TOCの導入により、開発や設計を劇的に改善したケースがあるのをご存知でしょうか?

「企業改革を進めていても、定着せず低迷が長引いている。」とお悩みの管理者に、知って頂きたいのがTOCです。

TOCについて学び、導入することによって、イノベーション創出の機会をつくることができます。

そこで、この記事ではTOCの概要や制約条件について解説します。

また、導入事例も紹介するため、TOCの導入を検討している方は参考にしてください。

既存のリソースでイノベーションを起こせるTOCとは

TOCとはゴールドラット博士が1984年に提唱した、組織全体の業務改善や向上が期待できる、マネジメント手法です。

トヨタ生産方式の全体最適の考え方を、TOCでは幅広く適用しています。

TOCとは「Theory of Constraints」から頭文字を引用したものであり、プロジェクトの工程の中でも制約「Constraints」に注力し、全体のパフォーマンスを改善する手法です。

制約とは組織やプロジェクトのパフォーマンスを決定づける、ある特定の要素のことを指します。

制約に徹底して働きかけ改善することが、結果的に全体のパフォーマンスを向上させると考えるのがTOCです。

今までの業務改善や組織改革を実施したにも関わらず低迷から抜け出せない企業が、TOC導入で劇的な改善を実現した例が多くあります。

業務改善しパフォーマンスが向上することにより、全体リードタイムが短縮し、余剰能力を企業のイノベーションに充てることが可能です。

イノベーションを起こす前に理解すべき3種類の制約条件

改善すべき制約は、主に3種類に分けることができます。

自社が抱える問題がどの制約に当てはまるのか、理解することで改善のスピードは向上するでしょう。

3種類の制約について、それぞれ解説していきます。

物理制約

物理的制約とは設備の能力や人員不足など、物理的によって組織のパフォーマンスやリリースの結果に影響が出てしまっている状況です。

在庫不足や欠品も、物理的制約に含まれます。

物理的制約の特徴は、可視化しやすく認識も比較的容易です。

目に見えてわかる物理的な制限が、物理的制約です。

方針制約

方針的制約とは、組織の方針や規則、評価基準などの決まりごとがパフォーマンスを制限している状態をいいます。

つまり、本来「正しいもの」「守るべきもの」が制約となっているケースです。

方針的制約は、市場動向やその時の状況、環境の変化によって左右されます。

方針的制約は存在に気づきにくいため、対応が比較的、難しい制約です。

市場制約

市場制約とは、供給に対し需要が少ない状態をいいます。

つまり、物理的制約とは逆の状態です。

需要の少なさより、赤字製品の生産中止や、在庫の山を抱えてしまうのが市場制約です。

結果的に頻繁な値下げへと発展しまうこともあります。

イノベーションを実現するTOCの5段階集中プロセス

制約を特定した後は、制約に対し徹底的に働きかけ改善します。

そこでTOCの制約を改善するフレームワークの1つ、「5段階集中プロセス」を見ていきましょう。

5段階集中プロセスを継続的に繰り返すことで、新たな制約を見つけつづけ、組織の継続的な成長へとつなげることが可能です。

ステップ① 制約を見つける

まずは工程のパフォーマンスを決定づけている、制約を特定します。

つまり、工程を一番遅くしている、もしくは原因となっている特定の要素を見つけ出します。

制約以外のパフォーマンスを改善しても、全体のパフォーマンス向上にはつながりません。

あくまでも工程の中から、全体のパフォーマンスを決定づけている工程を発見しましょう。

ステップ② 制約を徹底活用する方針を決める

制約を特定した後、制約のパフォーマンスを最大限に引き出すための方針を決定し、実行します。

ステップ③ 制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる

ステップ②で決めた方針を実行するために、制約以外の部分でルールを変えたりする必要が出てきます。
制約を徹底活用するために、制約以外の部分は全て、制約に合わせた動きに変えていきます。

ステップ④ 制約を強化する

制約の性能を強化します。(この段階で初めてコストをかけます)

ステップ⑤ 制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る

制約が改善した後は、また新しい制約が見つかります。

妥協に注意しつつステップ①にもどり、5段階集中プロセスを何度も実行していきます。

5段階集中プロセスの実行を繰り返すことで、パフォーマンスが継続的に向上し、組織の将来的な成長へとつながっていくのです。

イノベーションを実現するTOCの思考プロセス

思考プロセスとは、どのような状況であっても、有効である制約を見つけられる思考方法をいいます。

現場では実際に色々な要素が絡まっており、制約が発見しづらいケースがほとんどです。

そこでTOCの思考プロセスを理解し、実行することで、本質的な問題を特定することができます。

思考プロセスについて具体的に、解説していきましょう。

思考プロセスとは

風邪をひいてしまった人に対するアプローチを例にして、思考プロセスを解説していきます。

風邪をひいてしまった場合、一般的なアプローチは何でしょうか?

