プロジェクトの成功に大きな影響を与える、ODSC。
目にしたことはあるものの、どのようなものか知らない方もいるでしょう。
そこで、本記事ではODSCとはどういったものか説明します。
プロジェクトに重要である理由やコツも紹介するため、プロジェクトを成功させたい方は参考にしてください。
プロジェクト成功の重要なカギであるODSCとは
ODSCとは、プロジェクトの計画段階で完成イメージを共有するために作成するものです。
ODSCは、以下の3つの言葉の頭文字を取っています。
- Objectives:目的
- Deliverables:成果物
- Success Criteria:成功基準
上記の要素を明確にすることにより、プロジェクトメンバー全員に具体性を持った取り組みをうながし、プロジェクトの成功確率を向上させることが目的です。
以下で、社内の新基幹システムを開発する場合のODSC例を紹介します。
目的 |
・新システムにより生産性を向上させ会社の売上をアップする |
成果物 (Deliverables) |
・社内で使用する新基幹システム |
成功基準 (Success Criteria) |
・〇〇年〇〇月〇〇日に新基幹システムを稼働させる |
次に、3要素についてそれぞれ詳しく見てみましょう。
目的(O)
目的(Objectives)は、名前の通りプロジェクトを行う目的で、プロジェクトの成功によりどのような未来を手に入れられるかを定めます。
新基幹システムの開発を例にすると、システム開発により生産性を向上させ売上をあげる、システムの開発を通してノウハウを蓄積する、などが目的になります。
注意点としては目的と手段を混同してしまわないことです。
今回の場合、「新基幹システムの開発」はあくまで手段であり、目的にはなりません。
目的が曖昧であったり、手段を目的としてしまったりした場合、メンバーの足並みが揃わず進行が遅れる、完成だけを目的とした実用性の低いシステムができあがる、といった事態を招きます。
成果物(D)
成果物(Deriverables)は、プロジェクトによって生じる成果物のことです。
新基幹システムの開発を例にした場合、「新基幹システム」「新基幹システムと連携できるサブシステム」などが成果物になります。
成果物の設定とは、言い換えると手段の設定です。
目指すべき目的もわからない状態で、手段を選ぶことは不可能なため、成果物を定義するためには事前に目的の設定が不可欠です。
成功基準(SC)
成功基準(Success Criteria)は、プロジェクトに対する具体的な成功基準です。
基幹システム開発を例にすると、「〇〇日までにシステムを稼働させる」「機能要件を90%以上実現する」などが挙げられます。
成功基準は、プロジェクトの進行具合によって変更することも少なくありません。
しかし、変更するからといって最初の設定を怠ると、ゴールが曖昧なままプロジェクトに取り組むこととなり、効率的なプロジェクト進行が困難になります。
ODSCで特に重要なのは成功基準(SC)
ODSCは目的と成果物・成功基準からなるものですが、その中でも特に成功基準が重要です。
複数のチームや部署でプロジェクトを行っている場合、成果物を集約するタイミングで手戻りが発生することも珍しくありません。
どの品質までの成果物を作成するといった基準が共有されていないことが主な原因です。
成功基準を明確にして共有することで、品質が低いことによる手戻りを防止できます。
成果物の品質を確認できるチェックリストを作成すると、マイルストーンなど特定のタイミングで品質が一定基準を満たしているか確認できるので、おすすめです。
プロジェクト成功にODSCが重要な理由
プロジェクトの開始時に開くミーティングで目的などを共有するでしょう。
しかし、その時点でチームメンバー全員が目的を正確に理解しているケースは多くありません。
「成果物の作成で実現したい未来」を目的に設定していても、手段であるはずの「成果物の作成」を目的と誤認識している場合があります。
手段と目的を混同すると、目的を達成するまでの流れや基準がブレてしまい、本来達成したい目的からかけ離れた成果となってしまいます。
そのため、プロジェクトの成功にはODSCを決定・共有することが重要なのです。
ODSCを設定する手順
ODSCを設定する手順は、以下の通りです。
- 日付などプロジェクトのゴールを定義する
- ゴールの目的を決定する
- ゴールの成果物を決定する
- ゴールの成功基準を決定する
- ODSCを関係者で読み上げて確認する
- マイルストーンごとのODSCを作成する
- ODSCを共有する
ゴールの成功基準を決めているときに目的や成果物に納得できなければ、もう一度目的や成果物を決める段階に立ち戻りましょう。
ODSCを設定してもうまく共有できなければ、意味がありません。
チームメンバー全員が目にする場所に提示するなどして、いつでも確認できるようにしましょう。
ODSCを用いたプロジェクトマネジメントの流れ
ODSCを用いたプロジェクトマネジメントの流れは次の通りです。
- ODSCを決定する
- 目的達成に必要なタスクを洗い出す
- タスクを共有する
- 随時確認し必要に応じて調整する
