2019年に厚生労働省は、社員の時間外労働の削減や業務の効率に取り組むために、働き方改革を発表しました。

働き方改革を実現させる方法には多様な種類がありますが、そのなかでも手軽に始められるのがオフィス環境整備、いわゆる「オフィス改革」です。

特に昨今、テレワークとオフィス勤務の併用によって、従業員によるオフィスの在り方・捉え方も変容しつつあります。

この記事では、オフィス整備の具体的なアイデア8つと事例の紹介をしています。

働き方改革につながるオフィス環境を改善したいと考えている企業経営者は、ぜひ、最後まで読んで参考にしてください。

働き方改革でオフィス環境を整える重要性

オフィス環境を整備するには、社員の意見を取り入れたオフィス家具の設置やレイアウトが必要です。

社員にとって働きやすい環境は、気持ちよく仕事に取り組めるため、生産性や効率が上がります。

また、オフィス改革によって他部署との物理的な垣根がなくなると、部署同士の新たなコミュニケーションに発展し、新たなアイデアも浮かびやすくなるでしょう。

テレワークでは社員間のコミュニケーション不足が問題となるケースが多いため、
オフィスでこそ相互交流によって社員ひとりひとりの意識に変化を生み、社内全体を活性化しなければなりません。

企業がオフィス改革に取り組むメリット

企業がオフィス改革に取り組むメリットは以下の3点です。

  • 業務効率につながる
  • 社員の健康維持に役立つ
  • コミュニケーションが円滑化される

社員にとって働きやすい環境整備を行うと、業務効率の向上やコミュニケーションの活性化、社員の健康維持などの恩恵がもたらされます。

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

業務効率化につながる

企業がオフィス改革をするメリットは、業務効率化につながることです。

社員が望む設備の設置や満足度の高い環境は、社内の生産性に好影響を与えます。

たとえば、フリーアドレスを導入すれば、集中したいときは個室、意見交換をしたいときはオープンスペースで働くなど、業務内容に合わせて働く場所を選択できます。

オフィス家具の配置やスペースを工夫することで、社員同士のコミュニケーションが活発になり、より意欲的に仕事に取り組めます。
個室に籠る社員が出ないように制度設計も重要です。(個室は予約制にして、連続2時間までの使用制限をかけるなど)

業務内容で環境を選択できるようになった結果、業務効率化を果たせるでしょう。

社員の健康維持に役立つ

オフィス環境の改革で、社員の健康維持に役立つことも大きなメリットです。

長時間のパソコン作業は、眼精疲労や肩こりなど体の不調の原因となるでしょう。

休憩スペースやコミュニケーションスペースがあれば、業務の疲れがほぐれて気持ちを切り替えやすくなります。

また、観葉植物などを設置する緑化活動は、ストレスを軽減し、疲労から回復しやすくなるため、社員の健康維持に役立ちます。

コミュニケーションが円滑化される

オフィス環境の改革で、コミュニケーションが円滑化されることもメリットの一つに挙げられます。

先にも触れた、フリーアドレスを導入したりオープンスペースを設置をしたりすれば、他部署との交流が深まります。

自由に交流できる場の提供によって、スムーズなコミュニケーションが可能になり、新たなアイデアが生まれやすくなります。

働き方改革につながるオフィス改善のアイデア8選

実際にオフィス改善を実施するために、具体的なアイデアを8つ紹介しています。

  • 指定席を設けないフリーアドレス化
  • コミュニケーションが取りやすい環境作り
  • 休憩スペースの設置
  • 業務がしやすいオフィス家具の導入
  • デスクのレイアウトを工夫する
  • 個人スペースの設置
  • 照明の工夫をする
  • 観葉植物を取り入れる

オフィス改善をするアイデアの中には、すぐに着手できるものからオフィス全体を改良するものまで、さまざまです。

それぞれのアイデアについて詳しく解説します。

指定席を設けないフリーアドレス化

オフィス改善の一つとして、指定席を設けないフリーアドレスの働き方が注目されています。
フリーアドレスの導入で、いつもと同じ社員との交流だけでなく、さまざまな部署の社員とのコミュニケーションが生まれます。

