自社のビジネス成長において、全体を満遍なく改善するより、ごく少数の要素に注目し改善していった方が、結果的全体のパフォーマンスが向上することをご存知でしょうか?
「作業の効率化もおこなって、プロジェクト管理も見直したが、組織のパフォーマンスが上がらない…」と、お悩みの管理職も多いかと思います。
そこで短期間で成果を上げつつ効果を継続していくための基礎理論、TOCについて解説。
TOCの理解を深めると、組織のパフォーマンスを向上させる秘訣を知ることができます。
理論から手法まで解説するので、順を追って見ていきましょう。
ビジネスシーンにおいて理解すべきTOCとは?
TOCは「Theory of Constraints」の略であり、日本語では「制約条件の理論」と訳します。
TOCでは、組織全体のパフォーマンスを妨げている制約条件を特定。
特定した制約条件の改善に注力し、全体のパフォーマンスを改善していきます。
具体例としては、生産工程でA・B・C・Dの4つの工程があったとします。
全体のパフォーマンスを上げるためにA・B・C・Dの4工程の全てに対策を打つことは、TOCでは行いません。
例えば上記の中で、一番パフォーマンスの低い工程がBとします。
さらに結果的にBが全体のパフォーマンスを制限してしまっている場合、Bに対して集中して対策を打ちます。
つまりBが制約条件であり、組織全体のパフォーマンス改善の鍵を握っているのです。
どんな複雑なシステムでも、ごく少数の要素である制約条件に支配されていると考え、制約条件に対し徹底的に対策を打つのがTOCでの考え方です。
TOCにおける制約とは?
組織は相互関係を持つ各要素から成り立っています。
そしてTOCにおける制約とは、組織のパフォーマンスを決定づけるごく一部の要素を言います。
また、制約はボトルネックと一致する場合もあります。
ボトルネックとは、元々はワインボトルなどのボトルの一番細い部分のことを言います。
つまり工程の中で一番弱いボトルネックは、最終的なパフォーマンスを決定づける工程、つまり制約となりえることがあるのです。
TOCでは組織のフローを停滞させている原因となる特定の要素、つまり制約を見つけ出し、制約を活用・改善することで組織全体の生産性が向上します。
制約のパフォーマンスに集中
TOCでは、制約のパフォーマンス改善に注目します。
制約のパフォーマンス改善をすることで、全体の生産性が向上するからです。
自動車生産ラインで3つの工程があり、1時間当たりの生産量を以下の通りとした場合の例を解説します。
- 20台/1時間
- 10台/1時間
- 35台/1時間
上記の場合、制約となっている工程は②です。
①③の工程で生産量を上げたところで、全体の生産量は上がりません。
②の工程の生産量、生産効率を向上させることが、全体パフォーマンスの改善につながるのです。
ビジネスでの制約を克服する5段階集中プロセス
生産性が一時的に向上したとしても、1回限りの改善のみでは組織の成長につながりません。
組織の継続的な成長は、自社ビジネスの拡大において必要不可欠です。
そこで継続的な成長の鍵となる、TOCにおける5段階集中プロセスが重要となります。
TOCにおける5段階集中プロセスは、以下の通りです。
- 制約を見つける
- 制約を最大活用する方針を決める
- 制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる
- 制約を強化する
- 制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る
①から順に見ていきましょう。
ステップ① 制約を見つける
まずは業務のフローを最も遅くしている箇所を探します。
上記で解説した自動車の生産ラインに例えると、一番生産量の少ない工程を探し出します。
工程の中で一番、弱い部分をまずは発見することが必要です。
ステップ② 制約を最大活用する方針を決める
制約の工程が、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう調整します。
例えば制約工程が、何らかの原因で100%の力を発揮できていない場合にその原因を取り除いて、100%の力を発揮できるようにします。
つまり「制約を徹底活用する」のステップは、制約のパフォーマンスを向上させるための事前準備です。
ステップ③ 制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる
制約の工程が能力を発揮できるよう、その他の工程スケジュールを制約に合わせていきます。
つまり制約がパフォーマンスしやすいように、全体の予定管理を行うステップです。
ステップ④ 制約を強化する
4のステップは、制約のパフォーマンスを向上させていく段階です。
自動車ライン生産の場合、1時間当たりで一番生産量の少なかった工程の生産性を上げていきます。
ワインボトルで例えると、ボトルの首部分の太くしていき、同じ時間内で水が注げる量を増量さていくイメージです。
ステップ⑤ 制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る
制約の工程が改善すると、次は別の工程が制約となって現れます。
例え自動車生産ラインで、1時間あたりに10台を生産する工程が1時間あたりに25台生産できるようになった場合はどうでしょうか。
