プロジェクトライフサイクルとは、プロジェクトを実施するときに通過するプロセスです。
プロジェクトライフサイクルを導入すると、プロジェクトを4つのフェーズに分けられ、タスクやそれにかかる期間、規模などを細分化でき、効果的にプロジェクトを実施できます。
このように、プロジェクト管理に効果的なプロジェクトライフサイクルですが、イメージがつかず適切な方法がわからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プロジェクトライフサイクルのフェーズごとの特性や注意点を解説します。
効果的なプロジェクトを実施したいプロジェクトマネージャーの方におすすめです。
プロジェクトライフサイクルを回転させて計画的・効率的にプロジェクトを進めましょう。
プロジェクトライフサイクルとは
プロジェクトライフサイクルとは、プロジェクトを実施するときに通過するプロセスです。
スタートフェーズ・プランニングフェーズ・モニタリングフェーズ・フィニッシュフェーズの4つのフェーズで構成されています。
この4つのフェーズは、プロジェクトを効果的に実施するため、タスクやそれにかかる期間、規模などを細分化したものです。
フェーズごとに情報を細分化した結果、プロジェクトの全体像が把握しやすくなります。
プロジェクトライフサイクルを導入する際は、各フェーズに明確な目的を定めましょう。
さらに、各フェーズの最終段階にマイルストーンやフェーズゲートを設置すると、効果的な評価が可能です。
- マイルストーン:プロジェクトの中間地点や節目のポイント
- フェーズゲート:各フェーズを移行する際に実施される移行判定基準
マイルストーンやフェーズゲートにより、各フェーズの評価を行い、プロジェクトの変更や修正、中止を検討するとよいでしょう。
終盤にかけて変更や修正を行うのは困難なので、序盤のプロセスを適切に設定することがプロジェクトの成功の秘訣です。
プロジェクトライフサイクルの3つの型
プロジェクトライフサイクルには次のような3つの型があります。
- 予測型プロジェクトライフサイクル
- 反復・漸新型プロジェクトライフサイクル
- 適応型プロジェクトライフサイクル
上記の3つのプロジェクトライフサイクルの型を詳しく解説します。
予測型プロジェクトライフサイクル
予測型では、プロジェクトにかかる時間やコスト、スケジュール、スコープ(作業範囲・期限)などを初期フェーズで予測・決定します。
この型は、プロジェクトを効果的に実施するために必要なありとあらゆる情報を収集します。
情報収集が甘いと、プロジェクトで発生するリスク回避できず、不要な時間やコストがかかってしまいます。
上記のようなリスクを回避するため、プロジェクトライフサイクルの各フェーズやタスクで情報を詳細に分類しましょう。
初期フェーズで情報を詳細に分類することで、設定した内容に従い、効果的にプロジェクトライフサイクルを進められます。
上流工程から徐々に下流工程へと進める「ウォーターフォールモデル」が、予測型プロジェクトライフサイクルの代表例です。
プロジェクトの終盤になると修正が利きにくくなり、コストがかかりやすくなる注意点があります。
反復・漸新型プロジェクトライフサイクル
反復型では、プランニングフェーズとモニタリングフェーズを繰り返します。
漸新型では状況に合わせ新たな機能を追加し、効果的にプロジェクトライフサイクルを繰り返します。
その結果、実施しているプロジェクトへの理解度が増し、より効果的なプロジェクトを実践できるでしょう。
この反復・漸新型は、作業量の多い複雑なプロジェクトに向いており、予測型の弱みである、プロジェクトの終盤になると修正が利きにくい点を克服するために開発されました。
プロジェクトを実施しながら必要な機能を追加できるため、基本条件がそろっていなくても着手できます。
また、少ないコストでプロジェクトの修正を行えるのもメリットです。
適応型プロジェクトライフサイクル
適応型は、反復・漸新型と同様にプランニングフェーズとモニタリングフェーズを繰り返しますが、2~4週間の短いスパンで各フェーズを回転させます。
各フェーズを繰り返す時間やコストが決まっていることが特徴です。
