TOCを導入したことで開発リードタイム短縮を達成、また納期遵守を実現した例をご存知でしょう?
「現場を疲弊させず、設計や開発のスピードを上げたい。」「スペックやコストを妥協せず、納期を守れるようにしたい。」と考えつつも、あらゆる手を尽くし追加できる対策がないと悩むマネージャーも多いでしょう。
今回の記事ではTOCを取り入れることで、業務成績の向上や、プロジェクトや生産管理を最適化できる理由について解説します。
また、導入の成功事例も3つ紹介するため、TOCの導入を検討している方は参考にしてください。
TOCとは?プロジェクトや生産管理を最適化する理論
TOCとは「Theory of Constraints」のアルファベット頭文字を取ったもので、日本語では「制約条件の理論」と言います。
現在から将来に向け発展し続ける企業の目標達成を、目的とした理論です。
プロジェクトの業績を向上または改善したい場合、TOCではプロジェクト全工程に対して同時に改善の手を打ちません。
全体のパフォーマンスを決定づける特定の要素を発見し、特定された要素に対し徹底的に働きかけるのです。
全体のパフォーマンスを決定づける特定の要素を、TOCでは制約と言います。
組織のパフォーマンスの鍵を握る制約を改善した後は、さらに別の制約を見つけて改善を重ねることで、組織を継続的な成長へと導くことが可能です。
生産管理やプロジェクト環境におけるTOCで解決すべき問題
生産管理やプロジェクト環境では、さまざまな問題が発生します。
プロジェクトでは以下の3つが求められますが、すべて達成することは困難です。
- 可能な限り高品質(Quality)
- 可能な限り低コスト(Cost)
- 可能な限り短期間(Delivery)
達成しようとしても、トレードオフとなるケースが多くなっています。
その他のプロジェクト環境でよく提起される問題点も、見ていきましょう。
生産管理やプロジェクト環境で発生する問題点
プロジェクト環境でよく提起される問題点は、以下の通りです。
- プロジェクトが遅れて、最後は突貫でこなしている。
- コストが当初より膨らんでいる。
- 手戻り・やり直しが頻発する。
- 残業・休日出勤が蔓延する。
- 組織内のコミュニケーションが悪い。
心当たりのある方も、多いのではないでしょうか。
上記の問題点がプロジェクトの進行において悪影響となることが、少なくありません。
生産管理やプロジェクトにおける遅延の例
プロジェクト遅延のケースを、例に挙げてみましょう。
- 企画決定に試行錯誤した結果、仕様決定に遅延が発生するケース。
結果的に後のタスクに影響がでてしまい、強引な再スケジュールを余儀なくされます。 - 2つのプロジェクトを同時進行しているケース。
プロジェクトAの仕様が決まらないため、プロジェクトBのリソースが来ずに開始できません。 - またプロジェクトAの終盤でリソースが足りなくなり、プロジェクトBから補充するケース。
プロジェクトBのリソースが足りなくなり、最終的には炎上してしまいます。
いずれも遅延が遅延を引き起こし、遅れの連鎖がおきてしまっているのです。
なぜこのような問題が発生するのでしょうか。
以下の様な理由が、原因として考えられます。
- 事前に決められないことが多く、そもそも見積ができない
- 仕様変更が多く、計画通りに進められない
- リソース(人など)は限られているのに、仕事ばかりが増え続ける
- 全ての仕事が最重要で、優先順位がつけられない
- プロジェクトの進捗が見えず、リスク(=トラブル)が発生した後に気が付く
注意すべき「悪いマルチタスク」とは
複数のプロジェクトを同時に進めることを、一般的にはマルチタスクと言います。
タスクBを開始させるために、完了前にタスクAを一旦停止させるのがマルチタスクです。
マルチタスク自体は悪いことではありませんが、注意すべきはタスクの切り替えがプロジェクトの円滑な進行に寄与していない場合です。
これをTOCでは「悪いマルチタスク」と呼び、改善すべき対象とします。
悪いマルチタスクの例
タスクを複数開始したことで、1つのタスクに集中することが困難になり、結果的に各タスクのリード時間が伸びてしまいます。
後続作業にも影響が表れ、プロジェクト完了の遅延につながってしまうのです。
早期の完了がプロジェクトの成功や組織の利益につながる場合、大きな損失となります。
根源から悪いマルチタスクを改善するためには、悪いマルチタスクを防止し、プロジェクトやタスクにリソースを集中できる環境づくりが必要です。
そこでTOCを導入した改善方法が、打開策となってきます。
TOCを導入することで得られるメリット
複数のタスクやプロジェクト管理で、当社が用いるのがTOCです。
TOCは制約条件の理論と呼ばれる、マネジメント手法です。
具体的な管理手法では、TOCのCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)を利用しています。
人員や設備などのリソースを増やさずともTOCを導入し制約に注力することで、悪いマルチタスクを改善し複数プロジェクトを成功の糧とすることが可能です。
また制約条件を改善するTOCのフレームワーク、5段階集中プロセスを行うことで、組織の継続的な成長を期待できます。
