「リスキリングとは一体どういったものなのだろう」

「導入するメリットは?」

「進め方が分からない」

このような悩みをお持ちでないですか?

本記事では、DX時代の到来とともに注目を集めている「リスキリング」についてご紹介いたします。

この記事を読めば、リスキリングを導入するメリットや実際の進め方も分かるようになります。

従業員を再教育することでDXに対応できる人材を育成したいとお考えの人は、さっそくリスキリングを導入してみましょう。

リスキリングとは?

リスキリング(Reskilling)とは「新たな業務への対応に必要な知識やスキルを従業員に身に付けさせること」です。

2016年頃に欧米で初めて取り入れられました。

近年は日本でも企業のDX戦略などに使われており、政府もリスキリングを推進しています。

実際に経済産業省はリスキリングを以下のように定義しています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

リスキリングが注目を集めている背景

では一体なぜリスキリングは色々な場で導入されるようになったのでしょうか?

リスキリングが注目を集めている背景には、次の3つの出来事が関係しています。

  • DX推進の加速
  • リスキリングに関する宣言
  • 新型コロナウイルスの感染拡大

以下では、さらに詳しく見ていきます。

DX推進の加速

リスキリングが注目を集めている要因の一つに「DX推進の加速」が挙げられます。

そもそもDX推進が加速しているのは、第4次産業革命に突入しているためです。

世界がAIやIoT、ビッグデータを活用した技術革新を遂げたことで、ITやDXに精通したデジタル人材の需要が増えました。

こうした時代の変化に伴い、企業でもDXに対応できる人材を育成する必要が出てきたのです。

リスキリングに関する宣言

リスキリングが注目を集めている要因の一つに「リスキリングに関する宣言」が挙げられます。

2020年1月には世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言されました。

こうした「リスキリング革命」と呼ばれる宣言が大々的にされたことで、世界中の人々がDX人材の育成に欠かせないリスキリングの重要性に気付いたのです。

新型コロナウイルスの感染拡大

リスキリングが注目を集めている要因の一つに「新型コロナウイルスの感染拡大」が挙げられます。

2020年頃から新型コロナウイルスが世界的に流行したことで、人々の働き方も変わりました。

リモートワークが一般的になり、対面によるミーティングの機会も以前に比べて減りました。

こうした新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした仕事のスタイルの変化に伴い、新たな業務も増えるとともに、デジタルに強い人材を育成する必要が出てきたのです。

リカレント・アンラーニング・OJTとの違い

リスキリングはリカレント・アンラーニング・OJTと意味が似ているため間違われることもありますが、微妙に違います。

そこで以下では、リスキリングと3つの用語の違いをそれぞれご紹介いたします。

リスキリングとリカレントの違い

リカレントとは仕事からいったん離れ、大学などの学校に入って「学び直し」することです。

リスキリングは企業が社員に習得させるイメージが強いのに対し、リカレントには各自で自ら習得しようとするニュアンスが感じられます。

このように、リスキリングとリカレントは「新たなスキルを習得する」という点において共通していますが、「仕事から離れているか/いないか」や、学ぶ際の姿勢が「主体的か受動的か」という違いがあると言えるでしょう。

リスキリングとアンラーニングの違い

アンラーニングとは従来のやり方を捨てて、新たなスタイルを取り込むことです。

別名「学習棄却」と呼ばれます。

時代の移り変わりが速い現代において、ずっと同じ手法を採用し続けるのはリスクが高く、

業務が新しくなっても対応できません。

そのため、アンラーニングでは「今までのやり方を捨てる」という選択をしたのです。

このように、リスキリングとアンラーニングは「新たな業務への対応」という点において共通していますが、「従来のやり方を捨てる/捨てない」という違いがあると言えます。

リスキリングとOJTの違い

OJTとはOn-the-job Trainingの略で、職場内訓練を意味します。

似たような意味を持つリスキリングとOJTはどちらも「社員にスキルを習得してもらう」という点では同じですが「すでに会社にある業務なのかどうか」という点で異なります。

