2019年に厚生労働省は働き方改革を発表しました。
働き方改革によって、残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進につながる制度の導入を企業に求めています。
しかし、自社でどのような取り組みをすれば良いか、悩んでいる人事担当者の方も多いでしょう。
この記事では、働き方改革に取り組んだ企業の成功事例5選とユニークな取り組み6選、自社で成功させるポイントについて解説しています。
働き方改革に取り組んだ企業の成功事例5選
働き方改革を成功させた事例は以下の5社です。
- 株式会社ベネッセコーポレーション
- 三木不動産株式会社
- NEC ネッツエスアイ株式会社
- 株式会社クレディセゾン
- アステラス製薬
ひと口に働き方改革といっても、企業によって重点的に扱っている施策が異なります。
たとえば、子育て支援に取り組んでいる企業の場合、産前・育児休暇の所得促進と時間短縮労働の導入などです。
次から詳しく解説します。
事例1:株式会社ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーションは、主に通信教育サービスを提供している企業です。
同社は、多様な働き方を推進し有給休暇や育児休暇の取得に取り組んでいます。
具体的には、有給取得奨励日の年間日数を定めました。
また、祝日と土日の間に平日があれば、休みに挟まれた平日を有給休暇で休むことを奨励しています。
育児休暇は男性にも利用してほしい願いをこめて「男性育休100%」を宣言し、さまざまな企業にも参加を呼び掛けています。
参考:働きやすく活気ある職場づくり(労働慣行)|株式会社ベネッセホールディングス
事例2:三井不動産株式会社
三井不動産株式会社は、オフィスビルから住宅まで幅広い課題を解決に導くサービスを提供している企業です。
三井不動産株式会社が取り組む働き方改革は、育児や介護など働き方に制約がある従業員が、仕事と両立できるインフラ整備に取り組んでいます。
全従業員を対象に、フレックスタイムの利用や半日単位の休暇が取れる仕組みです。
2017年4月から、半日出社や全日在宅などが選択できる在宅勤務体制を整えました。
このような取り組みにより、三井不動産株式会社では育児休暇を取得した従業員の復帰率は100%を継続しています。
事例3:NEC ネッツエスアイ株式会社
NECネッツエスアイ株式会社は、情報通信ネットワークの提供やICTのシステム構築を行う企業です。
同社は全社員を対象に、テレワークとサテライトオフィスを前提とした分散型ワークスタイルを発案しました。
在宅勤務の問題点である勤怠情報が把握できるツールを独自開発し、既存のツールと連携することで勤務時間の見える化を進めています。
施策後のアンケート評価では、ワークライフバランスが充実したと回答した社員が全体の82%、部下のモチベーションが向上したと答えた社員が約80%を占めています。
また、全従業員に対して説明会を約40回実施し、意識改革を果たしました。
参考:働き方改革に向けたNECネッツエスアイの取り組み|NEC ネッツエスアイ株式会社
事例4:株式会社クレディセゾン
株式会社クレディセゾンは、クレジットサービスを提供している企業です。
株式会社クレディセゾンは、働き方改革に向けて、どのような事情を抱えている人でも働ける環境整備を実施しました。
クレディセゾンの従業員の約8割が女性従業員であることから、時間短縮勤務や産前・産後休職・育児休暇の取得に取り組んでいます。
貴重な人材を失うことなく働いてもらうという方針のもと、テレワークやフレックスタイム制度などを導入し、より柔軟な働き方を推進しています。
すでにテレワークを開始し、今後は在宅勤務制度を取り入れて障がい者雇用の実現を目指しています。
参考:ワークスタイル変革の推進 時間や場所に捉われない柔軟な働き方を実現|株式会社クレディセゾン
事例5:アステラス製薬
アステラス製薬は、最先端医療の研究開発をしているグローバル製薬会社です。
同社は、従業員の豊かな生活と生産性の高い働き方の実現を目指しています。
これまでコアタイムが導入されているフレックスタイムから、2020年4月よりスーパーフレックスタイム制度に移行し、職務に応じた働き方を進めています。
また、子育て支援を重視し、男性の育児休暇・休業取得率100%を目標に定めています。
