マネジメントをおこなう立場の方であれば、TOCという言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
TOCは、組織運営やプロジェクト管理などの業務改善を目的としたマネジメント手法を指す略語です。
ビーイングコンサルティングは、TOCを用いた業務改善のプロフェッショナル。
今回は数多くのTOC導入を成功に導いてきた私たちが、TOCについて分かりやすく解説します。
TOCは何の略?注目のマネジメント手法を解説
TOCは、「Theory Of Constraints」の略語。
日本語で「制約条件の理論」と呼ばれることもあります。
簡単にいうと組織のパフォーマンスを改善する手法で、「現在から将来にわたって儲けつづける」ことを目標に行われるものです。
工程全体の中でボトルネックになっている箇所を探し出し、集中的に改善することを基本としています。
TOCのCは「Constraintant」の略
TOC=Theory Of Constraints(制約条件の理論)の中で、とても重要な単語が「Constraints」。
TOCはConstraints、すなわち「制約条件」に注目して改善をおこなうことが最大の特徴になっています。
TOCにおける制約条件とは、組織のパフォーマンスを決定づける因子のことを指します。
なぜ制約条件を重要視するかというと、制約となっている部分によって組織全体の成果が左右されるためです。
制約条件に集中して改善をおこなうことが、すなわち全体のパフォーマンス改善に直結する、という考え方をTOCでは基本としています。
TOCは制約条件に着目したマネジメント手法
TOCの最大の特徴は「制約条件」への注目であることを理解していただいたところで、制約条件についてより深く解説していきます。
実際の導入においては、工程や問題のどこがどんな制約条件なのかを正確に判断する必要があります。
そのため、TOCではこの制約条件をもう一段掘り下げて分類しています。
3種類の制約条件を理解する
改善対象である制約条件は、大きく3つの種類に分けられます。
自社の制約条件がどのタイプに当てはまるかを認識することが、短期間での業務改善の近道です。
3種類の制約条件についてそれぞれ見ていきましょう。
- 物理的制約:工程の特定箇所のリソース不足や技術不足などの物理的要因でパフォーマンスが制限されている状態
- 方針的制約:組織の方針が結果的にパフォーマンスを制限している状態
- 市場制約:生産のリソースは足りていても、市場で需要が少ない状態
ボトルネックとなっている制約条件はおおむね、このどれかに当てはまります。
時には複数の制約条件が重なって問題を引き起こしていることもあります。
TOCを導入する場合には、制約条件がどこにありどんな内容か、まず現状をしっかり分析することが肝心です。
TOCと他の経営マネジメントとの違い
結局のところ、TOCは他の経営マネジメントの手法と比べてどんな違いがあるのでしょうか?
その他の経営マネジメントの手法では、問題一つ一つに対して手を打つことが多くなっています。
全社を挙げて漫然と改善に取り組んだ結果、問題の発見や改善計画の作成の精度が低くなることも少なくありませんでした。
一方、TOCでは、一見全体に影響しないような工程の中の制約条件に注目し、全体に対して成果を挙げていきます。
まず制約条件に対して改善をおこなう点が、他のマネジメント手法との大きな違いです。
TOCにおいては制約条件は単なる問題ではなく、むしろ企業の全体の業績向上の足がかりであるとも言えます。
もともとは単なる工程管理のための方法として知られていたTOC。
さまざまな企業や組織での導入を経て、いまでは工場内の改善はもちろん、営業やマーケティング分野での改善、また企業全体の収益アップをも叶える手法となりました。
TOCのフレームワークによる業務改善
ここからは、TOCの考え方をどのように実際の改善に適応するかを解説していきます。
ボトルネックである制約条件の改善には、TOCのフレームワークを使用します。
大きな設備投資を行わず短期間での業務改善を達成できるのも、TOCの大きなメリットのひとつです。
今回は基本的なふたつのフレームワークについてご紹介します。
TOCのフレームワーク① 5段階集中プロセス
ひとつめのフレームワークは「5段階集中プロセス」。
制約を見つけだし、規模や業種問わず導入できるシンプルなステップを踏むことで改善を行っていきます。