  • 喉が痛い場合は、トローチやのど飴を舐める
  • 咳が出る場合は、咳止め薬を飲む
  • 熱がある場合は、冷却シートなどをおでこに貼る
  • 悪寒がある場合は、暖かくして休む

上記のアプローチは、ポピュラーだと思います。

つまり、「ひとつひとつの症状に対処する」が一般的な対応です。

しかしTOCの思考プロセスでは、より本質的な問題にフォーカスします。

まずは病院へ行き原因となるウイルスを特定します。

風邪の原因がインフルエンザであった場合、抗インフルエンザのワクチンを接種します。

ワクチン接種の対応をすることで、根本的な原因に対して治療をすることが可能です。

以上のような考え方が、TOCにおける思考プロセスです。

組織にも同じことが当てはまり、問題は山積みであっても原因は少数であることが多く、同様の解決方法を適用できます。

イノベーションを実現するTOCコンサルティング

弊社では自社の業務改善を目的とし、2004年にTOCを導入しました。

TOC導入により、業務改善の効果と有効性を実感します。

TOC導入の経験をもとに、より多くの方を支援したいと考え「TOCコンサルティング事業部隊」を発足しました。

今では業務改善、マネジメント変革、経営改善のプロフェッショナルとしてコンサルティングをおこなっています。

プロジェクト開発や管理、小売業や製造業など、あらゆる分野が対象です。

TOCコンサルティングの流れを説明していきます。

STEP1 何を変えるか?何に変えるのか?

まずはゴールと現状のギャップを具体的にヒアリングして、課題を抽出します。

その後は課題の原因である根本的な問題を特定して、根本的な問題に対する解決の方向性を決定します。

次のステップは解決の方向性の実行にあたって、成果をはかるため具体的なKPIを作成です。

問題認識やKPIを経営と現場が同じ目線で見られるよう、ご支援します。

以上の過程は、導入から1ヶ月を目安におこないます。

STEP2 どのように変えるか?

根本的な問題を解決するための、実務ソリューションの合意形成を図ります。

その後は組織に合わせた変革ロードマップを作成して、必要なチーム体制や最適な進め方についても助言します。

以上の過程は、1ヶ月+α程度の期間で実施することが一般的です。

STEP3 いかに変えるか?

組織が継続的に成果を出し続けるための、「仕組みづくり」を支援します。

例えばマネジメントサイクルの新規構築や、ガイドラインの作成です。

専用システムの提供と、使用方法レクチャーも実施します。

多岐にわたって支援し、スムーズな組織内の連携と、管理のしやすい環境づくりをお手伝いします。

目安として、TOC導入から6ヶ月以降のステップです。

再度ステップ1へ 永続的な成果の現実へ

変革の定着してきたところで、終わりではありません。

再び新しい制約の発見から活動を継続します。

永続的な組織の発展に向け、さらに進んでいくのです。

弊社のコンサルティングをぜひ、事業の活性化にお役立てください。

TOCでイノベーションを起こした事例|シャープ株式会社様

次にTOC導入で、イノベーションの実現に成功した事例を紹介します。

シャープ株式会社様はTOCを導入し、30%の開発リードタイムの短縮に成功しました。

そして、30%リードタイムの短縮は、わずか6ヶ月間で達成したのです。

対象事業部はIoT通信事業本部パーソナル通信事業部(現:通信事業本部)で、スマートフォン開発におけるプロジェクト管理の改革を行いました。

TOC導入前の状況

TOC導入前は、将来に向けた活動、つまり将来に向けた商品開発などに時間をさくことができずにいたそうです。

目の前の業務におわれ、年々激しさを増す市場動向に四苦八苦していました。

売上高や利益は低迷し、企業改革も出口が見えないままだったそうです。

改革のポイント

事業部門において、さまざまな問題を発生させている根本的な問題を特定しました。

そして「戦略と戦術」を見える化したのです。

また、プロジェクト管理をハードディスク部門に絞り変革しました。

制約の特定

2つの制約を特定し、改善に向け徹底的に働きかけました。

制約と対策は、以下の通りです。

1年後の次機種先行検討時間が不足 TOCのプロジェクト管理法
CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」を導入。
階層間の戦略・戦術の繋がりが不明瞭 「S&Tツリー(戦略と戦術のツリー)」を作成し
戦略と戦術を見える化。

マネジメント改革の成果

根本的な問題の原因を特定し、制約に働きかけたことで開発期間の30%短縮に成功しました。

リードタイムの短縮により時間ができたことで、将来に向けた先行検討や技術検討にリソースを割くことができ、魅力的な商品の開発に成功することができました。

まとめ:TOCを導入しイノベーションを起こせる余力をつくろう

TOC導入によりマネジメント改革を実現し、イノベーションにつなげることが可能です。

長引く低迷に悩んでいる方は、ぜひTOCの導入を検討してみてください。

また、TOCのさらに詳しい内容を、以下資料にて公開しております。

無料資料ダウンロードへのリンク

こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができますので、是非ご活用ください。