記事をご覧のみなさん、PMBOKがどういったものかご存じでしょうか?
- 読み方:「ピンボック」
- ひとことで表すと「プロジェクトマネジメントに役立つ知識集」
このように読み方だけでなく、PMBOKの意味が分からずお困りの方も多いことでしょう。
そこで今回はPMBOKとは何かわかりやすく解説いたします。
上記では箇条書きで簡潔に要点をまとめましたが、以下ではプロジェクトマネジメント、PMI、PMPといったPMBOKの周辺知識についても詳しくご説明いたします。
さっそく見ていきましょう!
※この記事では、第6版のPMBOKについて解説しています(最新版は第7版)。
プロジェクトマネジメントとは?
PMBOKとプロジェクトマネジメントは切っても切り離せないものであるため、この章ではまずプロジェクトマネジメントとは何か明らかにします。
そもそもプロジェクトマネジメントとは「プロジェクトが前もって計画した通りに進むように管理すること」です。
では具体的に何をもってプロジェクトが達成あるいは成功したと言えるでしょうか。
それは「品質・費用・納期の管理がどれも失敗していない状態」です。
納期までに品質の高い成果物を予算内で作れるようにすることがゴールであり、プロジェクト管理を徹底させて初めてプロジェクトが成功したと言えます。
また、今後多くの仕事がAIにとって代わられる可能性がある中、プロジェクトマネジメントの重要性は高く、依然として将来性があります。
とはいえ、プロジェクトマネジメントの世界も易しくはありません。
実際にプロジェクトを実行するとき、PM(プロジェクトマネージャー)やPL(プロジェクトリーダー)はプロジェクトを推進していますが、中でもプロジェクトを完遂させる優秀な人材は生き残り、プロジェクトマネジメントの経験や知識が浅いPMは淘汰されてしまいます。
PMBOKとは?
PMBOKとは「プロジェクトマネジメントに関する情報を体系化してまとめた知識集のこと」です。
Project Management Body of Knowledgeの略で頭文字を取っていて、「ピンボック」と呼ばれています。
PMBOKとPMBOKガイドは混同されやすいですが、微妙に違います。
PMBOKは体系そのものを表すのに対し、PMBOKガイドはPMBOKをまとめた文書を指します。
1987年に初版が発表されたPMBOKは、今やプロジェクト管理の世界標準と知られています。
プロジェクト管理に関する知識が体系的にまとめられているため、読むと思考が整理されます。
そんなPMBOKは何度も改訂されていて、初版が発表された1987年以来、4年に1度ペースで改訂版をリリースしています。
なお、現在の最新PMBOKは2021年7月に改訂された第7版です。
こうしたPMBOK/PMBOKガイドはすべて、PMIと呼ばれる米国のプロジェクトマネジメント協会によって発行されています。
今回の記事では、第6版までの内容を解説します!
第7版の内容については、別の記事を作成中です。
PMIとは?
