近年推し進められてきた働き方改革によって、問題になっていた時間外労働問題に対してメスが入りました。
今までのような無理な超過労働ができないよう、残業時間の上限を設け、時間外労働に関して厳しく取り締まる形に変化しています。
この改革についてしっかりと理解しておかなければ、気づかぬうちに法に触れることをしてしまう可能性もあります。
また、大幅に変化した残業時間の上限規制によって、企業側に無視できない問題もいくつか生じているようです。
今回は、働き方改革によって残業時間の上限規制はどのように変化したのか、その上限規制からどのような問題が発生しているのかについて解説していきます。
それでは、早速見ていきましょう。
働き方改革とは
働き方改革とは、業務効率の向上のために、社員個々の事情に合わせて柔軟な働き方を選べるようにするための改革です。
働き方改革は、数年にわたり進められている改革です。
2016年、2017年に改革の具体的な方向性が決められ、2018年6月に「働き方改革法案」が成立し、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されています。
具体的な施策として、リモートワーク環境の導入、福利厚生の充実などがあげられますが、企業によって異なる対応を取っています。
時間外労働の上限規制について
労働基準法によって、労働時間には上限が設けられています。
ただし、近年まではどの企業でも勤務時間が守られないことも多かったのが現状です。
ここでは、労働に関する上限規制について、上限はどのような基準なのか、働き方改革の施行前と後でどのように違いがあるのかについて解説していきます。
労働の上限
労働基準法によれば、労働時間には上限規制がかけられています。
上限規制には「法定時間外労働」と「所定時間外労働」の2種類があり、以下のように区分されています。
法定時間外労働 |
1人8時間・週40時間の法定労働時間を超えて労働させること。労働基準法の第32条に定められている |
所定時間外労働 |
所定労働時間を超えて労働させること。所定労働時間とは、企業が定める従業員が働く時間。 |
時間外労働とは、一般的に法定時間外労働のことを指しています。
労働基準法という法律に則った労働時間は守らねばなりません。
これまでの業務時間規定
上限規制が設けられる前は、限度基準告示によって上限が設定されていましたが、罰則による強制力はありませんでした。
加えて、特別条項を設けることで、上限なく時間外労働させることが可能だったのです。
つまりは、「企業の好きなようにいくらでも働かせられるような状態」でした。
このような状態を改善するため、政府は働き方改革をはじめたのです。
「罰則規定」と「残業時間の上限規制」が追加
働き方改革の制定によって、時間外労働に関して、制定前に比べて2点の大きな変更がありました。
- 罰則の追加
- 時間外労働の上限規制
2019年の働き方改革関連法の制定によって、超過労働に対して60時間以上の時間外労働には50%増の賃金を払わねばならなくなりました。
その賃金の支払いについて猶予期間が設けられ、2023年4月までに払わなければ「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰が科されます。
また、「原則として月45時間・年360時間」という時間外労働の上限が設けられました。
36協定とは
36協定とは、時間外労働や休日労働に関して決められた協定のことで、労働基準法36条に基づくことからサブロク協定と呼ばれています。
正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」で、厚生労働省によれば、以下のように定められています。
労働基準法では、1日及び1週間の労働時間並びに休日日数を定めていますが、これを超えて、時間外労働又は休日労働させる場合には、あらかじめ「36 協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
引用元:厚生労働省
36協定を締結しないまま残業や休日出勤させれば法律違反となってしまいます。
社員が1人であろうと、届け出をしなければ罰則を受けてしまいますので、気を付けましょう。
上限規制に伴って生じる問題
働き方改革で、間違いなく労働者の環境や待遇は改善しました。
しかし、残業時間の上限規制によって、企業や社員にとって無視できない問題が生じています。
ここでは以下の3点について、解説していきます。
- 給料が減る
- サービス残業が増える
- 業務量が不均等になる
それでは見ていきましょう。
給料が減る
元々の給料が減るというわけではありません。
今まで残業していた分の給料がもらえず、収入が減ってしまうのです。
基本給だけでは到底足りないという人も多く、進んで残業していた人もいます。
なかでも、収入の大部分を残業することで賄っていた人は、家計に大きな打撃があることが考えられます。
サービス残業が増える
時間外労働に上限が設けられたことで、下手に残業ができなくなりました。
しかし、時間外労働を削減する際に、タイムカードなどの記録や実際の数値だけにこだわる企業もあります。
業務が滞っているにもかかわらず、上層部の命令で残業ができず、結果的にサービス残業してしまうという事態が起きています。
実際の業務時間と記録されている労働時間がずれてしまい、社員が割を食ってしまう場合も多いようです。
業務量が不均等になる
上限を設けたからといって、仕事量が減るわけではありません。
仕事量が少ない人たちは今までより楽になりますが、元から業務量が多い人たちにはそのまま負担がのしかかります。
そうなれば、同じ企業にいても、業務量が少ない人たちは定時に帰り、業務が多い人たちは仕事が終わるまで帰れないという格差が生まれてしまう可能性も0ではありません。
働き方改革に適応するための手段
働き方改革の適用によって生じる問題は、企業にとって無視できない厄介事です。
ただ、本当に重要なのは問題を避けるのではなく、その問題に対し企業がどのように対応するのかということです。
ここでは、企業が働き方改革に対してどのように対応すれば良いかについて、解説していきます。
業務の効率化をすすめる
働き方改革によって上限が設けられた今、業務量の見直しや効率化をすすめ、新たな業務体系に変化していかなければなりません。
なぜなら、規定で残業時間に上限が設けられたとしても、すぐに残業が減るということはほぼ無いからです。
結局、企業内の業務効率化をしない限り、現場の仕事が減るわけではありません。
今まで残業して何とか終わらせていた業務を、いきなり残業しないでこなすことは不可能です。
業務量や効率の見直しを行わなければ、サービス残業していたり、仕事を持ち帰って仕事をしたり、更なる問題に発展してしまうかもしれません。
企業の抱える効率化を妨げている問題に合わせてツールを導入したり、プロへの業務委託をするなど、できる限りの努力が必要です。
厳格な勤怠管理システムを備える
タイムカードや出勤簿など、紙媒体で勤怠管理している場合、集計して計算するまで勤務時間が把握できないという場合もあります。
自分たちが知らぬ間に、上限時間を過ぎてしまう可能性もあるでしょう。
また、月をまたいで残業時間を調整するにも、現在の勤務時間が分かりづらいといった問題が発生してしまいます。
この問題に関しては、クラウドを使った勤怠管理システムを導入するのが効果的です。
リアルタイムで労働時間が把握できるため、細かな労働時間の管理が可能となり、知らぬ間に上限を過ぎるということはなくなります。
社員の不満には適した対応をする
社員の中には、好んで残業する人もいます。
たしかに、仕事がどうしても終わらない場合や、急ぎの仕事を手がけている場合は、労働基準法に反しない程度に残業することは問題ありません。
しかし、無駄に残って仕事をする人は別です。
「残業代を稼ぎたいから残って仕事をしたい」と考える人もいるでしょうし、「残業代がないと生活が苦しくなる」という人もいるでしょう。
無駄な残業は企業内の残業時間短縮に影響しますし、社員のワークライフバランスを崩すことにつながりかねません。
何にせよ、残業をせずとも社員が困らずに済むように、何か対策を講じなければなりません。
給与アップをして元々の賃金を増やしたり、残業しない社員に賞与を与えたりするなど、残業の代わりに他の形で社員へ還元させる仕組みが必要です。
まとめ:働き方改革によって職場環境は良いものになる
今回は、働き方改革によって変化した「残業時間の上限規制」と「規制されたことで生じた問題」の2点について解説しました。
働き方改革によって残業時間の上限規制には、以下のような変化がありました。
- 60時間以上の時間外労働には50%像の賃金を払うことを義務付け、それを2023年4月までに払わなければ「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰が科される。
- 時間外労働は原則として「月45時間・年360時間」までできる。
試案の柔軟な働き方のために、無理な仕事の仕方ができなくなりました。
しかし、残業ができなくなったことは、良い効果を生んだだけではなく、以下のような問題点も生んでしまっています。
- サービス残業が増加してしまう
- 社員の給料が減ってしまう
- 業務量・負担が社員の間で不均等になってしまう
残業をしないと生活が苦しくなる社員もいますし、仕事量が多く残業しないと終わらないという組織もあるため、働き方改革を疎む声もあるようです。
ただ、これらの問題は企業側の努力によって解決できます。
「給与やの賞与を上げる」「業務効率を高める」「福利厚生の充実」など、社員の利益の増加と業務自体の見直しをすることで、問題をスムーズに解決できるでしょう。
是非この記事を参考に、働き方改革によって生じた変化に対して、柔軟に対応をしてください。
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