現時点で会社にない新たな業務に対応できるように、スキルを習得させることをリスキリングと言います。

一方、入社したばかりの社員が既に会社にある業務ができるようになるように、上司や先輩の社員がスキルを習得させることをOJTと言います。

このように、リスキリングには似て非なる用語があるため、誤って意味を認識している人もいらっしゃるかと思います。

微妙に異なる意味を持つ3つの用語をしっかり区別しておきましょう。

リスキリングを導入する5つのメリット

リスキリングを導入することで、次の5つのメリットが実感できるでしょう。

  • 業務が効率化する
  • 新たなアイディアが生まれやすくなる
  • 安定した人材を確保できる
  • 人材の育成にかかる教育コストを削減できる
  • 企業の文化を継承できる

以下では、さらに詳しく見ていきます。

業務が効率化する

リスキリングを導入すると、社内に新たな技術が採用されるため、業務が自動化して仕事の進み具合がスピーディになり、データの管理や分析のレベルが格段とアップするでしょう。

また、新たなプロジェクトに時間を使えるようになったり、残業代が削減できたりもします。

このように、リスキリングを導入すれば、業務が効率化して従来よりもスムーズに仕事が進められるようになるのです。

新たなアイディアが生まれやすくなる

リスキリングを導入することで、新たなアイディアが生まれやすくなります。

斬新で独創的な発想こそが、企業の業績を支えるビジネスチャンスを創出するのです。

逆に、時代の移り変わりが速い現代で、古い価値観に縛られたままの会社は資本主義の競争に負けて淘汰されてしまうでしょう。

安定した人材を確保できる

リスキリングを導入することによって、企業は安定した人材を確保できます。

一部ではDXやデジタルに強い人材が今後足りなくなると予測されていますが、既存の社員を再教育してDX人材に育成すれば、人材の不足に悩む必要もありません。

人材の育成にかかる教育コストを削減できる

リスキリングを導入すれば、人材の育成にかかる教育コストを削減できます。

新たに人材を雇用すると仕事を最初から教えなければいけませんが、もともと会社の一員として働いてきた社員が相手であれば、根本から教育する必要がありません。

そのため、新しい人材を一から育成するよりも既存の社員を再教育した方が教育コストを削減できるのです。

企業の文化を継承できる

リスキリングを導入すれば、従業員の入れ替わりがほとんどなくなるため、企業の文化を継承できます。

たとえば、何か新しい事業を始めるにあたって人材を確保する必要が出てきた場合には、手っ取り早く新たな人材を雇用するのではなく、昔から勤めている社員を再教育しましょう。

なぜなら、社内に自社の文化を熟知した社員が数多くいることで、創業時から代々受け継がれてきた伝統を次世代の社員へ継承できるからです。

逆に、既存の社員を再教育せずに新たな人材を大量に採用してしまうと、会社について詳しく知らない社員が増えて、企業の文化や伝統が重んじられなくなる恐れがあります。

リスキリングの進め方【4つの手順】

リスキリングの進める時には次の4つの手順を踏む必要があります。

  1. どんなスキルを習得するか決める
  2. 教育プログラムを選ぶ
  3. 従業員に取り組んでもらう
  4. 身に付けた知識やスキルを実践の場で活かす

以下では、さらに詳しく見ていきます。

1.どんなスキルを習得するか決める

リスキリングの進める時には、まず「どんなスキルを習得するか」決めましょう。

従業員に身に付けてもらうスキルを決定する際には、業績や事業の内容といった会社のデータを参考にすることで、現時点で「自社にどんな人材が足りないのか」浮かび上がってくるためです。

