「CMMIを認定してもらう方法を知りたい」
「どのようにすればCMMIの高評価認定を受けられるのか?」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
CMMIは、組織や組織内のプロセスがどれだけ機能しているかを5つのレベルで示す指標です。
レベル認定を受けることで、組織の管理状況を客観的に知ることができるため、マネジメント力の向上に活用できます。
この記事では、CMMIの認定方法や評価基準、得られる効果などについて解説します。
CMMIを受けるかどうかお悩みの方への検討材料になりますので、ぜひ最後までご覧ください。
CMMIとは
CMMIは、組織や組織内のプロセスがどれだけ機能しているかを示す指標です。
プロジェクトマネジメントにおける実行や管理など、4つの領域について5段階で評価を受けられます。
正式名称を「Capability Maturity Model Integration」といい、アメリカのカーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所が開発したソフトウェア開発向けの指標「CMM」を、他分野でも評価できるよう改良したものです。
CMMIで評価を受けることで、自社の管理状態を客観的に把握できるとともに、改善に向けた具体的な課題を知ることができます。
CMMI活用で見込める効果
ここではCMMIの活用で見込める効果を、次の内容で解説します。
- マネジメント力の向上
- 組織の管理状態を客観的に把握できる
- 組織の能力を社外に証明できる
詳しく見てきましょう。
マネジメント力の向上
1つ目の効果はマネジメント力を向上させられる点です。
CMMIの最新版であるV2.0では、4つの大分類・10の中分類・25の実践項目と評価項目が定められており、それぞれに評価を受けられます。
より詳細に自社の課題を知り、改善取り組みを実施できるため、効率的なマネジメント力の向上が可能です。
同時に、自社の強みを知ることもできるので、強みを活かした組織づくりもしやすくなるでしょう。
組織の管理状態を客観的に把握できる
2つ目の効果は、組織の管理状況を客観的に把握できる点です。
CMMIには評価基準が明確に定められており、すべての企業が同じ内容で評価されます。
そのため、現時点における組織の強みや弱みを客観的に把握できるとともに、他社と比べた場合の自社の立ち位置も把握できます。
組織の能力を社外に証明できる
3つ目の効果は社外に能力を証明できる点です。
前述のように、CMMIの評価基準は明確に決まっているため、高い評価を得られれば、社外にその能力をアピールできる材料にもなります。
実際にCMMIの評価をアピール材料として活用している企業も少なくありません。
例えば、Sky株式会社は2007年にCMMIレベル3を取得した際に、顧客向けのアピール材料として活用しています。
ほかにも、株式会社システム情報では継続的にCMMIレベル5を取得できていることを株主に向けて発信しています。
このように、得られた評価を社外に証明できる点は、CMMIのメリットの一つといえるでしょう。
CMMIにおける2つの表現方法
CMMIには、「段階表現」と「連続表現」という2つの評価方法があります。
ここでは、それぞれの評価方法について解説します。
段階表現
段階表現は組織全体の管理状態を評価する方法で、いわゆる総合評価です。
組織全体として、レベルアップに必要な課題を把握できます。
連続表現
連続表現は組織内における各プラクティスの管理状態を評価する方法です。
段階表現とは反対に、組織内の各プラクティスにおける個別評価と考えてもらえば問題ありません。
評価対象となるプラクティスは自由に選択できるため、プロジェクト全体における特定のプラクティスの評価や課題を知りたい場合に利用するとよいでしょう。
CMMIにおける5つの評価基準
ここでは、CMMIにおける1~5レベルの評価基準について解説します。
レベル1.初期状態
レベル1は、プラクティスが全く実行されておらず、その場しのぎ的に業務をしていると評価された状態です。
属人性が非常に高く、個人の能力や努力によって強引に業務を進めている状態ともいえます。
システムをはじめ開発環境がまったく整っておらず、トラブル発生や担当者不在などによって業務が滞ってしまうのもレベル1ではよく見られる状況です。
組織がレベル1の場合、業務自体はできるものの予算やスケジュール通りのプロジェクト進行は困難とされており、プロジェクト自体が失敗するケースも少なくありません。
レベル2.管理された状態
レベル2は、必要最低限のプラクティスが実行されていると評価された状態です。
ある程度、システムやスケジュールなどプロジェクトを最低限管理できる環境が整った状態ともいえます。
レベル2の場合、過去に似たようなプロジェクトであれば、成功体験を活かしてある程度効率的なプロジェクト進行が可能とされています。
レベル3.定義された状態
レベル3は、プロセスの標準化やマニュアルといった文書化、情報の統合化が進み、レベル2より高いレベルで管理されていると評価された状態です。
レベル3であれば、過去に経験のないプロジェクトであっても標準化されたプロセスを用いて効率的にプロジェクト進行が可能とされています。
また、情報の統合化によりノウハウを共有することで、今後のプロセス改善の仕組みも構築されている状態です。
レベル4.定量的に管理された状態
レベル4は、プロセスやサービスが定量的に管理されていると評価された状態です。
作業手順や進捗、プロダクトの品質が数値で管理されているため、安定したプロダクトの提供が実現可能とされています。
また、定量化されたデータが単一のプロジェクトではなく、横断的に収集・分析が実施されていることもレベル4に達している組織の特徴です。
レベル5.最適化された状態
レベル5はプロセスが最適化されていると評価された状態です。
しかし、あくまで「現時点で」最適化されているという評価であるため、終わりではありません。
レベル5を維持するためには、時代や技術の進歩にあわせて、プロセス改善やツールの導入を検討・実施し、継続的に改善をしていくことが重要です。
