プロジェクト運営のなかで発生する諸々の問題に対処しようと、解決策の提案に頭を悩ませているプロジェクトマネージャーの方も多いのではないでしょうか。

解決策を考案し、誰もが納得するアクションプランを提示するためには、理論的な問題解決手法への理解が必要です。

そのために必要となるのが移行ツリーです。

移行ツリーとは、最終目標や中間目標における障害の解決方法を考案するためのフレームワークです。

本記事では、移行ツリー作成方法を具体的にご紹介します。

移行ツリーの作成に困っているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひ最後までご覧ください。

TOC思考プロセスにおける移行ツリー(TRT)とは?

TOCとは、工程におけるボトルネック(制約)を解消し、スムーズな進捗ができるよう改善をはかる手法です。

ボトルネックを特定・改善するために用いられているのが、思考プロセスというフレームワークです。

思考プロセスの問題解決をはかるためには、次の3つの自問自答を行い、問題抽出や課題特定、解決策を立案します。

  • 何を変えるのか?
  • 何に変えるのか?
  • どうやって変えるのか?

上記のうち、「どうやって変えるのか」の段階で活用するのが移行ツリーです。

移行ツリーは、目標を達成する際に発生する障害の解決策を考えるためのロジックツリーです。

移行ツリーを作成すると、事前にプロジェクトの障害に対処することができ、円滑なプロジェクト運営につながります。

移行ツリーの作成方法

ここでは、移行ツリーの作成方法を以下の順に説明します。

  1. 前提条件ツリーの作成過程を進める
  2. 障害及び克服する行動を明確にする
  3. ステップ1からステップ2を繰り返す

ステップ1:前提条件ツリーの作成過程を進める

移行ツリーは、思考プロセスの4つ目の段階である前提条件ツリーをもとに作図を進めます。

前提条件ツリーでは、最終目標や中間目標の設定に加え、目標の障害となる要素を抽出します。

具体的には次のような手順があります。

  1. 目的を明確にする
  2. 目的を達成する際の障害を洗い出す
  3. 障害を克服するために必要な中間目標を定める

前提条件ツリーの作成を終えているなら、不備がないかチェックすると良いでしょう。

前提条件ツリーの作成方法については、以下記事をご覧ください。

関連記事:前提条件ツリーの作成方法【TOC思考プロセス】

ステップ2:障害及び克服する行動を明確にする

中間目的の達成を阻む障害に対し、この障害を乗り越えるための行動や計画を決めます。

「誰が、いつ、どこで、何を、どのように」まで分解し、より詳細な解決策を決めましょう。

例えば、「自社サービスの機能性や操作性に対する評判が悪い」という障害に対し、「社内のAチームが今年中に、シェア1位の競合サービスと同等品質にまで引き上げる」というような解決策を提示します。

解決策を考える場合はブレインストーミング法を活用することで、多くの意見が得られるでしょう。

ステップ3:ステップ1からステップ2を繰り返す

障害の抽出と解決策の立案プロセスを繰り返し実行します。

繰り返すことで解決策の抽出漏れがなくなり、より精度の高い解決策が生まれます。

移行ツリーと前提条件ツリーを別々に作成する理由

 

移行ツリーと前提条件ツリーを別々に作成する理由は、2つのツリーに分けて作成したほうが効率性が高まるからです。

障害を抽出する際は抽出する作業に集中し(前提条件ツリー)、その解決策を考える際は考案作業のみに取り組んだほうが効率的です。

例えば、障害を抽出する際にメンバーを集約して取り組むことで、抜け漏れを減らせます。

また、全員が1つの方向に向かって話し合えるため、時間短縮にもつながるでしょう。

仮に両方の作業を同時に行ってしまうと、現場が混乱したり、決定事項を忘れてしまったりといったトラブルが生じがちです。

前提条件ツリー作成時には障害を徹底的に挙げ、移行ツリー作成時には解決策を徹底的に話し合いましょう。

移行ツリーを作成する際のポイント

移行ツリーは「MECE」を意識しながら作成することをおすすめします。

「MECE」とは、以下の頭文字をとったものです。

  • Mutually(互いに)
  • Exclusive(重複しない)
  • Collectively(全体的に)
  • Exhaustive(漏れがない)