プランニングフェーズを重視する反復・漸新型と異なり、適応型はモニタリングフェーズを重視しているため、要望が激しく変わる環境に対応できます。
アジャイル型や変化駆動型とも呼ばれており、スタートフェーズで基本条件がそろわない難易度の高いプロジェクトで効果を発揮します。
プロジェクトライフサイクルの特性
プロジェクトライフサイクルの特性は次の通りです。
- 初期段階だと不確実な要素が多い
- 初期段階だとステークホルダーの影響を受けやすい
- 中盤にかけてリソースが多くなっていく
- 終盤にかけてフェーズの修正が行いにくくなる
ここでは、プロジェクトライフサイクルの特性を詳しく解説します。
初期段階だと不確実な要素が多い
初期段階だと不確実な要素が多くリスクが大きくなります。
なぜなら、情報が少なくプロジェクトの全体像を把握するのが難しいからです。
プロジェクトが終盤になるにつれ情報が多くなり、全体像を把握しやすくなるため、リスクは少なくなります。
フィニッシュフェーズでは、不確実な要素がほとんどなくなり、それに比例してリスクも減少します。
序盤に多くの情報を収集できると、効果的にプロジェクトを進められるでしょう。
初期段階だとステークホルダーの影響を受けやすい
ステークホルダーは株主や経営者、従業員、取引先など、企業活動によって利害を被るすべての関係者を指します。
初期段階だとステークホルダーの要求が多く、影響を受けやくなります。
計画を立てた後に取引先から変更があると、もう一度計画を立て直しになることもあるでしょう。
このように、要求の多い初期段階はステークホルダーの影響を受けやすく、プロジェクトの遅延リスクが高まります。
一方で、ステークホルダーからの要求は、終盤につれて減少する傾向にあります。
あらかじめステークホルダーによる影響があることを考慮し、プロジェクトライフサイクルを計画しましょう。
中盤にかけてリソースが多くなっていく
プロジェクトライフサイクルのリソースは、初期段階は少ないものの中盤にかけて多くなります。
特に、成果物の作成を行うモニタリングフェーズでは、作業やそれに必要な従業員、コストなどありとあらゆるリソースが多くなります。
初期段階は計画を立てるプロジェクトマネージャーや役員といった少数の人的リソースで済むからです。
最もリソースが多くなるのが中盤で、終盤には初期段階同様、リソース量が減少します。
プロジェクトライフサイクルを効果的に実施するには、適切なリソース管理が重要です。
プロジェクトマネージャーは、あらかじめ使えるリソースを把握しておき、計画通りにプロジェクトを進められるようにしましょう。
終盤にかけてフェーズの修正が行いにくくなる
プロジェクトの終盤は、不確実な要素やステークホルダーの影響が少なくなり、リソースも減少しやすくなります。
一方、一つの修正がプロジェクト全体に大きな影響を与えるため、修正が行いにくくなります。
プロジェクトによっては、修正ができないこともあるしょう。
その場合、プロジェクトライフサイクルを一からやり直さなければなりません。
あらかじめ詳細な計画を立て、イレギュラーが発生した場合の対策も考えておきましょう。
プロジェクトライフサイクルを導入するメリット
プロジェクトライフサイクルを導入すると次のメリットが期待できます。
- プロジェクトを効果的に実施しやすくなる
- コスト削減につながる
- リスクマネジメントにつながる
上記の3つのメリットを詳しく解説します。
プロジェクトを効果的に実施しやすくなる
プロジェクトライフサイクルを導入する1つ目のメリットは、プロジェクトを効果的に実施しやすくなることです。
なぜなら、プロジェクトの全体像が把握しやすくなり、各フェーズで必要な要件に応えられるからです。
プロジェクトライフサイクルを導入しない場合、無駄なプロセスとともに遅延リスクが発生しやすくなります。
そこで4つのフェーズに分けてプロジェクトを管理することで、リスクの発生を最小限に抑えられます。
リスクを抑えた効果的なプロジェクトを実施することで、クライアントの要望を的確に捉えられるようになり、競争優位性の向上が見込めるでしょう。
コスト削減につながる
4つのフェーズに分けることで、プロジェクトで必要な要件を理解しやすくなり、不要なものがわかります。
