今回の内容は、“Bottom-up implementation of Multi-Project CCPM -Case study of Mazda, Japan-”(日本におけるマルチプロジェクトCCPMのボトムアップ導入 –マツダ株式会社の事例-)として、TOCICO国際カンファレンス2014 ワシントンD.C.で発表し、世界中のTOCコンサルタントから賞賛されたプレゼンテーションをベースとしています。
新しい活動で組織にイノベーションを起こす際、皆様ならどのように始めますか?
選択肢1:トップダウンで一気に始める
選択肢2:ボトムアップで実績を出すことから始める
選択肢3:導入を諦める
長年、組織のイノベーションをお手伝いしていますが、お客様の多くは“選択肢2”を選ばれます。
正確には“トップマネジメントはイノベーションの方向性には合意するが、その実現可能性や成果にはまだ確信がない。ミドルマネジメントや現場メンバーがやる気をもって取り組めるか、実際の成果につながるかを見極めてから、組織的な導入の最終判断をする”というイメージです。
それは決して間違った判断ではありません。
組織を預かり責任をもつトップマネジメントであれば当然の選択とも言えます。
もちろん、組織によってはトップダウンで一気に導入というケースもありますし、短期間で大きな成果を得る近道かもしれません。
ひとつ言えることは、“イノベーションを起こす最短/最適な道のりは組織によってさまざま”ということです。
実際に私が携わらせていただいた“ボトムアップで実績を出してから導入する”を選択してイノベーションを起こした事例を見て行きましょう。
ちなみに、選択肢3を選んだ方、、、過去に苦い経験をされているのですね。上手く進めるノウハウがあります、諦めずにご相談ください。諦めずに。。。
信頼がイノベーションを加速させたマツダ株式会社パワートレイン開発本部の事例
■はじまり
2007年10月、マツダ株式会社のパワートレイン開発本部の中にマツダの将来を危惧し、イノベーションの必要性を考えていた2つの流れがありました。
当時のパワートレイン開発本部長と、後の推進チームの中心となる方々の2つの流れです。
そのイノベーションを望む流れが交わり、マネジメント層の約150名を集めてプロジェクトにイノベーションを起こすCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)の体感ワークショップを開催させていただきました。
参加された当時のパワートレイン開発本部長や推進チームとなる方々は、
「Yes=いいね!いけそうだ!」
「But…=トップダウンには過去に苦い経験が。この流れは確実に成功させたい」
という2つの思いから、有志によるボトムアップ導入を決断されました。
それは、パワートレイン開発本部のような非常に大きな組織においても、ミドルマネジメントや現場メンバー自身がCCPMを信頼できる状況になれば、トップダウンで全面展開したとしても上手くいく、マツダの文化となっていくはずだという強い思いでした。
■ボトムアップ活動
約1年以上の間、プロジェクトへのCCPM適用&実践のボトムアップ活動は続きました。
社内での信頼獲得に向けた草の根活動とも言えるもので、私も推進チームの皆様と一緒になって、毎月のように社内セミナーや勉強会、実践事例発表会を開催し、考え方の理解周知やプロジェクトの計画もご支援しました。
また、その実践ノウハウの共有のみならず、そのソリューションの効果を周知することも徹底しました。
適用範囲を絞ったプロジェクトでの実践も行い、マツダ内での実績も着実に増やしていきましたが、この時期は正直大変でした。
推進チームの皆様と一緒になって、どうすれば信頼を獲得できるのか、イノベーションを起こすことができるのか、常に考えて行動していましたが、なかなか大きく広がらない活動にジレンマも感じていました。
■ターニングポイント
2009年1月、そこにターニングポイントとなるプロジェクトが現れました。
当初「2年」で計画されていたある市場へ投入予定のプロジェクトに対して、トップマネジメント層から企業戦略の面から「1年」で市場投入するというリクエストが来たのです。
そのプロジェクトのプロジェクトマネージャーから相談された推進チームとしては、やりがいのあるチャレンジとして、全面協力することになりました。
フローを意識した計画作成と実行時の課題エスカレーションと迅速な解決を実践し、プロジェクトメンバー一丸となってチャレンジした結果・・・
当初2年のプロジェクトが見事に1年で完了したのです。
パワートレイン開発本部にとって、今までに経験したことのない画期的な成果を得ることができました。それは、CCPMというソリューションへの信頼を獲得するのには十分すぎる成功でした。
■次号へつづく
次号では、マツダパワートレイン開発本部でのソリューションへの信頼獲得後の“SKYACTIV TECHNOLOGY”プロジェクトへの全面適用とその成果、そして、現在についてお話いたします。
以上
シニア・コンサルタント
後藤 智博
この記事は、弊社サイトで過去に掲載していた内容を再掲載しております。