「プロジェクトが予定通りに進まない」

「作業見積もりの対応に追われて自分の仕事が終わらない」

このような悩みをお持ちのプロジェクトマネージャー(PM)も多いのではないでしょうか。

プロジェクト工数の見積もりは考慮すべき点が無数にあるため、計画を立てずに進めていると時間だけが過ぎてしまいます。

ここでは、プロジェクトマネジメントに使える具体的な作業見積もり方法を6つ紹介します。

見積もりの作成に課題を感じているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひ最後までご覧ください。

プロジェクトにおける作業見積もりの重要性

プロジェクトでは、工数の見積もりが重要視されます。

理由は、主に以下の3つです。

  • クライアントから信頼されるため
  • 働きやすい環境を構築するため
  • 属人的な工数管理を避けるため

プロジェクトが計画通り進み、納品物を納期内にクライアントに提出することで信頼を得られます。

計画通りに進めるためには、精度の高い作業見積もり(工数見積もり)が必要です。

また、見積もりが甘いと思わぬ作業が発生しプロジェクトメンバーに負担が掛かります。

プロジェクトでは納期が差し迫ってくると、残業をして工程を進めようとするケースも珍しくありません。

そうなると従業員たちは疲弊しきってしまい、作業効率が落ちプロジェクトの進行にも支障が出ます。

工数の見積もり精度を高くすることでメンバーが働きやすくなり、プロジェクトの効率化にもつながります。

また、見積もり方法を確立することで、属人的な工数管理を避ける効果もあります。

マネージャーの勘や経験を頼りにプロジェクト運営を行っていると、スケジュール通りに進行しない、常にマネージャの判断を仰がないと作業を進められないといった事態に陥りがちです。

結果的にプロジェクトが非効率になるため、属人化を防ぐことで安定したプロジェクト進行が可能です。

プロジェクトで作業見積もりに失敗する原因

プロジェクトでは、思うように作業見積もりを作成できないケースも少なくありません。

だからこそ失敗の原因を知り、効果的に見積もりを実施する必要があります。

ここでは、作業の工数見積もりに失敗する原因をご紹介します。

必要な作業の洗い出しが不十分

見積もりを算出するためには、プロジェクトで実施する作業を明確にする必要があります。

抽出する作業に漏れがあると、その分、想定していない作業が発生します。

また作業の洗い出しの際、作業の粒度が大きいほど具体性が低下する点には注意が必要です。

具体性を欠いた作業見積もりでは、「各作業を終えるのに想定以上の時間かかる」「予想外の作業が発生する」などのズレが生れます。

結果、最初に想定していた時間以外で対応するしかなくなり、プロジェクトメンバーの長時間労働につながります。

作業の洗い出し時はダブルチェックを欠かさず、数人で徹底的に実施しましょう。

バッファを考慮していない

プロジェクトでは欠員や要件漏れといった想定外のことも起こり得ます。

プロジェクトはトラブルなく進むものと過信し、クライアントの厳しい要求に無理をしてまで答えていると、失敗につながりやすくなります。

システム開発の例では、設計に漏れがあり導入したシステムが正常に動かない場合や人為的ミスにより再構築が必要になるケースがあります。

このときバッファがあれば、バッファを使用して作業ができるのでメンバーに無理な長時間労働を強いる必要もありません。

プロジェクトにはトラブルがつきものという考えのもと、バッファを設けることでプロジェクト進行中でも柔軟な対応が可能です。

バッファについては以下記事で解説していますので、こちらも参考にしてみてください。

関連記事:バッファとは?使用するシーンや重要性・プロジェクトにおける役割を説明

見積もりが属人的になっている

作業見積もりの内容が属人化する点にも注意が必要です。

仮に、以前と同じようなプロジェクトだといって勘や経験だけで作業見積もりを行ってしまうと、プロジェクトが思うように進まず、途中でトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