その結果、2020年度では、男性13人・平均利用日数29日だったものが、2021年度には、男性27人・平均利用日数91日と利用者も利用日数も増加しています。
ユニークなアイデアで働き方改革が成功した企業事例6選
ユニークなアイデアで働き方改革が成功した事例は以下の6社です。
- snow peak(スノーピーク)
- ITOKI(イトーキ)
- 株式会社ZOZO
- 株式会社メルカリ
- 株式会社OKUTA(オクタ)
- ファーストリテイリング
その企業でしか再現できないアイデアで働き方改革を実現させています。
フレックス制度や育児休暇など、他の企業でも取り組んでいる内容ですが、特徴のある取り組みが見られるでしょう。
それぞれの事例を詳しく紹介します。
事例1:snow peak(スノーピーク)
snow peak(スノーピーク)は、キャンプ用品を中心にアウトドア製品の開発や製造、販売を行っています。
自社で取り扱っているキャンピング用品をオフィス用品として再利用する、独自の取り組みが特徴的です。
例えば、休憩室やミーティングルームにスノーピーク製のテントを設置しました。
さらに、室内に植物を設置し、キャンプ場のようにリラックスして過ごせる空間を演出しています。
スノーピークでは、体験型ワークショップやオフィス見学を実施しており、さまざまな企業のオフィス改革や働き方改革が実現するように手助けをしています。
参考:キャンピングオフィス導入のメリット|snow peak(スノーピーク)
事例2:ITOKI(イトーキ)
ITOKI(イトーキ)は、オフィス家具の製造・販売を行っている企業です。
イトーキはIoTセンサーを活用をし、オフィス内の活動をモニターで可視化しています。
従業員が自由にオフィスの座席を予約できるのも特徴です。
この仕組みのおかげで、従業員がオフィスに着くと同時に、座席にチェックインできるようになります。
さらに、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークを導入した結果、柔軟な働き方とコスト削減に結び付きました。
参考:ハイブリッドワークナビゲーション|ITOKI(イトーキ)
事例3:株式会社ZOZO
株式会社ZOZOは、日本最大のアパレル系ECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営しています。
株式会社ZOZOは、コアタイムの有無を部署ごとに決められるフレックスタイム制度を導入しました。
また、休暇制度が充実しており、有給休暇のほか、慶弔休暇・生理休暇・介護休暇・子どもの看護休暇などが用意されています。
他社と異なる点は、ペットに対しても休暇制度を利用できることです。
全国在宅勤務制度やテレワーク制度の導入で、国内どこにいても業務が可能になりました。
在宅ワークの回数制限を設けないなどの取り組みも行っています。
参考:WORK STYLE 福利厚生・制度について|株式会社ZOZO
事例4:株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、日本大手のフリーマーケットアプリを運営している会社です。スマホにアプリをダウンロードするだけで簡単に売り買いができます。
株式会社メルカリは、2021年に「YOUR CHOICE」という新しい働き方を導入しました。
オフィス出社と在宅勤務はもちろん、セキュリティガイドラインに従えばホテルで働く選択もできます。
さらに、コアタイム・フレキシブルタイムのないフルフレックス制度を導入しており、365日勤務可能です。
また、フレックス制度を活用し、日中の中抜けをする働き方は約73.5%、一日の労働時間を増やして週休を増やす働き方は約9%の従業員が利用しています。
個人のパフォーマンスが上がったと感じる人は「非常にそう思う」「そう思う」を合わせると約91.4%、チームのパフォーマンスが上がったと感じる人は約80.5%という結果が出ています。
参考:メルカリ、多様な働き方を尊重した 「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」の活用状況を公開|株式会社メルカリ
事例5:株式会社OKUTA(オクタ)
株式会社OKUTAは、高品質の建材を使用し、新築・リフォーム事業を幅広く展開している企業です。