2つ目の目的達成に必要なタスクをすべて洗い出す際は、WBSの利用がおすすめです。
WBSは、タスクを分解し構造化する手法で、完了までの全タスクを抜け漏れなく抽出できます。
また、プロジェクトの期日や成功基準を調整した際は、現場の混乱を防ぐためにも、速やかにメンバーに共有しましょう。
WBSについては下記の記事で解説をしています。
プロジェクトの成功には「決めないことを決める」ことも重要
プロジェクトでは決めなければならないことが多く存在しています。
決める順番を明確にしておかなければ、優先順位の高いものを後回しにしてしまい、プロジェクトが遅れる可能性があります。
プロジェクトを成功させるために、「決めなくてよいタイミング」を決めましょう。
「決めなくてよいタイミング」を決めるためには、段階的フルキットの活用がおすすめです。
フルキットとは、プロジェクトをスムーズに進めるための準備を意味しています。
フルキットを活用する際のポイントは、以下の通りです。
- 領域ごとに準備すべき項目を整理する
- 1つの領域の準備項目を9個以内に抑える
- 大きな手戻りが発生する項目を中心に抽出する
- いつも決まらない項目を中心に抽出する
- 課題が先送りされる項目を中心に抽出する
- 決定に必要な関係部門が多い項目を中心に抽出する
企業によるODSCの活用事例
ここでは、ODSCの活用事例として、オムロンソフトウェア株式会社の取り組みについて解説します。
オムロンソフトウェアは、ITソリューションベンダーとして決済やモバイル、監視サービス分野のソフトウェアを提供している企業です。
同社では、これまでAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)システムを使って、自社ソフトのシステムの問題性や不具合を検証していました。
しかし、あくまでAPMを運用している開発・保守部門に必要なデータしか活用していなかったため、企画・営業部門からの要求や質問に即座に回答できない課題がありました。
このような課題を解決するために、まず実施したのがODSCを用いての目的や成果物の整理です。
具体的には次のようなODSCを設定しています。
- 目的(Objectives)
関係者全員が安心して、サービスやシステムの企画・営業・運用保守などができる - 成果物
現状や将来予測の健康診断結果を自動的に出力する仕組み
- 成功基準
①性能目標(処理時間)を月次で評価できるようにする
②KGIを月次で評価できるようにする
(KGI:組織やプロジェクトが達成すべき目標を表す定量的な指標)
③サービス・システムの構成変更前後で、影響範囲の予実を検証できるようにする
④KPIを月次で評価できるようにする
(KPI:目標の達成度合いを計る定量的な指標)
次に実施したのは、設定した目的を達成できるよう、現状における問題点の明確化です。
結果的に次のような課題が見つかりました。
- 性能目標やKGI・KPIとシステムリソース情報の関連付けができておらず、状況がつかめない
- 問題発生時の調査に時間がかかる
- 管理が手作業や事後対応となることが多く、共有や把握に時間がかかる
- 定量的な情報に基づく対応ができていない
- 自動化やツール連携の検討が実施できていない
オムロンソフトウェアは上記の課題に対して、アプリケーションや管理帳票で取得した企画・営業に関するデータをAPMに取り込み、開発・保守データと統合して運用する取り組みを実施しました。
その結果、サービス管理レベルが向上し、他部門からの問い合わせにもスムーズに回答できるようになりました。
ODSCを事前に設定し目指すべきゴールを明確にしたことが、効果的な取り組みを実施できた要因のひとつといえるでしょう。
ODSCやCCPMについて学ぶ際におすすめの本
これまで、プロジェクトの成功にはODSCが重要な理由などを説明しました。
それらは、当社ビーイングコンサルティングのコンサルタントである後藤智博、渡瀬智、西郷智史による著書「Project Management進化論 クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント」の中でくわしく説明しています。
その他にも、プロジェクトの進捗管理方法なども紹介しているため、ご興味がある方はぜひご覧になってください。
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まとめ:ODSCを適切に設定してプロジェクトを成功させよう
プロジェクトの成功には、正確に目的や成果物・成功基準を認識することが重要です。
目的手段は混同しやすいものであるため、ODSCを作成したら、チームメンバーがいつでも確認できる場所に提示して共有しておきましょう。
本記事で紹介した本「Project Management進化論 クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント」にはさらにくわしく説明されているため、ぜひ参考にしてプロジェクトを成功させてください。
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