<5段階集中プロセス>
①制約を見つける
②制約を最大活用する方針を決める
③制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる
④制約を強化する
⑤制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る
TOCを取り入れたことでプロジェクトや生産管理を改善した企業3例
次にTOCを導入しプロジェクトや生産管理の改善を達成した企業例を、3つ紹介していきます。
事例の企業以外でも、共通する課題も多いでしょう。
自社のケースをイメージしながらご覧ください。
事例①シャープ株式会社様
シャープ株式会社様はTOC導入後、わずか6ヶ月の期間でリードタイムを30%短縮しました。
なぜ短期間でリードタイム30%短縮を達成することができたのか、順を追って見ていきましょう。
TOC導入前の状況
2012年以降、利益や売上高が減少しました。
さまざまな構造改革を行うも、低迷と出口の見えない企業確変に苦しんでいた状態だったのです。
また目の前のプロジェクトをこなすのに精一杯で、未来に向けた活動に時間を充てられていない現状が継続していました。
先の見えない状況に、従業員は疲弊していたとのことです。
制約の特定とTOC導入を経て起こった変化
制約を6つ特定し、その中ですぐに取り掛かれそうな2つの制約を改善することを決定しました。
特定した制約は、以下の通りです。
- 1年後の次機種先行検討時間が不足
- 制階層間の戦略・戦術の繋がりが不明瞭
①については、マネジメントにCCPMを導入しました。
そしてプロジェクトを見える化し、毎朝の朝会で残日数進捗管理・課題エスカレーションを実施したのです。
プロジェクトチームのつながりを強くし、タスクの優先順位を決めて悪いマルチタスクを最小限に抑えました。
その結果、優先すべきタスクが明確化し、集中力が向上しました。
開発リードタイムを30%縮小することに成功しました。
②については、戦略と戦術に加え、背景や前提条件を明記していきました。
戦略と戦術の見える化を徹底し、環境変化による戦略背景や前提条件の見直しも素早く実行したのです。
その結果、階級間の認識の誤差を大きく解消することができました。
同じベクトルに向けてメンバーが活動できるようになったのも、成果の1つです。
事例②マツダ株式会社様
マツダ株式会社様も、開発期間の大幅な短縮に成功しました。
なんと50%もの短縮を実現し、マネジメントの改革を実現しました。
TOC導入前の状況
意識改革や企業改革に取り組んでも定着せず、低迷が長期化しており、内部からも今後の将来について危惧する声がでていました。
組織の縦割りにより、部門間のコミュニケーションも不足しており、進捗状況が見えない状態となっていたのです。
改変ポイントとTOC導入経て起こった変化
CCPMによるプロジェクト管理を導入して、計画の際に納得のいくまで議論を重ねました。
実行段階で納期が遅延しそうな場合は、対策を迅速に実行した結果、日々の小さい成功がプロジェクトを成功へと導いたのです。
お互いの信頼構築にも効果があり、チームの結束にもつながりました。
現在では実施を行った部門以外でもCCPMの管理方法が波及しているとのことです。
東芝デジタルソリューションズ株式会社様
東芝デジタルソリューションズ株式会社様は、完成品在庫を68%削減することができました。
導入から成果までを見ていきましょう。
TOC導入前の状況
2015年の経営指標の変更とともに、従来のマネジメントの限界に直面しました。
従来の手法では大きな改善ができないと判断したことにより、TOCの導入を決定したのです。
改変までの流れとTOC導入経て起こった変化
2015年にTOCの検討を開始し、同年11月~翌年4月の間にTOCの有効性を確認するプロジェクトを実行しました。
2016年には適用範囲を拡大し、さらに大きな成果をだしたいプロジェクトでTOCを実施したのです。
その結果、短期間で目標以上の成果を達成しました。
POCにおけるリードタイム短縮目標が20%だったところ、実際の成果は40%短縮しました。
さらには、棚卸資産削減目標においては58%短縮の目標でしたが、成果は68%短縮しました。
生産のリードタイムにおいては、41%短縮の実績です。
工程を見える化して優先度を明確にした他、営業と生産のコミュニケーションを改善したことにより、生産計画の最適化を実現できました。
まとめ:TOC導入でプロジェクトや生産管理を最適化し組織の成長へ
今回の記事ではTOC導入により、業務成績の向上、プロジェクトや生産管理を最適化できる理由について解説しました。
全体のパフォーマンスを決定する制約を発見します。
制約に対し徹底的に働きかけ、悪いマルチタスク予防し企業の目標を達成するのです。
TOCを導入した成功事例も、3例紹介しました。
ビーイングコンサルティングでは、TOCやCCPMを使用した組織運営のコンサルティングをおこなっています。
また、TOCのさらに詳しい内容を、以下資料にて公開しております。
こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができますので、是非ご活用ください。