経済産業省から「先進的なリフォーム事業者表彰」を受賞しています。
OKUTAスーパーフレックス制度を設定し、以前は平日のみに対応していたところを改良し、土日祝日を問わず全日自由に出退勤ができます。
OKUTAスーパーフレックス制度には、コアタイムはなく、労働時間を1カ月単位で考え、時間内であれば自由な配分が可能です。
これらの取り組みの結果、昨年と比べ残業時間は約8%削減し、売上を1人当たり約106%増加、全体的な売り上げも向上しました。
参考:社員の声を反映した働き方改革!自由度UP、新たな「OKUTAスーパーフレックス制度」を11/1(木)から本格始動!|株式会社OKUTA(オクタ)
事例6:ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、「ユニクロ」「ジーユー」「セオリー」などのブランドを持ち、生産から販売まで自社で行っている企業です。
ファーストリテイリングは、「変形労働制」を取り入れています。
変動労働制とは、例えば週休3日にした場合に1日10時間働くことで、フルタイム勤務と同等の給与が支給される制度です。
また、有給休暇などの休暇が充実しており、産休・育児休暇の充実に加えて看護休暇や介護休暇を取得できます。
育児休暇後の業務復帰に不安な方でも復職サポートがあるため、仕事と家庭の両立が可能です。
このような取り組みを行ったことで、実際に利用した従業員から「仕事を続けながら介護できるようになった」「夫婦共働きでも子どもと過ごす時間が増えた」などの感想が寄せられています。
企業事例をさらに詳しく調べるには
先に紹介したような企業のほかにも、働き方改革に成功している企業は多く存在しています。
さらに働き方改革の事例を知りたい方は、以下のようなサイトも参考にしてみてください。
具体的に何から手を付けるべきか悩むときは、他社の事例を参考にすることで、自社の課題が明確になるでしょう。
しかし、同じ取り組みでも社風や従業員の年齢などが違うため、必ず自社でも成功するとは限りません。
働き方改革を実施するときは従業員に十分な説明し、意識改革をすることも重要です。
働き方改革に企業が取り組むべき具体例
働き方改革に企業が取り組むべき具体例は以下の5点です。
- 育児休暇取得の促進
- テレワークの推進
- フレックス制度の導入
- 残業時間の削減
- 短時間労働の認可
今後、少子高齢化が進み労働人口の減少や育児や介護による離職の解決のために、働き方改革が進められています。
短時間労働やテレワークの導入は、さまざまな事情を抱える従業員のニーズに応えることになるでしょう。
育児休暇取得の促進
働き方改革の1つに「育児休暇取得の促進」があります。
育児休暇は女性だけでなく、配偶者のために男性も取得できる環境作りが大切です。
先に紹介した「株式会社メルカリ」では、代表取締兼COOの小泉氏も自ら率先して育児休暇を取得しています。
さらに、認可外保育園補助制度を設け、認可保育園に入園できなかった子どもが認可外保育園に入園した場合、認可保育園と認可外保育園の保険料の差額分を会社が全額負担しています。
このような取り組みにより、従業員が安心して出産後も復職し育児と両立ができるでしょう。
テレワークの推進
テレワークは、オフィスに出社することなく、オフィス以外の場所で業務ができる制度です。
通勤時間の短縮や負担軽減が可能で、介護や育児中の従業員や障がいなどで通勤が難しい方でも仕事を続けられるメリットがあります。
テレワークは、育児休暇やフレックス制度・時間短縮労働以外の選択ができます。
フレックス制度の導入
フレックスタイム制度は、業務の開始時間や終業時間を自分で選択でき、育児中や集中する時間の通勤を避けるために利用できる制度です。
働き方改革ではフレキシブルタイムやコアタイムの導入は必ず設定しなければならないものではなく、社内や部門ごとに決められます。
コアタイムを導入したフレックスタイム制度では、業務に支障が出ることなく進められています。
残業時間の削減
長時間労働は従業員の健康を害することもあり、社会問題となっています。
また、職場の上司や同僚が業務している中、自分だけ帰りにくいことや、定時に帰ると査定に響くのではないかと心配する従業員もいるでしょう。
ノー残業デーの取り組みをすることで、時間内に業務を終わらせることを意識付け、万が一、残業が必要になった場合は違う日に振り替えるといった強制力も必要です。