次は当初は制約となっていなかった、1時間あたりに20台を生産する工程が制約となる場合があります。
⑤の時点で惰性がないように気を付けながら、最初のステップに戻り改善を重ねることで、組織の継続的な成長が可能です。
TOCの理念を構成する4本柱
続いてTOCの理念について、解説をしていきます。
TOCの理念を表現したものが、TOCの4本柱と呼ばれる考え方です。
TOCの4本柱は、以下の通り。
- ものごとはそもそもシンプルである
- どんな対立も解消できる
- 人は善良である
- 決して”わかった”と言うな
①から説明していきます。
①ものごとはそもそもシンプルである
「ものごとはそもそもシンプルである(Inherent Simplicity)」は、ものごとを複雑化せずシンプルに考えるという理念です。
現実で起きている問題も、複雑に捉えるのではなく、シンプルに考えることで新しいアイデアや解決口が見えます。
②どんな対立も解消できる
「どんな対立も解消できる(Every Conflict Can Be Removed)」では、対立が当たり前とせず、どんな対立も解消できると考えます。
対立ではなく、お互いWin-Winの関係を築くことを重要と考えます。
妥協ではなく対立する要素、双方にとって最善の答えを導き出すことが必要です。
③人は善良である
「人は善良である(People Are Good)」では、人は基本的には善良であると考えます。
つまり最初から問題を起こそうという人はいないと考え、人を責めないことが重要です。
人はそもそも善良だと考えた上で、答えを導き出そうという考え方です。
④決して”わかった”と言うな
「決して”わかった”と言うな(Never Say ”I KNOW”)」は、改善の限界を定めてしまうことへの忠告です。
”わかった”と言ってしまうと、現状に満足してしまい、現状以上の改善への試みが断たれてしてしまいます。
組織の継続的な改善と成長のためにも、”わかった”とは言わず、変化する現状を常に見ていきましょう。
問題に直面した際に、上記の4本柱をベースにものごとを捉えることができれば、誰も思いつかないような素晴らしい解決先が見つかるはずです。
TOCの理念で上記の4本柱は、とても重要な考え方となります。
ビジネスを成功に導くTOCの管理手法|CCPMとは?
CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)とは、TOC理念をベースに解決すべきプロジェクト環境に適用したソリューションを言います。
CCPMは3つの要素から構成さえており、プロジェクト環境の停滞を防いだ上でフローを最大化していくことが目的です。
以下が、CCPMの3つの要素。
- バッファマネジメント
- パイプラインマネジメント
- フルキット
各自、解説してきます。
バッファマネジメント
バッファマネジメントでは、停滞時間の発生を防ぐための対策をします。
課題の優先順位が不明確であると、プロジェクト内で停滞時間が発生。
停滞時間が発生すると、プロジェクトの完了ペースに影響するため、バッファマネジメントはCCPMにおいて重要な工程です。
優先順位を明確化することで、プロジェクト実行中の停滞時間を削減していきます。
パイプラインマネジメント
パイプラインマネジメントとは、投入するプロジェクトを戦略的に選定することです。
開始するプロジェクトが多すぎると、プロジェクトの途中段階で停滞が発生していまいます。
しかし投入が少なすぎる場合も、完了のペースは低下。
パイプラインマネジメンとは、プロジェクトの完了ペースを最大化するために、投下前にプロジェクト数を最適化しコントロールすることを言います。
フルキット
フルキットとは、プロジェクトが円滑に進むよう、組織的に「準備万端な状況」を構築するための仕組みのことです。
パイプラインマネジメントで適正なプロジェクト数を投下したとしても、準備不足の場合は途中で手戻り停滞が発生してしまいます。
結果的に、完了のペースは低下してしまうのです。
上記の様なケースは、納期へのプレッシャーから発生してしまう場合もあり、珍しいケースではありません。
準備不足により手戻り、停滞を防ぐために、事前準備とサポートと体制を整えてからプロジェクトに着手をしていきます。
TOCを理解し自社ビジネスを発展へと導く
今回の記事では、自社のビジネスを成功に導くためのTOCについて解説しました。
TOCの元となる理論を理解することで、組織のパフォーマンス向上のための答えが見えてきます。
TOCにおける5段階集中プロセスについても紹介。
5段階集中プロセスを実行することで、組織的の継続的な成長を支えることが可能です。
さらに、TOCの理念を構成する4本柱についても説明しました。
TOCの4本柱をベースに問題を捉えることで、新しい解決の糸口を発見することができます。
TOCをベースとしたプロジェクト環境のソリューション、CCPMについても記載。
CCPMはプロジェクト環境の改善、パフォーマンスの向上において、有効なソリューションです。
上記を参考にし、TOCの考え方を自社の発展へとぜひ、活かしてください。
また、TOCのさらに詳しい内容を、以下資料にて公開しております。
こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができますので、是非ご活用ください。