プロジェクトはひとつとして同じ内容のものが存在しないからです。

このような事情があるからこそ、客観的なデータをもとにして適切な作業見積もりを行う必要があります。

プロジェクト管理に効果的な作業見積もり方法

ここでは、プロジェクト管理に有用な以下の見積もり方法5つを紹介します。

  • ボトムアップ見積もり
  • 類推見積もり
  • パラメトリック見積もり
  • プライスツーウィン法
  • 三点見積もり法

1. ボトムアップ見積もり

ボトムアップ見積もりは、システム開発の現場で用いられる見積り方法のひとつで、成果物から必要な作業を算出します。

そして、作業ごとのリソース量を足し合わせて合計のリソースを算出します。

  • 成果物 > 大分類のタスク > 小分類のタスク
  • 初めに成果物を設定し、そこから大分類・小分類のタスクを抽出する

ボトムアップ見積もりは見積もりに抜けや漏れが生じにくく、精度が高いのが特徴です。

しかし、成果物や作業内容を理解する必要があるので、ある程度工程を進めなければ俯瞰的な図を作成できない点には注意が必要です。

2. 類推見積もり

類推見積は、よく似たプロジェクト事例を参考に見積もりを算出する方法です。

ほかの方法に比べ素早く作成でき、予想工数や費用に大きなズレが生じにくいため、精度の高さにも期待できます。

事例を参考にしつつも、異なる部分は経験や他の見積方法で補填します。

ただし、類推見積は類似事例があって成り立つ算出方法なので、新しい分野のプロジェクトで活用しにくいデメリットがあります。

3. パラメトリック見積もり

パラメトリック見積りとは、過去のデータを基にして指標を作成し、プロジェクトのコストや所要期間を見積もる方法です。

「係数法」や「係数モデル」とも呼ばれます。

例えば、大規模なシステムを開発をする場合の作業見積もりを考えるとします。

過去に5人日かけて導入したシステムの規模が、今回導入するシステムの10分の1だとすると、5人日を10倍した50人日の工数が必要だと類推できます。

パラメトリック見積りは類推見積りと似ていますが、類推見積りが過去のデータをほとんどそのまま使用するのに対し、パラメトリック見積りは、過去のデータから推計式を作成して見積もりを算出する点が異なります。