プロジェクトに不要なものがわかることで、各フェーズで無駄なリソースを割かずに済むでしょう。
具体的には、モニタリングフェーズに多くのリソースを分配し、それ以外のフェーズではリソースを抑えられます。
適切なリソース管理が行えるようになった結果、プロジェクトのコスト削減につながり、生産性の高いプロジェクトを実施できます。
リスクマネジメントにつながる
リスクマネジメントにつながることもプロジェクトライフサイクルを導入するメリットのひとつです。
プロジェクトライフサイクルを導入していると、不確実な要素やステークホルダーの影響、リソース不足などの各フェーズで起こりうるリスクを考慮に入れて計画を立てられます。
リスク回避の対策が立てやすくなり、リスクマネジメントを十分に施してプロジェクトを進められます。
ただし、小さいリスクまですべて対処しようとするとコストがかかりすぎるため、リスクの優先順位をつけて対処を進めます。
許容できるリスクとそうでないリスクをプロジェクトマネージャーが適切に分けましょう。
プロジェクトライフサイクルの4つのフェーズ
プロジェクトライフサイクルは、次の4つのフェーズから成り立ちます。
- スタートフェーズ
- プランニングフェーズ
- モニタリングフェーズ
- フィニッシュフェーズ
ここでは、各フェーズを詳しく解説します。
スタートフェーズ
スタートフェーズでは、プロジェクトの定義付けを行います。
具体的には、プロジェクトを実施する理由を設定し、クライアントに承認を得ます。
プロジェクトマネージャーは次のフェーズへとスムーズ移行できるよう、次のことを実施しましょう。
- ゴール・目的・予算・スケジュールを文書にまとめる
- プロジェクトに関わる主要な関係者をリストアップ
- 効果的に進めるためのプロジェクト管理ツールの選定
また、プロジェクトマネージャーは、次のプランニングフェーズまでにプロジェクトの目的・目標・必要条件・リスクを理解しておきましょう。
プランニングフェーズ
プランニングフェーズでは、プロジェクトライフサイクルが有効に機能できるように計画書を作成します。
計画書には、次の項目を記載しておくとよいでしょう。
- 各担当者
- プロジェクトを実施する目的
- スコープ
- スケジュール
- ロードマップ
- 役割分担
- コミュニケーションツールやミーティング方法
- 利用するプロジェクト管理ツール
- 重要なタスクの共有
同時にプロジェクトマネージャーは、この段階で次のような施策を実行に移しましょう。
- 各項目ごとにかかるリソース:ひと・もの・費用・情報・時間など
- スケジュール:マイルストーンやフェーズゲートの設定
- 運営体制:参加する部署・役割を可視化する
- 品質管理:品質管理の基準を明確に設定
- リスクへの対策:起こりうるリスクのリストアップとそれの対策
あらかじめ入念なプロジェクトの計画を立てておくと、運用中に目標と実績の差を把握しやすくなり、速やかな軌道修正が可能です。
モニタリングフェーズ
モニタリングフェーズは、プランニングフェーズで作成した計画書に沿って実際に各メンバーが作業を開始します。
多くのリソースが必要になるフェーズであるため、プロジェクトライフサイクルで最も重要な段階です。
また、プロジェクトは計画通りうまく進展するとは限りません。
予期せぬ事態が発生すると、計画の調整が必要になる場合もあります。
計画通り進めるため、プロジェクトマネージャーは次の項目を意識してコントロールしましょう。
- 使えるリソースの把握
- チームメンバーのパフォーマンス管理
- プロジェクトで起こりうるリスクの把握
- 状況把握のミーティングをこまめに実施
- 修正点がある場合のスケジュール更新
全てのタスクが完了したらクライアントへ報告し、同意を取っておくと良いでしょう。
フィニッシュフェーズ
フィニッシュフェーズは、プロジェクトの終了を意味します。
プロジェクトマネージャーは、成果物の確認や細かい要件の処理などプロジェクト全体を振り返りましょう。
必要であれば次のチームにプロジェクトの要件を伝え、引き渡しを行います。
クライアントへの終了報告をもってプロジェクトを終了します。
また、チームメンバーの士気を高めるため、最後にねぎらいの言葉をかけることも大切です。