CMMIにおけるプラクティス領域について
前述の通り、CMMIの最新版であるV2.0では、4つの大分類・10の中分類・25の実践項目と評価項目が定められています。
各プラクティスにもレベルが設定されており、評価を受けることで組織の状況を客観的に把握できます。
V2.0の各領域について、次にまとめていますので参考にしてください。
大分類 | 中分類 | プラクティス領域 |
実行 | サービスの提供と管理 | サービス提供管理 |
戦略的サービス管理 | ||
成果物のエンジニアリングと開発 | 成果物統合 | |
技術ソリューション | ||
品質の確保 | ピアレビュー | |
プロセス品質保証 | ||
要件の開発と管理 | ||
検証と妥当性確認 | ||
供給者の選定と管理 | 供給者合意管理 | |
供給者選定 | ||
管理 | 事業レジリエンスの管理 | 継続 |
インシデントの解決と予防 | ||
リスクと機会の管理 | ||
人材の管理 | 組織トレーニング | |
作業の計画と管理 | 見積もり | |
監視と制御 | ||
計画 | ||
支援 | 実施の支援 | 原因分析と解決 |
構成管理 | ||
決定分析と解決 | ||
改善 | 実績の改善 | 実績と測定の管理 |
プロセス資産開発 | ||
プロセス管理 | ||
習慣と持続性の維持 | 統治 | |
実装のインフラ |
CMMIの認定を受けるためには
CMMIレベル認定を受けるためには、SCAMPIアプレイザーに依頼し評定してもらう必要があります。
SCAMPIアプレイザーとは、CMMI研究所(Institute)から教育・認定を受けたCMMI鑑定士を指し、個人またはチームで評定を行うことを「アプレイザル」ということから、そう呼ばれています。
SCAMPIは代表的なアプレイザル手法を指し、評価を受ける内容によってクラスA~Cの3つに分類されている点が特徴です。
- クラスA:
最も詳細な評価を受けられる。レベル判定を受けられるのはクラスAのみ。組織の管理状況に応じたレベル判定のほか、プラクティス単位での強みや弱みのほか、主な課題や改善を把握する方法についても把握可能。 - クラスB:
目標レベルにどの程度近づいているかを知りたい場合に使われる評価。クラスAほど詳細な評価ではないが、プラクティス単位での強みや弱み、各プラクティスが目標レベルの要件を満たしているか、主な課題や改善の方法などをクラスAより素早く把握できる。 - クラスC:
CMMIの指針に沿ったプラクティス改善方法や、改善のための推奨事項を知ることが可能。今後のアプレイザルや改善の把握に役立つ、さまざまなデータを得られるのもメリット。
クラスによって必要なコストや期間が変わりますので、「レベル認定を受けたい」「レベルの認定はいらないが改善に向けた課題を知りたい」などの目的にあわせてクラスを選択するとよいでしょう。
日本では、ユーロフィンFQL株式会社が、CMMI 研究所(Institute)認定のリードアプレイザーによる支援サービスを提供しています。
アプレイザーによる評定のほか、改善支援サービスや改善状況確認サービスなども取り扱っているので、気になる方は一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。
CMMI認定を受ける際の注意点
ここではCMMI認定を受ける際の注意点である次の2つについて解説します。
- 高額なコストが発生する
- レベル達成を目的化してしまいがち
詳しく見ていきましょう。
高額なコストが発生する
1つ目の注意点は、評価を受けるためには高額なコストが発生する点です。
例えば、日本においてはレベル3の認定を受ける場合、1,500万円以上が必要とされており、決して安い金額ではありません。
さらにCMMIの有効期限が3年と短く、継続的に認定を得るためには、その都度コストを支払う必要があります。
しかし、CMMIには外部へのアピール材料として活用できるメリットがあり、そこから売上や認知度の向上につながる可能性も考えられます。
高い評価レベルの取得によりコスト以上の恩恵が得られる場合もあるため、費用対効果のバランスを鑑みて検討しましょう。
レベル達成を目的化してしまいがち
2つ目の注意点は評価を受ける側の問題で、レベル達成が目的化してしまいがちな点です。
CMMIの本来の目的は、組織の現状を客観的に評価してもらい、マネジメント力の向上につなげていくためのものです。
あくまでマネジメント力向上のための手段であり、目的ではありません。
しかし、企業によってはレベル達成が目的となってしまっているケースも散見されます。
レベル達成が目的化すると、改善への取り組みが表面的なものとなってしまい、本来の目的であるマネジメント力の向上へと至らない可能性が高くなります。
結果、高レベル認定を受けたものの、プロジェクト成功率が低いままになってしまい、長期的に見ると組織の評価を下げることにもつながります。
評価レベルそのものはあくまで現状を知る指標にしかすぎないため、組織のマネジメント力を高めることに重点を置きましょう。
まとめ|CMMIを活用して組織の現状把握と改善を進めよう
CMMIは、組織や組織内のプロセスがどれだけ機能しているかを5つのレベルで示す指標です。
レベル認定を受けることで、組織の管理状況を客観的に把握できるため、マネジメント力の向上に活用できます。
他にも、高評価を得られれば社外へのアピール材料としても利用できますが、社外アピールが目的となり表面的な改善に終始してしまわないよう注意が必要です。
また、仮に低い評価であったとしても、悲観的になりすぎる必要はありません。
課題が明確になったことを前向きに捉え、積極的に改善に取り組んでいきましょう。
CMMIの高レベル認定を受けるためには、プロジェクトマネジメントの基本となるCCPMへの理解が欠かせません。
CCPMとは、バッファ(時間的な余裕)の消費具合と進捗率に注目した管理手法で、プロジェクトマネジメントにおいて「タスクの優先順位が把握できる」「プロジェクトの遅れ具合を把握できる」というメリットをもたらします。
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