自分の業務内容によって個室を選んで集中するなど、主体的に計画を立てて取り組めるでしょう。

また、テレワークとの併用を考えると、従来のオフィスよりも座席数が少なくできることから、
余剰スペースにコミュニケーションゾーンを設置するなど工夫ができます。

ただし、総務などバックオフィス業務の担当は、キャビネットの管理や来客対応など座席を固定せざるを得ないこともあります

コミュニケーションが取りやすい環境作り

業務内容によっては他部署との連携が必要となるため、コミュニケーションが取りやすい環境作りが重要です。

例えばオフィスコンビニや自動販売機を設置したコミュニケーションゾーンと、業務実施するゾーンをわけるなど
社員の移動を前提にしたオフィス構成は交流がしやすいです。

また、予約不要のミーティングスペースを設置すれば、話し合いをしたいタイミングでミーティングができるため、社員の動きが活発化します。

休息スペースの設置

業務に集中する時間と心身をリフレッシュさせる時間のメリハリをつけ、業務効率を高められるよう、休憩スペースを設置するのも方法の一つです。

カフェ風の家具を使用してくつろげるコーナーを作ったり、パーティションを設置してリラックスできる環境に整えていくと良いでしょう。

休憩スペースで談話ができるなら、軽い話し合いの場として利用できます。

休憩スペースは、暖色系の照明や間接照明を利用したり、1人当たりのスペースを確保するなど、リラックスできる雰囲気を作る工夫が必要です。

ただし、業務スペースから近い場所に設置すると、休憩中の話声が聞こえて業務に集中しにくくなります。

声がもれない防音設備の設置や会話を最低限に抑えるなどのルール作りが大切です。

業務がしやすいオフィス家具の導入

業務がしやすいオフィス家具とは、たとえば、長くパソコン作業をしていても疲れない椅子や机などです。

椅子であれば個人の体形に合わせて高さや角度を変えられるものが良いでしょう。

机なら、スタンディングデスクを導入している企業も存在します。

スタンディングデスクは長時間の同じ体勢を防ぎ、集中力が高まるほか、運動不足の解消にも役立ちます。

また、立ち作業をしているため、スピーディに行動できるメリットもあります。

しかし、長時間の使用は足に負担を与え、むくみの原因になるので注意が必要です。

デスクのレイアウトを工夫する

従来のデスクのレイアウトは「対向島型」と呼ばれる、机を向かい合わせで配置されているものが多く見られました。

対向島型は、同じ業務をする社員が近くにいるため、疑問の解消や報告のしやすさがメリットです。

しかし、周囲にたくさんの社員がいることで、その話し声が気になって業務に集中できない方もいるので、背面対向型に加えて、クロス型やブース型のレイアウトを取り入れる必要があります。

  • 背面対向型:背中合わせに座り集中して作業ができる
  • クロス型:動線が変則的でコミュニケーションが取りやすい
  • ブース型:パーティションなどで個室感覚の業務ができる

それぞれ使用目的や業務内容に合わせて適切なレイアウトを選択しましょう。

従業員の意見を入れつつ、徐々に最適なレイアウトへと改善することで、より働きやすい環境へ生まれ変わります。

個人スペースの設置

個人スペースとは、自分1人で利用するための、誰もが自由に使える座席です。

周囲の話し声が気になる固定席とは異なり、個人スペースでは仕事により深く集中できるようになります。

ひと口に個人スペースといっても、電話ボックスのように天井まで壁に囲まれた、遮音性の高い集中スペースや、座席周辺をパネルで囲った個人スペースのタイプもあります。

個人スペースに使用するパネルを吸音性のある材質を使用したり、ソファ型の椅子を設置したりすることで、集中しながらもリラックスして業務を行えるでしょう。

また、個室を準備できない場合は、窓際にカウンターテーブルを設置して周囲の視線を感じにくくする方法もあります。

個人スペースは、ほかの社員が使用していると自分が使いたい時間に使えない場合があります。

しかし、カウンターテーブルにパネルで区切ると、複数人数が利用できる個人スペースの設置が可能です。

照明の工夫をする

照明は、明るさや光の色により与える影響が異なります。

照明が明るくても暗すぎても、長時間の業務は難しく、かえって疲労を増幅させるでしょう。

オフィスの照明には、シーリングライトやダウンライトといった蛍光灯やスポット照明が多く利用されています。

壁や天井に設置して光を反射させる間接照明を、オフィスに取り入れるのも効果的です。

間接照明は、明るすぎず暗すぎないバランスの良い照度を確保します

オフィスの照明の色は自然な明るさの「昼白色」、休憩スペースには気分が落ち着く「オレンジ色」が適しているでしょう。

しかし、さまざまな年齢層の社員が働く企業では、オフィスの照明が暗く感じる社員もいるかもしれません。

どのような社員でも快適に過ごせるように、明るさや色味を調節できる照明を選ぶのも方法の一つです。

漏電や故障が起きないように、設置の際は専門業者に依頼し安全に進めるようにしてください。

観葉植物を取り入れる

観葉植物は、安心感の確保やストレス軽減に役立つと考えられています。

また、緑は眼精疲労を緩和するため、オフィス内の緑化活動に力を入れている企業もあります。

パーティション代わりに観葉植物を置いたり、壁に飾ったりして社員の健康維持にも役立てています。

しかし、観葉植物は手入れが必要なので、水やりの手間が少ないものや葉が落ちにくい品種など、育成を行いやすいものを選ぶのがポイントです。

オフィス環境の改善で働き方改革が成功した事例

オフィス環境のアイデアを取り入れ、働き方改革が成功している事例があります。

この項目では、以下の3つの企業を紹介します。

  • 株式会社タカミヤ
  • 株式会社ウチダシステムズ
  • 総務省

ひと口にオフィス環境の改善といっても、業務目的や業務内容によって異なるでしょう。

自社と同じ業種があれば参考にしてみてください。

事例1:株式会社タカミヤ

株式会社タカミヤは、建設関連の商品の開発から販売までの事業を行っている企業です。

株式会社タカミヤでは「同じ環境の中では新しい発想は生まれない」と考え、以下のようなオフィス環境の整備をしています。

  • フリーアドレスの導入
  • 定期的なレイアウトの変更
  • コミュニケーション

フリーアドレスを導入し、固定デスクからワークスペースやコミュニケーションスペース・ミーティングルームを設置しています。

社員が好きな場所での業務とさまざまな社員との交流が可能になります。

特徴は、フロア内すべてのデスクにキャニスターを設置し、レイアウトを自由に変えられることです。

社員の意見を取り入れながら、自由な発想ができる環境作りが行われています。

社内17カ所にプロジェクタールームを設置したことで、情報共有が容易になりました。

事例2:株式会社ウチダシステムズ

株式会社ウチダシステムズは「オフィス」「学校」「福祉施設」のコンサルティングや設計・オフィスや学校の備品販売などをしている企業です。

株式会社ウチダシステムは、オフィス移転を機にリニューアルし、以下のような環境整備に取り組んでいます。

  • フリーアドレスの導入
  • 交流スペースの設置
  • 緑が見える環境

フリーアドレスを導入し、交流スペースを設けるなどしてさまざまな社員との交流が可能になりました。

疲れにくい椅子の使用や窓から緑が見えるなど、社員の疲労やストレスに対して気を配ってます。

株式会社ウチダシステムズは、オフィス改革にまつわるソリューションを提供しているだけあり、自社だけではなく、ほかの企業のオフィス環境の改善を手掛け、働き方改革の成功へと導いています。

事例3:総務省

総務省は省内では、オフィス環境の改善に着手しています。

従来の仕事のやり方を見直し、以下のような取り組みをしています。

  • フリーアドレスの導入
  • 打合せスペース・コミュニケーションスペースの設置
  • コミュニケーションの活性化

書類の山に囲まれた固定席での業務から改善できるよう、フリーアドレスを導入や打合せスペース・コミュニケーションスペースの設置をしています。

既存の方法では、役職順にデスクを並べていたため、コミュニケーションが取りにくく情報共有が難しい状態でした。

そこでチームごとに一つのテーブルで作業できるオフィスに改善することで、コミュニケーションが活性化され、情報共有が容易になりました。

また、予約が必要だった会議室でのミーティングを、デスクと椅子を持ち寄る形式に変更し、予約不要ですぐにミーティングを行えるように変化させています。

オフィス改革後のアンケートでは、約7割の社員から「コミュニケーションが取りやすくなった」「上司と相談しやすくなった」など、業務がしやすくなったと回答しています。

オフィス環境を改善する際のポイント

オフィス環境を改善する際のポイントは、以下の3点です。

  • オフィス改革を実施する目的を定める
  • 社員の意見に耳を傾ける
  • 同業種のオフィス改革の事例を参考にする

オフィス改革を実施する目的を定める

自社のオフィス改革を実施する目的を定めなければ、成功に結び付けられないでしょう。

目的を定めるためには、あらかじめ自社の課題をあぶり出し、仮説を立てたうえで複数の手段を抽出し、具体的な解決策を考えなければなりません。

たとえば、フリーアドレスの導入は、オフィスの広さやデスクの数が少なくて済むためコスト削減につながります。

オフィス改革を実施する目的は、「コミュニケーション促進・生産性向上・社員の健康維持」なども当てはまります。

このように、どのような目的でオフィス改革をするか明確にし、実行することが大切です。

社員の意見に耳を傾ける

オフィス環境を改善したつもりでも、実際に使う社員の満足度が低ければ、業務効率や生産性は向上しないでしょう。

レイアウトやインテリアを再構築した後は、より良い環境に改善できないか、実際に社員の意見に耳を傾けましょう。

ミーティングやアンケートで意見を吸い上げるほか、従業員が積極的に意見を出せる雰囲気作りも大切です。

同業種のオフィス改革の事例を参考にする

同業種でオフィス改革に成功している企業があれば、参考にしてみるのも方法の一つです。

業務内容が似ているなら、問題となっている課題が明確になります

オフィス改革に成功している取引先にさり気なくコツを聞いてみたり「働き方改革事例集」のようなサイトで、より具体的な改革方法を知ると良いでしょう。

実際に取り組まれている企業を見れば、自社に導入したときのイメージが湧きやすくなります。

まとめ:成功事例を参考にしてオフィス環境から働き方改革に取り組もう

この記事では、働き方改革における具体的なアイデア8つと事例を紹介しました。

社員にとって働きやすい環境は、企業の業務効率化と生産性の向上が期待できます。

社員の意見を取り入れながら、業務のしやすい環境とオフィス家具の導入を検討してみてください。

成功した企業の事例を参考にし、働き方改革の成功につながるオフィス改革を実現していきましょう。

 

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