各フェーズで意識するべきポイント
各フェーズで意識すべきポイントは次の通りです。
- スタートフェーズ:目的を明確にする
- プランニングフェーズ:ガントチャートを活用する
- モニタリングフェーズ:フローチャートで情報を共有する
- フィニッシュフェーズ:評価・改善点を次回に活かす
各フェーズで意識するべきポイントを詳しく解説します。
スタートフェーズ:目的を明確にする
スタートフェーズでは、プロジェクトの目的を明確にすることがポイントです。
プロジェクトマネージャーだけではなく、チーム内でアイデアを出し合い、目的を明確に設定しましょう。
その際、目的が現実的かどうか、ツールやフレームワークを使って判断します。
例えばマインドマップを利用して、目的を視覚化することで、クライアントにプロジェクトの計画を伝えやすくなります。
また、SWOT分析を用いることで、「強み・弱み・機会・脅威」を分析でき、プロジェクトメンバーの意見を一致させやすくなるでしょう。
プランニングフェーズ:ガントチャートを活用する
プロジェクトのタスクが「どのようなものなのか・いつ行われるのか・いつまで行うのか」をガントチャートを活用して視覚化すると、プロジェクトチームで状況把握が行いやすくなります。
ガントチャートとは、プロジェクト管理で利用される管理表のことです。
横軸で時間を管理し、そこにチャートと呼ばれる横棒で管理項目や担当者などを管理します。
具体的には、横軸にプロジェクトに必要な日程を縦軸に計画書の内容を記載します。
その後、計画書の内容を達成するために必要な時間をチャートとして表に記入し管理します。
各タスクで、マイルストーンやフェーズゲートを設定することで、進捗状況が一目で把握できるでしょう。
また、タスクを担当する部署ごとで色分けすることで、わかりやすくなり、情報共有しやすくなります。
モニタリングフェーズ:フローチャートで情報を共有する
フローチャートとは、プロジェクトのプロセスやシステムなどの流れを表した図です。
矢印や端子(角丸の四角形)といった記号を活用し、プロジェクトの進捗状況を可視化します。
複雑になりやすいモニタリングフェーズのプロセスを可視化することで、計画を効果的にモニタリングできます。
さらに、フローチャートを共有することで進捗状況の共通認識が取れるため、足並みがそろった効果的なプロジェクトを実現できるでしょう。
フィニッシュフェーズ:評価・改善点を次回に活かす
プロジェクトが完了してから少し期間を空けることで、客観的な評価を行えます。
マインドマップやガントチャート、フローチャートにより視覚化されたデータが残っていると、具体的な評価につながります。
方法として、プロジェクト・ポートフォリオ管理ツールを活用することで、プロジェクトに対する客観的な点数付けが可能です。
プロジェクト・ポートフォリオ管理ツールでは、数十から数百にわたる評価項目により、詳細な評価が行えます。
プロジェクト・ポートフォリオ管理ツールの評価から良かったこと・悪かったことを抽出し、成功はそのまま次回へと活かし、失敗はプロジェクトチームで改善点を話し合うと良いでしょう。
まとめ:プロジェクトライフサイクルを理解してプロジェクトを効率化させよう
プロジェクトライフサイクルは、プロジェクトを4つのフェーズに分けることで、タスクやそれにかかる期間、規模などを細分化し、効果的にプロジェクトを管理する方法です。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトライフサイクルを導入することで、プロジェクトを管理しやすくなります。
特に、4つのフェーズの理解度が高まることで、効果的なプロジェクトライフサイクルを実現できます。
しかし、プロジェクトライフサイクルを誤った方法で行うとかえって逆効果になり、効果的なプロジェクトを実施できません。
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今回ご紹介したプロジェクトライフサイクルをスムーズに回転させるためにも、CCPMの基礎であるクリティカルチェーンやバッファへの理解が必要です。
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