PMIとは「Project Management Institute」の頭文字を取ったものであり、本部がアメリカにある「PMBOKガイドを発行している非営利団体」です。
PMPと呼ばれる試験を認定するなど、プロジェクトマネジメントやPMBOKを世界中に広める活動をしており、1998年にはPMI日本支部(PMIJ)が設置されました。
PMBOKの目標
第6版のPMKBOKが最終的に目指しているのは、プロセス管理を通じて「QCDを達成すること」です。
ここで言うQCDとは「Quality(品質)Cost(原価)Delivery(納期)といったプロジェクト管理の3要素」を指します。
そんなPMBOKの目標であるQCD管理を成功に導くためには、プロジェクトを「5つのプロセス」「10の知識エリア」「3つのパート」の3つに分けて管理することが求められます。
5つのプロセス
プロジェクトマネジメントを進める上で、従来はプロセスの存在感がさほどありませんでしたが、最近になってプロセスの段階が重要視されるようになりました。
以下ではプロジェクトが始動してから終結するまでの5つ段階を説明します。
- 立ち上げプロセス
まずプロジェクトのオーナーから立ち上げの認可をもらいます。
プロジェクトの目的やゴール、予算、スケジュール、PMの責任が及ぶ範囲などを定義付け、利害関係者(ステークホルダー)を特定します。
- 計画プロセス
プロジェクトマネージャーが中心となってプロジェクトの計画を立てます。
プロジェクトの範囲を絞り込み、成果物の完成に必要なメンバーを決めます。
- 実行プロセス
立案した計画を基に、人材や資源を調達し、プロジェクトを実行します。
- 監視・コントロールプロセス
当初立てた計画通りにプロジェクトが進んでいるか確認します。
その際、計画と実行があまりにかけ離れている場合は調整しましょう。
- 終結プロセス
プロジェクトの終わりです。
プロジェクトで得たデータや知見を次のプロジェクトに活かすために保管します。
10の知識エリア
続いて5つのプロセスを実行するときに必要な知識を10個に分けて管理しましょう。
・統合マネジメント
他の9つの知識エリアを統合します。
全体の管理とプロジェクトの方針を決める役割を担います。
・品質マネジメント Q(品質)
プロジェクトで完成した成果物(タスク)の品質を管理します。
顧客のニーズを満たせていないものは失敗作です。
・コストマネジメント C(費用)
事前に設定した予算内でプロジェクトが完了するようにするとともに、予算を超えないようにマネジメントします。
問題ないと思われるのは、クライアントの要望に応えられているものを指します。
・スケジュールマネジメント D(納期)
時間をうまく管理できれば、プロジェクトの生産性アップにつながります。
2017年に第6版が出てきたタイミングで名称が「タイムマネジメント」から「スケジュールマネジメント」へ変更しました。
・スコープマネジメント
プロジェクトの範囲(スコープ)を定めます。
プロジェクトが成功を収めるか・失敗に終わるかを左右する最も重要な項目と言えます。
・資源マネジメント
プロジェクトに参加しているメンバーなどの人材(人材資源)だけでなく物的資源を管理します。
2017年に第6版が出てきたタイミングで名称が「人材資源マネジメント」から「資源マネジメント」へ変更しました。
・コミュニケーションマネジメント
メンバー間はもちろんのこと、利害関係者(ステークホルダー)とも上手にやり取りします。
・リスクマネジメント
プロジェクト実行の中で起こり得るトラブルや危険を予測して、対処法を考えます。
・調達マネジメント
委託先や仕入れ先などの業者を管理してプロジェクトの遅れを未然に防ぎます。
・ステークホルダーマネジメント
利害関係者(ステークホルダー)に必要な情報を管理・伝達します。
もともとコミュニケーションマネジメントの一部でしたが、2012年にPMBOKガイドが第5版に改訂されるタイミングで独立しました。
3つのパート
3つのパートは「何を基にしてどんなツールでどうやって、成果物を作るか」を表します。
- 入力(Inputs)
- ツールと実践技法(Tools&Techniques)
- 出力(Outputs)
「設計書を基に、手段を使って様々なアプローチで成果物を作る」イメージです。
料理やプログラミングが良い例だと言えます。
こうした「5つのプロセス」「10の知識エリア」「3つのパート」の3つからなる、5×10×3の立方体の構造はPMBOK第6版までは掲載されていましたが、第7版から無くなりました。
プロジェクト管理される対象とプロジェクト管理の方法が多様化したためです。
今では最後に紹介した「3つのパート」が姿を消し、「5つのプロセス」「10の知識エリア」からなる5×10の平面になりました。
PMBOKが抱える3つの問題点
ここまでPMBOKの良い面にばかり目を向けていましたが、一方でいくつか問題点もあります。
挙げられるのは以下の3点です。
具体的な方法が書かれていない
PMBOKは実際にプロジェクトを実行するときに適していません。
なぜなら、考え方や心構えについての記載が多く、実践的な手段とは言えないためです。
現場で使いたい場合は別のプロジェクト管理ツールを通じて、メンバー同士で情報共有したりデータ保存したりしましょう。
小規模プロジェクトに向いていない
プロジェクト全体を大局的に捉えられるというPMBOKの利点が発揮できないため、小規模プロジェクトには向いていません。
大規模なプロジェクトには適しています。
他のプロジェクトと同時進行できない
PMBOKは進行中の1つのプロジェクトに焦点を当てているため、複数のプロジェクトを平行して管理することに向いていません。
プロジェクトマネジメントの国際資格PMP
PMBOKとはどういったものかが分かったところで、続いてプロジェクトマネジメントの国際資格であるPMPについて見ていきましょう。
PMPとは?