- ステップ① 制約を特定する
- ステップ② 制約を徹底活用するための方針を決める
- ステップ③ 全てを制約に従属させる
- ステップ④ 制約の強化
- ステップ⑤ 惰性に気をつけながら新たな制約へ
TOCの基本となるフローですので、ステップごとに解説していきます。
ステップ① 制約を特定する
まずは、組織のパフォーマンスを決定づける因子となっている部分=制約となっている部分を探します。
この制約を改善することではじめて、プロジェクト全体のパフォーマンス向上に繋がります。
ステップ② 制約を徹底活用するための方針を決める
制約となっている部分を特定したら、次にその制約を活用するための行動に移ります。
ステップ②では、制約のパフォーマンスを決定づけているポイントを解消するための方針を決定していきます。
ステップ③ 全てを制約に従属させる
ステップ②の方針を実行し、パフォーマンスを決定づけているポイントの解消を図ります。
制約に全てを従属させることで、制約を最大限に活用することが可能です。
ステップ④ 制約を強化する
制約となる部分以外からの改善サポートを行いつつ、同時に制約自体の強化を進めていきます。
例えば、ボトルネックとなっている工程に携わるメンバーのスキルアップを図るなど、制約に対し内からも外からも改善を行います。
ステップ⑤ 惰性に気をつけながら新たな制約へ
ここまでのステップにより晴れて最初の制約を解消すると、多くの場合別の箇所で新たな問題点が見つかります。
この新たな問題を解消するため、またステップ①へと戻り一歩ずつ制約の発見から行っていきます。
この5つのプロセスを回転させることで、パフォーマンスは大幅に改善していきます。
また、取り組むべき制約の種類も改善を続けることで変化し、物理的制約から市場制約や方針制約へと対象が移っていきます。
ポイントはTOCを用いてひとつひとつ制約を見つけて改善していく点でです。
ひとつの部署やプロジェクトからスタートした改善が、いつの間にか全社のパフォーマンスをアップさせていることも少なくありません。
TOCのフレームワーク② 思考プロセス
もうひとつのフレームワークである「思考プロセス」は、様々な場面で使用できます。
改善を進めていくと、どうしても組織内からの抵抗が生じてきます。
抵抗には階層があり、階層ごとにそれぞれ解消するための思考プロセスが用意されているのもTOCの特徴のひとつです。
ここでは簡単に、抵抗の各階層とそれに対応する思考プロセスを紹介していきます。
第1階層 問題の存在に合意しない
解決のための思考プロセスとしては、現状問題構造ツリー(悪循環のサイクル)が用意されています。
問題についての合意を勝ち取るためのツールです。
第2階層 解決の方向性に同意しない
解決のためのツールとして、対立解消図が用意されています。
ジレンマに陥った対立を解消し、win-winの関係へと導くツールです。
第3階層 解決策が問題を解決することに同意しない
第4階層 解決策を実行するとマイナスの影響が発生する
これらの解決のためのツールとしては、未来問題構造ツリーが用意されています。
新規に導入したソリューションが問題を解決させ、かつマイナスの影響を生まないことを証明するために用いられます。
第5階層 解決策の実行を妨げる障害がある
第6階層 その結果起こることへの恐怖と不安
これらの解決のためのツールとしては、前提条件ツリーおよび移行ツリーが挙げられます。
導入したソリューションを阻害する障害を克服するための合意を得るために使用します。
思考プロセスを状況にあわせ活用することで、組織内のやっかいな抵抗も抑えることが可能になります。
このように、改善の進み具合にあわせて最適なフレームワークが用意されているのもTOCの大きな特徴です。
組織を問わず導入しやすい理由でもあります。
業務パフォーマンス改善にはTOC導入が効果的
TOCは、単なるマネジメントの概念にとどまらない、現場や実践で使えるように練り上げられたマネジメント手法です。
順を追って、状況に合わせた導入をおこなうことで、組織規模や業種を問わず業績改善やプロジェクトのスムーズな進行に大きく寄与します。
ビーイングコンサルティングでは、一社ごとに適切なTOC導入をご提案し、実際に多くの導入事例を成功に導いてきました。
TOC導入にご興味をお持ちの方は、下記資料よりご検討ください。
こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができます。