なんとなくで覚えていると、頭の中で内容がごちゃごちゃになりがちな横文字の略語。
正確に覚えることに苦労されている方も多いと思います。
ややこしい略語は、本来の意味をしっかり理解することでより深く記憶に定着するものです。
この記事ではビジネスで確実に知っておきたいマネジメント手法「TOC」について解説します。
私たちビーイングコンサルティングは、TOCを活用した業務改善のプロフェッショナル。
TOCを分かりやすく解説することで、業務改善への足がかりとして、またITパスポート試験の対策にもお役立ていただければ幸いです。
「TOC」の意味を正しく理解しよう
TOCは実はITに関する専門用語ではなく、経営やマネジメントに関する用語です。
幅広い業種で用いられ、IT関連の環境でも導入されることがあるため、IT関連用語として紹介されることも少なくありません。
TOC(Theory of Constraints)は、和訳すると「制約条件の理論」です。
制約条件とは、企業やプロジェクトのパフォーマンスを低下させているボトルネックのことを指します。
ボトルネックを見つけ出し、集中して改善をおこなうことで全体の業績改善や向上を図る手法です。
実は、TOCが初めて登場したのは「ザ・ゴール」という有名ビジネス小説の中です。
イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラットによって著されたザ・ゴールは、その革新的な内容から現在も世界中で愛される大ベストセラー本になりました。
もとは小説内に登場した生産管理の手法であるTOC。
出版以降、実際の企業の生産活動の効率化を図れるものとして、生産管理やマネジメントに多大な影響を与えています。
ITパスポート試験にも出題された要チェック用語
近年は試験問題にも取り上げられるなど注目の集まっているTOC。
過去には、ITパスポート試験(IP)で実際に出題されています。
ITパスポート試験 平成29年春期の問6で、経営管理システムの問題としてTOCの意味が問われました。
設問では「制約条件の理論」という言葉そのものは用いられず、制約条件をボトルネックという言葉に置き換えて出題されています。
実際にTOCを導入する際にも、ボトルネックはとても重要なキーワードです。
どんな業種や組織規模でも存在する「ボトルネック」に着目するからこそ、汎用性が高くなるのがTOCの利点です。
さまざまな組織規模で活用できるTOC
組織規模を問わず導入できるのも、TOCの導入が増えている理由のひとつ。
規模ごとにどのような導入を行うのかを解説していきます。
大きな組織の場合、組織全体にTOCを適用することは簡単ではありません。
改善を行う範囲を段階的に拡大していく必要があります。
中小企業など小規模組織においては、組織全体を一つと捉えてTOCを適用できますが、大企業の場合はいくつかのセクションに分けて行う場合も生じます。
いずれの場合にせよ、ポイントは改善したい対象の範囲やシステムを適切に捉えること。
対象の範囲を見誤ると、部分最適を助長するのみで、組織全体の業績向上には一切寄与しない場合もあります。
組織全体を意識しながら、改善する範囲を適切に切り分けることが重要です。
また、TOCの事業への導入およびメンバーへの定着によって、規模や業種を問わず、短期間で改善の効果を得られるのもTOCの優れているポイントです。
ビーイングコンサルティングでは、TOCを用いて対象となる企業やプロジェクトの制約条件を見つけ出し、組織を継続的に改善し続けるプロセスを提供しています。
実際の導入事例で理解するTOC
ビーイングコンサルティングでは、TOCを用いたマネジメントで実際に多くの企業の業務改善に携わってきました。
どのような場面でTOCが活用されているかを知り、より理解を深めていきましょう。
シャープ株式会社様でのTOC導入事例
まずご紹介するのは、シャープ株式会社様にてスマートフォン開発におけるプロジェクト管理にTOCを導入した事例です。
当時のシャープ株式会社様は、業績低迷に悩まされ、企業変革を試みるも決定的な解決策が見つからないという状況にありました。
そんな中TOCを導入したのは、スマートフォンやタブレットの開発を主に担当するパーソナル通信事業部です。
部署は開発案件数の増加や、開発内容の複雑化により業務改善に手が回らない状態。
さらに、企業体制に不安を感じる社員も多く、社内全体に疲弊したムードが漂っていました。
こうした状況を打開すべく、主に以下の形でのTOC導入を決定しました。
- 部署内の課題となるボトルネックの特定
- 部署内での「戦略と戦術」を見える化
導入の結果、短期間で以下の大きな成果を上げることに。
- 6ヶ月で開発リードタイムを30%短縮
- 開発時間の短縮により量産段階での品質が安定
- 遅延リカバリーの費用を大幅削減
パーソナル通信事業部で大きな成功を収めたTOCの導入は、事業改善の大きなきっかけになりました。
現在では、TOCの考え方が事業部門全体に適用され、日々効率化、最適化が実施されています。
マツダ株式会社様でのTOC導入事例
マツダ株式会社様のパワートレイン開発本部におけるプロジェクト管理でも、TOCによる改善は大きな成果を上げています。
TOCの導入前にも、すでに企業変革や意識変革に取り組んでおられました。
しかし、数々の改革を試したものの定着には至らず、業績低迷が長引いている状況でのTOC導入でした。
TOCを導入したパワートレイン開発本部は、当時、日進月歩で変化を遂げる技術の高度化と、業務の複雑化の対応とで精一杯。
マネジメントにおいては以下のような問題が生じていました。
- 部門間の連携やコミュニケーションが不足し、開発プロジェクトの進捗状況が不透明
- プロジェクトを管理するスキルが伝承されておらず、個人の裁量に頼っている
そこで、以下の形での導入を決定しました。
- パワートレイン開発本部長の支援のもとでボトムアップでのTOC導入
- トップダウンによるプロジェクトへのTOC全面適用
導入の形式を何度も練り直し、私たちは議論を重ねながらオンリーワンの管理方法を構築しました。
その結果、実行段階ではプロジェクトの危機を即察知し、マネジメントが対策を実行できるように部署全体が進化を遂げました。
カギとなったのは日々のTOCを用いたマネジメントで、メンバー全員が小さな成功体験を積み上げたことです。
結果的にメンバー間の信頼も高まり、TOC導入はSKYACTIV TECHNOLOGYという大プロジェクトでのイノベーションに大きく寄与しました。
パワートレイン開発本部のでの導入成功をきっかけに、現在では他部門への波及にもつながったTOC。
マツダの企業文化の一部として、今後もTOCによるさらなる改善が期待されています。
重要用語「TOC」の理解で業務改善も大きく前進
TOCは、業務改善や組織運営を大きく前進させるマネジメント手法です。
普遍的で陳腐化することなく、今後も多くの企業で活用されることが予想されています。
ビーイングコンサルティングでは、経験と実績をもとに一社ごとに最適なTOCの導入をご提案しています。
TOC導入に興味をお持ちの方は、下記資料よりご検討ください。
こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができます。