様々な事象が複雑に絡み合うビジネスシーンにおいて、システム思考というアプローチが注目を集めています。

すでに欧米では広く取り入れられ、企業や組織の中で実践と研究が重ねられてきました。

システム思考を取り入れることで、ある問題が発生した時に、その要素を広い視点で分析できるので早期解決につなげられます。

また、リスクに対して事前に手を打つこともできるので、より良い意思決定や政策を打ち出していけるのです。

この記事では、そんなシステム思考について解説していきます。

システム思考とは

システム思考とは、物事の全体像を「システム」として捉えて、その問題が発生している要素を多角的な視点で分析し、解決に向かうアプローチのことです。

目に見えている問題だけに捉われるのではなく、問題が発生するのには多種多様な要因が複雑に絡み合っていると考え、その中で最も深刻な影響を与えている要因を見極めていきます。

システム思考の歴史は古く、欧米や外資系の日本企業で取り入れられているシステム思考は、1956年にジェイ・フォレスター氏が発案した「システムダイナミクス」がベースになっています。

その後、1990年にシステム科学者のピーター・センゲ氏が著書『最強組織の法則』で提唱した方法論が、教育や企業のマネジメントで活用されるようになりました。

システム思考のメリット

システム思考を身に付けるメリットは、発生した問題を構成している複雑に絡み合う要素を大局的・俯瞰的に捉えられることです。

物事の全体像を掴もうと思考していくので、これまでとは全然違う解決策を思いついたり、異なるアプローチでいくつもの代案を出せたりと、新しい視点が持てます。

システム思考を身に付ける具体的なメリットとして、下記が挙げられます。

  • 複雑なシステムを把握できる
  • コミュニケーションを促進できる

複雑なシステムを把握できる

システム思考を活用することで、ある問題が起きたとしても、複数の要素がどのように作用しあっているかを見極めることができます。

物事のシステムは関わる要素がかなり複雑に絡み合っていて、自分の知識や直感だけでは解決できないことがほとんどです。

ある1つの面を見ているだけだと解決しない問題でも、多角的に見ることで新しい視点が生まれ、複数要素のつながりや問題への影響度が分かるようになります。

コミュニケーションを促進できる

ビジネスシーンで複雑化している人とのコミュニケーションも、システム思考を取り入れて促進できます。

人によって多様な価値観や考え方があるのはもちろんですが、ビジネスにおける立場、役職、知識レベル、業務経験など、コミュニケーションを図る上で考えなければならないことは多くあります。

それらをシステム思考で俯瞰して考えることで、共通認識や認識のずれを少なくして、コミュニケーションを促進できるのです。

システム思考で使用するツール5つ

システム思考では、システムの複雑性を見える化して様々な要素がどのように作用しあっているかを明瞭化するために、関係者間でツールを用いることがあります。

ツールを使うことで、自分と他者の共通認識をすり合わせて、関係者全員でシステムを多角的に分析できます。

この項目では、システム思考で使用するツールを5つご紹介します。

  • ループ図
  • システム原型
  • 時系列変化パターングラフ
  • ストック&フロー図
  • システム・ダイナミクス・モデリング

ループ図

ループ図は”因果ループ図”とも呼ばれ、物事の因果関係を矢印によって見える化して、それぞれプラスに働くのかマイナスに働くのかを表現するものです。

システムを構成する要素が変化した場合、それが全体にどのような影響を及ぼすのかを視覚化することで、どの要素をどう変化させれば良いかが具体的に分かるようになります。

またループ図には、プラス循環で強化や拡大をしていく自己強化型ループと、マイナス循環でシステム自体が収束に向かうバランス型ループがあります。

システム原型

システム原型は、様々な分野で共通して見られる問題の基本構造のことです。

例えば、「大型連休に車で遊びに行ったら、連休最終日にものすごい渋滞に巻き込まれた」と言ったようなパターンです。

こうしたよく見られる問題の基本構造をシステム原型と呼ぶのですが、これを把握しておくことで事前に解決策を考えておいたり、そもそも問題発生を未然に防げたりできます。

また、一見複雑そうなシステムでも、分解してみるとこのシステム原型の組み合わせであることが多いので、色んなパターンのシステム原型を知っておくことで、多くの問題をカバーできます。

時系列変化パターングラフ

時系列変化パターングラフは、システムを構成する要素が時間とともにどのように変化していくかを描いたグラフのことです。

一般的には横軸に時間経過を取り、過去から始まり、現在から未来に向かってどのように要素が変化していくかのシミュレーションをグラフにします。

システムを構成する要素のうち、特に重要なものについては、「理想的なパターン」「現実的なパターン」「望ましくないパターン」の3つをグラフにするといったものです。

また、「何か対策を打ったパターン」「何もせずにこのまま放置したパターン」などもグラフにして、そこからある程度のシナリオを練り上げていく方法もあります。

ストック&フロー図

システムを構成する要素のうち、蓄積されていくものを「ストック」、ストックを蓄積させるものを「フロー」と言います。

分かりやすく例えると、浴槽に水を溜める場合に浴槽に溜まっていく水がストック、蛇口から注がれる水がフローです。

ストックとフローはしばしば同一視されたり、強力に作用しあうことが多いので、適切な境界線をしっかりと設定することでどの程度相互作用しているかを把握できるようになります。

システム・ダイナミクス・モデリング

システム・ダイナミクス・モデリングは人の性格や消費行動、商品性能、イベントの内容などの詳細情報をすべて無視した、非常に抽象度の高いモデリング方法です。

これらの詳細情報は、例えば従業員の能力やブランドイメージ、ブランドの認知度、広告効果など、一定期間が経過してからでないと測定できないものが多くあります。

詳細情報を無視してモデリングをしていくので、長期的な戦略モデルに多く活用されているツールです。

システム思考が中核にあるフレームワークTOCとは

TOCとはTheory Of Constraintsのことで、「制約理論」または「制約条件の理論」と言われています。

TOCを分かりやすく説明すると、「どんなシステムでも、ごく一部の要素によってパフォーマンスが制限されている」というものです。

つまり、パフォーマンスを制限している要因はごく一部のものだけなので、そこにフォーカスして問題解決をすれば小さな努力で短時間のうちに最大の効果が得られる、とも言い替えられます。

TOCは、これまで解説してきたシステム思考がベースにあるので、何か問題が発生した場合でも多角的に分析した後、根本原因をすぐに見つけ出せます。

その後、その根本原因にフォーカスして解決することで、パフォーマンスを低下させている要因を素早く取り除けるのです。

まとめ:システム思考を取り入れて複雑な問題を解決しよう

システム思考を取り入れれば、問題の早期発見・解決に繋がるだけでなくすべての物事を多角的・俯瞰的に捉えることができます。

私達は何か問題が発生すると、つい闇雲に取り組んで時間と労力を浪費したり、ある一つの側面しか見れずに視野が狭くなりがちです。

そんな時にシステム思考を使うことで、パフォーマンスを向上させることができ、さらに複雑化するビジネスシーンのコミュニケーション促進にもつながっていきます。

多様な価値観が生まれ、デジタル化によってさらに複雑になるビジネスの現場において、システム思考は必須のスキルとなっていくでしょう。

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