例えば、自社商品のターゲットを「大人向け」「子供向け」「男性向け」「女性向け」とします。

すべての顧客をターゲットにしているため漏れはありませんが、大人と子供には男性も女性も含まれるので重複しています。

上記のような重複、あるいは漏れがないかを徹底的に検証するのがMECEの考え方です。

MECEを活用する際は、解決策を実行した場合の予測を立てて、それを立証するために必要な信頼できるデータを集めましょう。

以上を意識して解決策を実行すれば、プロジェクトの不測事態を最小限に抑えられます。

【TOC思考プロセスまとめ】各ツリーの活用方法

TOC思考プロセスには、移行ツリー以外に次のようなフレームワークが存在します。

  • 現状構造ツリー
  • 対立解消図
  • 未来構造ツリー
  • 前提条件ツリー

移行ツリーは、5つのフレームワークのうち最終工程にあたります。

さらに複数のフレームワークを活用することで、よりスムーズな問題解決が可能になるため、それぞれの基礎知識を押さえておくと良いでしょう。

現状構造ツリー

現状構造ツリーは、「何を変えるのか」を明らかにするツリーです。

好ましくない結果とその原因に着目します。

例えば、「利益が減少している」という好ましくない結果に対し、「原料のコスト増加」という原因を紐づけてツリー構造にします。

結果として、進むべき方向を誰もが認識することができ、メンバー間の方向のベクトルを合わせられます。

詳しくは、以下現状構造ツリーについての記事をご覧ください。

関連記事:現状問題ツリーの作成方法|作成時のポイントとおすすめツールも紹介

対立解消図

対立解消図は、「何に変えるのか」に答えるためのツリーです。

例えば、あるサプライチェーンの責任者が「店舗や集約拠点に在庫が多い」という問題に頭を抱えている状況の場合、以下の対立解消図が作成できます。

共通の目的に対して異なるニーズがあり、そのニーズを満たすための行動で対立している状況です。

対立関係を図で表すことにより、問題解決の背景にある仮定や思い込みを排除でき、中核問題の特定につながります。

両方のニーズを満たす解決策を考えることで、真の問題解決につながります。

詳しくは、以下対立解消図についての記事をご覧ください。

関連記事:社内の意見対立でお悩みの方必見!対立解消図でスッキリ問題解決!

未来構造ツリー

未来構造ツリーは、対立解消図と同じく「何に変えるのか」に答えるためのツリーです。

未来構造ツリーでは、現状構造ツリーや対立解消図で明らかとなった問題に対し、そのすべての問題にアプローチするのか、それとも限定的な処置を行うのかを決定します。

そのためには、まず解決策をもとに、好ましい結果をできる限り挙げていきます。

例えば、ある問題を解決するために、「正しい評価基準の設定」という解決策が見つかったとします。

さらに解決策を起点として、「スループットの向上が指標になる」「制約工程に合わせた投入を行える」といった好ましい結果をまとめます。

好ましい結果に優先順位を付けることで、本当に取り組むべき解決策とそうではない解決策が明確になるでしょう。

前提条件ツリー

前提条件ツリーは、「どうやって変えるのか?」に答えるためのツリーです。

目的の達成に向けてどんな障害があり、それをどう克服していくかを明確にします。

例えば、「前年対比の売上高を30%向上」という目標に対し、「リーチ数が少ない」や「顧客単価が低い」などの障害を挙げ、図で結びつけます。

障害を徹底的に洗い出すことで、克服に向けた施策を考えるための土台を構築できるでしょう。

詳しくは、前提条件ツリーについての記事をご覧ください。

関連記事:前提条件ツリーの作成方法【TOC思考プロセス】

まとめ:移行ツリーまでの思考プロセスを整理しよう

今回の記事の内容を以下にまとめました。

  • 移行ツリーは、TOCの思考プロセスで用いられる
  • 移行ツリーは、思考プロセスの「どうやって変えるのか?」に答えるためのもの
  • 移行ツリーと前提条件ツリーは分けて作成することで効率よくプロジェクトが進む
  • 5つのツリーにはそれぞれの役割や活用方法がある

組織の活動にTOCを取り入れることで、コストや労力を抑えつつ生産効率の向上が期待できます。

しかし、正しい方法で導入や運用を進めないと無駄な工数だけが増え適切な効果が得られません。

TOCの導入の際には、移行ツリーを含む5つのツリーを適切に作成することが求められます。

また、TOCの効果をより発揮したいならTOCがベースのCCPMについても理解を深めることが大切です。

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