4. プライスツーウィン法

プライスツーウィン法は、クライアントの予算に合わせて見積もりを算出する方法です。

クライアントが提示している予算をベースにするため、相手からの理解が得やすくなります。

また、考慮する点が少ないので見積もりを素早く出すことができるメリットもあります。

しかし、受注後の予算に合わせて作業計画を立てる必要があり、工程を把握するまでに相応の時間が必要です。

プライスツーウィン法を使う場合、予算を意識しすぎて成果物の品質が大きく低下する可能性がある点には注意しましょう。

5. 三点見積もり法

三点見積もり法は、以下3点の値から工数を見積もる手法です。

  • 悲観値:最も進行が遅れた場合の日数
  • 最頻値:過去の実績から見て現実的に進行した場合の日数
  • 楽観値:最もスムーズに進行した場合の日数

三点見積もり法の計算式は次の通りです。

  • (楽観値 + 最頻値 × 4 + 悲観値)÷ 6

例えば、作業日数の楽観値が20日、最頻値が24日、そして悲観値が40日だとすると、(20 + 24 × 4 + 40)÷ 6を計算して26日となります。

悲観値が入ることで日数に余裕が生まれるのがメリットです。

6. 専門家による判断

特定の分野の専門知識を持つ専門家が見積もりを判断する方法もあります。

専門家には社外のコンサルタントや外部委託した経験豊富なプロジェクトマネージャーなどが該当します。

一人の専門家が見積もりを出すこともあれば、複数の専門家が協議して算出するケースもあります。

専門家は作業見積もりに深く精通していますが、実際の作業メンバーではないため、大まかな結果になる可能性も考えられます。

意見は取り入れつつも、正確な見積を出す場合は現場のメンバーときちんと話し合う必要があります。

作業見積もりの精度を上げるコツ

ここでは、作業の見積もり精度を上げるために意識したいコツを紹介します。

1.作業は細分化する

抽出する作業の粒度が大きすぎると、見積もり精度は低下します。

見積もりを作成する際は、できる限り作業を細分化しましょう。

例えばシステム開発では、「完成図書を作成する」という作業は以下のように分解できます。

  • 導入機器一覧表の作成
  • システム構成図の作成
  • 詳細設計書の作成
  • テスト結果報告書の作成
  • 運用手順書の作成

しかし、あまりに細かすぎると作業が進めにくくなるので注意しましょう。

一概にはいえませんが、中規模・大規模プロジェクトでは3日~1週間程度、小規模プロジェクトは半日~1日程度の粒度に細分化するのがおすすめです。

2.ロードマップを活用する

ロードマップとは、プロジェクトの工程をひとつのルートで表した図です。

ロードマップを作成することで、タスごとの優先度や重要度が一目でわかります。

例えば、システム開発を行う際に「詳細設計」が遅れてしまうと、後ろに控えている「システム構築」や「単体・総合テスト」などの遅延が起こりやすくなります。

作業間の依存関係が明確になり、高精度の見積もりを算出しやすくなるでしょう。

3.バッファを設ける

計画にバッファを設けない場合、不測の事態に対応できません。

バッファがないと、例えばプロジェクトメンバーの一人が病気で休んでしまった場合、他のメンバーの長時間労働で対応することになりかねません。

プロジェクトがスムーズに進み納期が早まる場合は問題無いはずなので、バッファは積極的に設けて活用しましょう。

4.経験や勘に頼りすぎない

プロジェクトマネージャーが経験や勘に頼り過ぎた結果、プロジェクト管理が属人化する可能性があります。

同じようなプロジェクトでも、メンバーのスキルや使用するツールの差異などによりかかる日数は変動するため、勘や経験だけですべての進行を管理するのは困難です。

経験や勘が外れた結果、スケジュール通りにプロジェクトが進まない事態にもなり得るでしょう。

このようなトラブルを避けるためにも、経験があるからと過信しすぎず、客観的なデータを駆使することが大切です。

また、見積りを作成したら複数人でレビューを実施するとより良い見積もりが完成します。

5.クライアントに対して入念にヒアリングする

クライアントへのヒアリングを徹底的に実施しましょう。

見積もり段階では、クライアント自身もプロダクトの具体的なイメージが出来ていないケースが少なくありません。

何度もヒアリングしていく中で、クライアントの頭の中でも考えが整理されて具体的な形となります。

顧客との距離が近い場合は、実際に足を運び対面でヒアリングするのも効果的です。

ヒアリングを入念にすることでクレームの抑制にもつながります。

6.定期的に見積もりを更新する

計画した見積もり内容は定期的に見直しましょう。

プロジェクトが進むにつれ、当初想定した工程にズレが発生する可能性も考えられます。

プロジェクトメンバーと進捗状況を共有し、見積もりについて随時ミーティングを実施することで、より良い進め方が見つかることもあります。

メンバー間の情報共有をよりスムーズにするために、プロジェクト管理ツールを活用するのも効果的です。

まとめ:精度の高い見積もりを出してプロジェクトに活かそう

作業見積りの精度はプロジェクトの成否に大きく影響するものです。

工程に関する高精度な計画を立てれば、クライアントからの信頼が得られ、プロジェクトをよりスムーズに進められるでしょう。

そしてプロジェクトが円滑に進めばマネージャー自体の生産性が向上し、プロジェクトにも良い影響を与えます。

ビーイングコンサルティングは、プロジェクト管理や業務効率化のコンサルティングを行っており、多数の実績を持ちます。

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