しかし、強制的に進めると持ち帰り業務をしたり、他の業務日にしわ寄せがいくため注意してください。
短時間労働の認可
短時間勤務措置は、家族の介護や育児の両立のために設けられた制度です。
短時間勤務制度の中には、フレックスタイム制度・時差出勤の制度も含まれています。
産前・育児休暇を利用し、復職した後は短時間勤務制度を利用したい従業員もいるでしょう。
育児休暇や短時間勤務制度は、子どもの年齢で最大年数が決められている場合があります。
働き方改革を実現するためのポイント
働き方改革を実現するためには、以下の4点です。
- 勤怠管理の最適化
- 従業員の意識改革
- ICTツールの導入
- 対応部署やプロジェクトの設立
働き方改革を進める際に発生する問題点を抽出し、上記のような対策を打つと良いでしょう。
急に働き方改革を取り入れると、従業員の受け入れに時間がかかる場合があります。
時間をかけて実践と改良が必要です。
勤怠管理の最適化
働き方改革を実現するためには、従業員の勤怠管理を適切に処理しなければなりません。
働き方関連法が改正されたことで、大手企業は2019年4月から、中小企業は2020年の4月から、時間外労働が規制され、原則月45時間・年間360時間が上限となりました。
まず、部署内の従業員一人ひとりの働き方を把握することが大切です。
- 勤怠の漏れがないか
- 長時間労働が日常的になっていないか
- 毎月残業する日が続いていないか
上記のような理由で、残業する日が続く場合「業務が適切か」を考え、無駄な作業がないか見直しが必要です。
さらに、10日以上の年次有給休暇を付与される従業員は、年に5日の有給を取得しなければなりません。
残業の状況を適切に管理・記録するには、勤怠管理システムや業務可視化ツールの導入をおすすめします。
従業員の意識改革
働き方改革を導入する際は、従業員の時間の使い方に対する意識改革も重要です。
従業員の意識そのものを変化させるには、長時間労働が日常的となっている組織風土から変えなければなりません。
残業時間の削減や時間短縮労働の取り組みで労働時間が減少しても、効率よく業務を行い生産性を向上させる必要があります。
ICTツールの導入
働き方改革を実現するために、ICTツールの使用が求められます。
まずは、ペーパーレス化から着手し、従業員の業務スケジュールをICTを利用して管理すると良いでしょう。
さらに、個人のスケジュール管理だけでなく、共有スペースの満空状況の確認できれば、さらに業務効率化につながります。
ICTツールの具体的な例でいえば、これまで使っていたタイムカードをオンライン上でデータ管理する勤怠管理ソフトです。
従業員の出退勤した時刻を即時データ化されるため、今まで以上に正確な記録が可能です。
また、バーチャルオフィスを活用すれば、自宅にいながらオフィスにいるようなコミュニケーションを図れます。
テレワークで起こりやすい、コミュニケーショ不足によるトラブルを回避できるでしょう。
ICTの導入の際には、セキュリティ管理に留意し外部流出の危険性に備えることも重要です。
対応部署やプロジェクトの設立
働き方改革を実現するためには、対応部署やプロジェクトの設立が重要です。
例えば、施策を適切に実行できるよう、各部署のトップを集めて働き方改革推進室を設立するのも良いでしょう。
こうした新しい部署の設立が必要なのは、改革を進めるうえで部署を超えた連携が必要だからです。
ただし、「推進室だけが何かやっている」という雰囲気が出ないよう、全従業員が対象のキックオフミーティングや外部講師によるミニ研修などを開き、従業員全員の心構えを変える必要があります。
まとめ:働き方改革の実現に向け成功企業を参考にしよう
この記事では、働き方改革の実現に成功している事例を11社紹介しました。
働き方改革の実現を成功するためには、従業員の意識改革が必須です。
企業は従業員の勤怠管理と短い時間の中で効率良く働ける環境整備が重要となるでしょう。
まずは従業員の業務を見直し、ICTツールの導入やプロジェクトの設立を検討してみてください。
また、働き方改革の実現のために、どのようにプロジェクトを進めて良いか悩んでいる企業様は、当社ビーイングコンサルティングへご相談ください。
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