでの悩みが解消できます。

働き方改革推進支援助成金とは

 

働き方推進支援助成金は、働き方改革を推進することを目的として、改革に取り組む中小企業を対象に、使用した費用の一部を助成する制度です。

2023年度の助成金はまだ案内が出ておりませんが、
2022年度においては以下の4コースが設けられていました。

  1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  2. 勤務間インターバル導入コース
  3. 労働時間適正管理推進コース
  4. 団体推進コース

働き方改革推進支援助成金の各コースの解説

ここでは、各コースについて詳しく解説します。

助成金の申請となると「手続きが難しそうで手を出しにくい」と感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、内容を1つずつ見ていくと決して難しいものではありません。

ぜひ今回の内容を参考に申請を進めてみてください。

1.各コース共通の内容

ここでは共通している内容について解説します。

対象範囲

「団体推進コース」を除く3コースに関しては、中小企業でなければ支給を受けることはできません。

中小企業と認められるには、以下のAまたはBの要件を満たす必要があります。

業種 A:資本または出資額 B:常時使用する労働者
小売業(飲食店含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

団体推進コースについては後ほど解説します。

支給対象となる取り組み

団体推進コースを除く、3つのコースにおける支給対象となる取り組みは以下の通りです。

  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  9. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

上記のうち、最低1つでも取り組んでいれば支給対象となります。

対象となる経費

対象となる経費は以下の通りです。

  • 謝金
  • 旅費
  • 借損料
  • 会議費
  • 雑役務費
  • 広告宣伝費
  • 印刷製本費
  • 備品費
  • 機械装置等購入費
  • 委託費

また、機械装置を設定する際の費用や社員に対する研修費用なども経費に含まれます。

対象外となる経費

以下の経費は原則として対象外となりますので、ご注意ください。

  • 乗用自動車等の購入費
  • PC・スマートフォン・タブレットの購入費用
  • 経費削減を主目的としたもの
  • 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした職場環境の改善にかかわる費用
  • 通常の事業活動に伴う経費
  • 交付決定の日より前に開始した事業にかかわる費用
  • 社会保険労務士事務所等の専門的知識を有する事業所であって、自ら取り組みが可能な事業に関する費用
  • 資格の取得にかかわる費用
  • 損害を補償する保険等にかかわる費用
  • 経費の算出が適正でないと労働局長が判断したもの

1.労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは、「時間外労働の削減」や「年次有給休暇・特別休暇の促進」に取り組む企業を支援するための制度です。

支給対象

対象は、以下の要件をすべて満たした中小企業です。

  1. 労災保険の適用事業主であること
  2. 交付申請時点で、目標設定するための条件を満たしていること
  3. 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向け、就業規則等を整備していること

支給要件

支給を受けるためには、前述した「対象となる取り組み」を1つ以上実施している必要があります。

同時に、以下のうち1つ以上の成果目標を達成しなければなりません。

  1. 36協定で時間外・休日労働時間数を縮減、所定の上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出すること
  2. 年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
  3. 時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
  4. 特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定を1つ以上を新たに導入すること

上記に加え、「労働者の時間当たりの賃金額を3%または5%以上引き上げる」という目標を追加で選択可能です。

支給額

支給額は目標の達成に応じて、実際に負担した金額の原則75%です。

ただし、達成した目標によって以下の上限額が設定されています。

成果目標 上限額(万円)
1 50~150
2 50
3 25
4 25

また、賃金額の引き上げという目標を達成した場合は、達成状況に応じて最大240万円の金額が加算されます。

2.勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル制度の導入に取り組む企業を支援するための制度です。

勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務までに一定以上の休息時間を設けることで、過重労働を防止し、労働者の健康を守るために設けられた制度です。

2019年4月から導入が努力義務化されています。

支給対象

対象は、以下の要件をすべて満たした中小企業です。

  1. 労災保険の適用事業主であること
  2. 勤務間インターバルを導入していない事業場(9時間以上の勤務間インターバルを導入していても、対象が所属する労働者の半数以下である場合も含む)を有する事業主であること
  3. 交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること
  4. 原則、過去2年間に月45時間以上の時間外労働の実態があること
  5. 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則を整備していること

支給要件

支給を受けるためには、前述した「対象となる取り組み」を1つ以上実施している必要があります。

同時に、所属従業員の半数以上を対象とする、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバル制度を導入・定着させるという成果目標を達成しなければなりません。

支給額

目標の達成に応じて、「目標ごとの上限額」または「実際に負担した金額の原則75%」いずれか低い方の額が支給されます。

目標ごとの上限額は以下の通りです。

  新規導入(万円) 対象範囲の拡大・時間延長(万円)
9時間以上11時間未満 80 40
11時間以上 100 50

また、賃金額の引き上げを目標に設定し達成した場合は、達成状況に応じて最大240万円の金額が加算されます。

3.労働時間適正管理推進コース

労務・労働時間管理の適正化を推進する中小企業を支援するための制度です。

支給対象

対象は、以下の要件をすべて満たした中小企業です。

  1. 労災保険の適用事業主であること
  2. 交付決定日以前に、賃金計算と勤怠管理等をリンクさせた統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと
  3. 交付決定日より前に、賃金台帳等の労務管理書類を5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと
  4. 交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること
  5. 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること

支給要件

支給を受けるためには、前述した「対象となる取り組み」を1つ以上実施している必要があります。

同時に、以下の成果目標をすべて達成しなければなりません。

  1. 全ての対象事業場において、新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用すること。
  2. 新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること
  3. 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にかかわる研修を労働者および労務管理担当者に対して実施すること

統合管理ITシステムとは、社内のITシステムを一元管理するためのシステムのことです。

導入により複雑なITシステムを一元管理できることに加え、人的ミスの削減やシステム運用の効率化を図れます。

支給額

上限100万円を基準に、負担した金額の原則75%が支給されます。

また、賃金額の引き上げを目標に設定し達成した場合は、達成状況に応じて最大240万円の金額が加算されます。

4.団体推進コース

最後は「団体推進コース」についての解説です。

概要

他コースとは異なり、中小企業の団体が対象となります。

傘下の中小企業が雇用する労働者の労働条件改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取り組みを行う団体を支援するための制度です。

支給対象

支給対象となるのは、法律で規定されている事業主団体等、または協定書の作成等の要件を満たしている共同事業主です。

規定されている事業主団体等は以下になります。

  1. 事業協同組合事業協同小組合
  2. 信用協同組合
  3. 協同組合連合会
  4. 企業組合
  5. 協業組合
  6. 商工組合
  7. 商工組合連合会
  8. 都道府県中小企業団体中央会
  9. 全国中小企業団体中央会
  10. 商店街振興組合
  11. 商店街振興組合連合会
  12. 商工会議所
  13. 商工会
  14. 生活衛生同業組合
  15. 一般社団法人および一般財団法人

加えて、以下の要件も満たしている必要があります。

  1. 原則3事業主以上で構成されており、活動実績が1年以上あること
  2. 事業主団体等が労災保険の適用事業主であること
  3. 全体の2分の1以上を中小企業事業主が占めていること

支給要件

支給を受けるためには、前述した「対象となる取り組み」を1つ以上実施している必要があります。

また、以下のすべての支給要件を満たさなければなりません。

  1. 支給対象となる取り組みについて、事業主団体等が時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取り組みを行うこと
  2. 全体の2分の1以上に対して、その取り組みまたは取組結果を活用すること

支給対象となる取り組み

対象となる取り組みは以下の通りです。

  1. 市場調査の事業
  2. 新ビジネスモデル開発、実験の事業
  3. 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
  4. 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整事業
  5. 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催および出展の事業
  6. 好事例の収集、普及啓発の事業
  7. セミナーの開催等の事業
  8. 巡回指導、相談窓口設置等の事業
  9. 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
  10. 人材確保に向けた取組の事業

支給額

支給額は以下のいずれか最も低い額になります。

  1. 対象経費の合計額
  2. 総事業費から収入額を控除した額(試験販売などによる収入)
  3. 500万円

働き方改革推進支援助成金の申請から受給までの流れ

働き方改革推進支援助成金を受給までの流れは以下の通りです。

  1. 申請書類の提出
  2. 取り組みの実施・完了
  3. 支給申請書類の提出

ここで注意したいのが、各コースによって明確な期日が設けられている点です。

各コースにおける期日やスケジュール、書類の提出先について詳しく解説します。

各コースの期日

人気のあるコースに関しては、申請状況によっては期限前に受付を停止する場合もあるので、検討中の場合は早めに申請することをおすすめします。

また、書類不備の訂正なども含め、期日までに完了しておく必要があります。

期日ぎりぎりでの提出を避け、余裕を持って提出しましょう。

各コースの期日は、「団体推進コース以外」と「団体推進コース」の2通りに分かれます。

団体推進コース以外の3コース

2022年度の各行程における期日や開始時期は次のようになります。

実施内容 期日・開始時期
申請書類の提出 2022年11月30日
取り組みの開始 交付決定後
取り組みの完了 2023年1月31日
支給申請書類の提出 事業実施予定期間の終了日から30日以内、または2023年2月10日のいずれか早い日

団体推進コース

団体推進コースは、他コースと比べて各行程における期日に違いがあります。

スケジュールは以下の通りです。

実施内容 期日・開始時期
申請書類の提出 2022年11月30日
取り組みの開始 交付決定後
取り組みの完了 2023年2月17日
支給申請書類の提出 事業実施予定期間の終了日から30日以内、または2023年2月28日のいずれか早い日

提出先

全コースにおける書類の提出先は管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。

所在地や連絡先などの詳細についてはこちらをご確認ください。

まとめ:働き方改革推進支援助成金を活用して企業の発展を推進しよう

働き方改革推進支援助成金の各コースの詳細について解説しました。

働き方改革の導入は無駄な業務の削減につながり、時間当たりの生産性が向上するというメリットが生まれます。

また、働き方改革に積極的に取り組んでいる企業という社会的な評価を得ることもできるでしょう。

そのため、助成金を上手く活用して制度を定着させることができれば、今以上の事業の発展にもつながります。

一方、助成金は際限なく受給できるわけではありません。

働き方改革にまつわるプロジェクトマネジメントが適正に実行されていないと、成果が現れず、せっかくの助成金が無駄になってしまいます。

助成金を無駄なく活かすためには、しっかりと計画を立て運用することが大切です。

当社ビーイングコンサルティングは、働き方改革の推進をはじめプロジェクトマネジメントに関する多くのノウハウを持っており、数々の企業を成功に導いてきたプロフェッショナルです。

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