2.教育プログラムを選ぶ

習得すべきスキルを決めたら、次は教育プログラムを選ぶ段階に入ります。

その際、リスキリングの効果を最大限に実感するためにも、自社の従業員に合ったプログラムを選ぶようにしましょう。

また、プログラムの順序にも注意する必要があります。

なぜなら、プログラムの順番が整っていないと取り組む社員が混乱するからです。

3.従業員に取り組んでもらう

教育プログラムを選んだら、従業員に取り組んでもらいましょう。

その際、会社の都合でリスキリングしてもらっているので、学習の時間は就業の時間内に設けると良いです。

4.身に付けた知識やスキルを実践の場で活かす

従業員が教育プログラムを取り組み終えたら、リスキリングを通じて身に付けた知識やスキルを実践の場で活かしてもらいましょう。

なぜなら、今まで学習してきた成果を業務内で発揮させなければ、せっかく習得したスキルが無駄になってしまうからです。

リスキリングを導入する際の2つの注意点

リスキリングを導入する際には次の2つの注意点があります。

  • リスキリングが社内で受け入れられるように計らう
  • リスキリングされる社員のケアを忘れない

以下では、さらに詳しく見ていきます。

リスキリングが社内で受け入れられるように計らう

リスキリングを導入する際には、リスキリングが社内で受け入れられるように計らう必要があります。

なぜなら、組織で仕事をしていると各自が色々な意見を持っていて、中には導入に反対する社員も一定数いるからです。

リスキリングの良さや導入するメリットを伝えて周りからの理解を得ましょう。

リスキリングされる社員のケアを忘れない

リスキリングを導入する際には、リスキリングされる社員のケアを忘れないようにしましょう。

成果に応じてインセンティブを与えたり、同じプログラムを他の社員と一緒に取り組ませたりするなどして、モチベーションを維持させましょう。

会社から少しの支えがあるだけで、リスキリングに取り組む社員にとっては励みになります。

リスキリングの導入事例5選

今回はリスキリングが導入された事例として次の5つをご紹介いたします。

  • 日立製作所
  • 富士通
  • AT&T
  • マイクロソフト
  • 横浜銀行

以下では、さらに詳しく見ていきます。

日立製作所

日立製作所でもリスキリングが導入されています。

2020年には全社員16万人ほどを対象にDXの基礎を教育しました。

また、グループ会社の日立アカデミーでは独自のプログラムが用意されています。

富士通

富士通でも社長が変わって新体制になってからリスキリングが導入されています。

実際に「ITカンパニーからDXカンパニーへ」という標語を掲げており、価値の創造や変革のために積極的な投資をしています。

AT&T

アメリカの通信業界の大手企業AT&Tは、リスキリングを他社に先駆けていち早く始めた会社だと言われています。

そんなAT&Tは数年に1度リスキリングの効果が出ているかを確かめる調査を実施しています。

2008年の調査では、リスキリング導入による効果をあまり実感できませんでした。

しかし、2013年に実施した社員10万人が対象のリスキリングを調査したところ、リスキリングした社員の昇進率アップと社内の退職率の低下を同時に達成していることが分かりました。

マイクロソフト

マイクロソフトでもリスキリングが導入されています。

2020年6月には新型コロナウイルスが原因で失業した社外の人材2500万人を対象に、無償でリスキリング支援することを発表しました。

横浜銀行

横浜銀行でもリスキリングが導入されています。

2022年度からは新人や若手、中堅の社員から管理職まで、すべての階層に向けたリスキリング研修を本格的に稼働させています。

行員のスキルを強化させて、組織の能力を底上げしようとしているのです。

このように、リスキリングは国内外を問わず、さらに近年は企業だけではなく銀行でも導入されています。

まとめ:DX時代が到来した今こそリスキリングを導入して社員を教育しましょう

今回はリスキリングについてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

リスキリング(Reskilling)とは「新たな業務への対応に必要な知識やスキルを従業員に身に付けさせること」です。

近年はDX推進の加速がリスキリングの注目度アップに拍車をかけているため、今後リスキリングという言葉を使う機会が多くなるでしょう。

そのため、リスキリングの意味がリカレントやアンラーニング、OJTといった、似て非なる用語とは微妙に異なることを理解しておかなければなりません。

また、リスキリングは導入することで「業務が効率化する」「新たなアイディアが生まれやすくなる」「安定した人材を確保できる」「人材の育成にかかる教育コストを削減できる」「企業の文化を継承できる」といったメリットを実感できます。

実際に進める時には、まず「どんなスキルを習得するか」決めましょう。

次に、教育プログラムを選んで従業員に取り組んでもらいます。

最後は、リスキリング導入の効果が出ているかを確かめるために、従業員には身に付けた知識やスキルを実践の場で発揮してもらいましょう。

また、導入する際には「社内で受け入れられるように計らう」「リスキリングされる社員のケアを忘れない」ように注意する必要があります。

そんなリスキリングは近年、日立製作所や富士通といった国内の企業やAT&Tやマイクロソフトといった海外の企業だけでなく、銀行でも導入されています。

従業員を再教育することでDXに対応できる人材を育成したいお考えの人は、組織にリスキリングを導入してみてはいかがでしょうか。

 

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