PMPとは「PMIが認定しているプロジェクトマネジメントの国際資格」です。
Project Management Professionalの略で頭文字を取っています。
PMPを取得すれば
- プロジェクトマネジメントに対する理解をより一層深められます。
- プロジェクトマネジメントの実力を客観的に証明できます。
興味のある人は受験してみてはいかがでしょうか。
なお、試験の内容は主にPMBOKに基づいています。
PMPの受験資格
PMPを受験するには、一定の要件を満たすことが求められます。
PMP取得に向けて懸命に勉強を進めていたとしても、受験資格がなければせっかくの努力が水の泡です。
学習を始める前に1度、自分に受験資格があるのか確かめましょう。
受験の条件は大きく2つあります。下記の通りです。
- プロジェクトマネジメントの指揮・監督した経験がある
大卒の場合は、プロジェクトマネジメントの実務経験が36か月間以上。
高卒の場合は、プロジェクトマネジメントの実務経験が60か月間以上。
- プロジェクトマネジメント研修を受講している(35時間)
なお、PMIが指定する機関で研修が受けられるため、受験を希望していて二つ目の条件を満たしていない人はプロジェクトマネジメント研修を受けましょう。
PMPの難易度
PMP試験の合格率は約8割と言われています。
割合だけ見れば誰でも合格できそうに見えますが、実際には司法試験のように同じ受験生が複数回にわたって受験していることが多く、難易度は高いと言えます。
PMPに合格するためには、プロジェクトマネジメントに関する専門的な知識と現場や研修における経験が必要です。
PMPの費用
受験の費用はPMI会員と非会員で異なります。
- PMI会員 405ドル 再受験の場合は275ドル
- PMI非会員 555ドル 再受験の場合は375ドル
日本円に換算すると、約45000~62000円と高額な価格設定になっています。
試験の詳細を知りたい人はPMIが公式に発表している情報を収集しましょう。
まとめ:PMBOKをプロジェクトマネジメントに活用してみましょう
今回はPMBOKの定義や良い面・悪い面言及したうえで、受験を検討している方向けにプロジェクトマネジメントの国際資格PMPについても解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
PMBOKについて調べると、必ずと言ってよいほどプロジェクトマネジメントもセットで出てきますが、その理由は「プロジェクトマネジメントを進めるときにPMBOKが役立つから」です。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの周辺知識がよくまとめられているため、活用することによって思考が整理されます。
PMBOKでインプットした知識をPMPという形でアウトプットすれば、プロジェクトマネジメントに対する理解がより深まるのではないでしょうか。
PMP試験は受験資格が厳しい上に受験費用も高額なため、敷居の高い資格ではありますが、
プロジェクトマネジメントに関する専門的な知識と実務での豊富な経験があれば、一人前のプロジェクトマネージャーとして活躍できる日もそう遠くないです。
プロジェクトマネジメントに関する知識を蓄えることによって、ビジネスの場で自分の市場価値を高めていきたい人は、まず知識集としてPMBOKを手に取ってみましょう。
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