プロジェクトマネジメントに携わる方なら「カンバン方式」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
トヨタ自動車の生産管理から生まれたこの手法は、名前は非常に有名ではあるものの、実際の内容となるとあやふやという方もいるでしょう。
今回はそんな「カンバン方式」の基礎やメリットやデメリットについて解説していきます。
「カンバン方式」のマネジメント手法を基礎からおさらい
まずはカンバン方式の生まれた背景や具体的な内容など、カンバン方式の基礎から理解を深めましょう。
歴史あるプロジェクトマネジメント手法のため、時代遅れと言われてしまうこともあるカンバン方式ですが、現代にも役立つ知恵がたくさん詰まった手法です。
プロジェクトマネジメントの超有名手法「カンバン方式」とは
カンバン方式は、トヨタ自動車で1963年に導入された管理方式の名前です。
効率的な生産のため、後ろの工程に必要となる部品や商品の在庫情報を管理する「カンバン」と呼ばれるカードを用いたことが、名前の由来になっています。
このカンバンにしたがって生産を行うことで、過不足のない生産が可能になり、在庫管理の問題解消にも繋がります。
カンバンの採用後、徐々に改善を重ねながらトヨタ自動車では非常にスムーズな生産を実現しています。
ポイントは無駄を徹底して取り除くこと。
今では多くの生産現場や工場ラインで規範として浸透しています。
カンバン方式の導入で具体的に何が変わる?
カンバン方式導入の特徴は、大きく2つに分類されます。
タスクが可視化される
カンバンではそれぞれのタスクが一目で分かる状態になります。
各タスクの納期、担当者、内容を可視化し、カンバンに記載することで全体の流れややるべきことが明確になります。
それぞれの予定を把握できることで、工程間で配慮しあって作業を進めることも可能です。
カンバンで情報を共有できる
カンバンを使用することで、各タスクの進行状況を生産ライン上にいる全員が把握することが可能です。
どのタスクが未着手なのか、完了しているタスクはどれかが把握できることで、無駄のない作業が可能になります。
プロジェクト管理方法としてのカンバン方式
もともとは生産管理の手法として、製造業や工場で用いられていたカンバン方式。
現在では、一般企業のプロジェクトマネジメント手法やタスク管理のツールとしても用いられています。
カンバン方式をプロジェクト管理に用いる場合、個人のタスクをカンバンとして設定し、一つのボード上で管理していきます。
常に個人の状況をチーム全体で把握することができるため、お互いに進捗やトラブルの発生を把握しやすくなるのです。
プロジェクトマネジメントに用いることで、遅延の防止や計画の変更もスムーズに行えます。
カンバン方式によるマネジメントのメリット
ここからは、カンバン方式をプロジェクトマネジメントに活用するメリットとデメリットを紹介します。
まずは、メリットについて確認していきましょう。
タスクの無駄に気付くことができる
タスクを可視化することで、タスクの被りや抜けなど不備に気付きやすくなります。
誰がどんなタスクを行うかが明確になるため、同じ作業をしてしまうなどの無駄も生じません。
無駄なタスクを開始してしまう前に調整できる点は大きなメリットと言えます。
業務を適切に割り振れる
一人ひとりのタスクと内容が明確になることで、誰に負荷がかかりすぎていないかが一目で分かるようになります。
タスクの偏りはプロジェクト進行を妨げる大きな要因になります。
早い段階でその偏りに気付き、調整を行える点はカンバン方式の大きなメリットです。
コミュニケーションが活性化される
カンバン方式を導入することで、プロジェクトチーム内の相互理解が進むことは大きなメリットです。
ブラックボックスになりがちな他の工程の作業状況を理解できることで、情報共有がスムーズになります。
カンバン方式によって問題を未然に防ぐコミュニケーションのきっかけができ、プロジェクト全体を成功に導くことができます。
カンバン方式によるマネジメントのデメリット
多くのメリットがあるカンバン方式ですが、デメリットも存在しています。
ここでは、デメリットについても解説していきます。
タスクの重要度が把握しにくい
カンバン方式の大きなデメリットは、タスク一つひとつの詳細はわかるものの、全体の中での重要度はわかりにくいという点です。
遅延しているタスクがあったときに、そのタスクが遅れることが全体にどの程度大きな影響をもたらすかまでは可視化されません。
そのため、判断が遅れてしまい大きな遅延に繋がることもあります。
メンバーによっては不向き
カンバン方式は効率的ではあるものの、プロジェクトのメンバーにとっては成約やルールを課すものでもあります。
業態やメンバーの性格によっては、本来の能力を活かせず働きにくさの原因になってしまう可能性があります。
自然に他のメンバーのタスクを気にかけ、全員がストレスなく助け合える環境づくりが重要になります。
カンバン方式はTOC・CCPMと併用することで効果アップ!
ここまでカンバン方式のメリットとデメリットについてお伝えしてきました。
カンバン方式はプロジェクトマネジメントにおいて大きな効果があるものの、業種や企業規模にとっては導入しにくい部分があるのも事実です。
しかしカンバン方式はTOC・CCPMと併用するとより効果がアップします。
詳しくご紹介します。
企業規模を問わず導入できるTOC
TOC(Theory of Constraints)とは、日本語で「制約条件の理論」と呼ばれるマネジメント手法です。
イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラットによって提唱されました。
最大の特徴はパフォーマンスを妨げる「制約条件」に集中して改善を行う点にあります。
大きな目的は「現在から将来にわたって繁栄し続ける」ことです。
課題の根本原因となっている制約条件に絞って対策をとることで、少ないコストと時間で最大の改善効果を得ることが可能です。
また、導入によりどのような規模の組織でも、どのような業種でも、最小のコストと労力で短期間のうちに成果を上げることができる点も大きなメリットです。
TOCではプロジェクトをマネジメントするにあたって、「タスクボード」という手法を取り入れています。
カンバン方式と同様に、タスクを「実行待ち」「実行中」「完了」の3つの状態で、視覚的にボード管理する方法です。
プロジェクト管理に特化したマネジメント手法CCPM
また、TOCの中にはプロジェクトマネジメントに特化したCCPMという手法があります。
「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント」の頭文字をとった言葉で、プロジェクトの工程で最長の経路となる「クリティカルチェーン」に着目している点が特徴です。
この手法を導入することで、プロジェクトの遅延を防ぎ、トラブルや不測の事態が発生した場合も安定して納期を守ることが可能になります。
改善にあたっては、以下の4項目を行います。
- プロジェクト全体の進捗の把握
- 遅延の危険性の可視化
- タスク優先度の明確化
- 適切なリソース投入タイミングの設定
カンバン方式のデメリットとして取り上げました「タスクの重要度が把握しにくい」を解決するためにCCPMがあります。
カンバン方式はCCPMと併用することで、このデメリットを無くすことができます。
まとめ:自社に最適なプロジェクトマネジメントを導入し、業務を改善しよう!
今回はプロジェクトマネジメントの手法のひとつ、カンバン方式について解説してきました。
多くのメリットがある反面、環境によっては導入が難しいのがカンバン方式です。
TOCやCCPMによる業務改善であれば、業種や企業規模を問わず導入により大きな効果が得られます。
より詳しい内容は下記の無料資料よりご確認ください。