新たな目的を達成するため、あるいは、大きな課題を克服するために「組織革新」を目指す組織の中で、その活動を鈍化してしまう根強い阻害要因があります。
それは、次のような言葉でよく表現されています。
「○○部長や△△課長がちゃんとマネジメントしていない」
「□□チームリーダーやメンバーが指示を守らない」
「**さんがいつも反対して話が進まない」
上記の言葉を総括すると、「あの人が意図したように行動してくれない」というイメージです。まさに、“個人”を指差して「あの人がそういう行動をするから組織革新が上手く進まない」「あの人が障害となって組織革新が進まない」と言っているように感じられます。殆どの場合、このような「“個人”を指差す」思考に陥ってしまうと思考停止状態になり、組織革新はストップしてしまいます。
「“個人”を指差す」思考が前提では、何を考えても、何をやってもネガティブな結果にしかならない、結局変化を起こせないという“後ろ向きの思考”に陥ってしまい、いつまでたっても組織革新は進むことはありません。その疑心暗鬼がさらに活動を鈍化させてしまいます。
我々が組織革新をご支援する際、“個人”を指差して「あの人が意図したように行動してくれない」という言葉が出てきた場合は、「あの人がそのような行動を起こすのは、組織(システム)がそう行動させている」というように、“組織”を指差して“前向きの思考”に変えるようにしています。
つまり、「その人は組織の方針や評価指標などの仕組みに則って、それを達成するために良かれと思って行動している」と捉えるのです。
誰かに迷惑をかけたいわけでもなく、組織の活動を鈍化させようとしているわけでもなく、現在の組織方針や評価指標を忠実に実現するために、全力を注いでいるだけなのです。
その「“組織”を指差す前向きの思考」により、「組織の仕組みを変えることで人の行動が変わる、変えることができる」と考えることができ、組織革新に向けた活動が加速できます。
日々の活動の中で「“個人”を指差す後ろ向きの思考」が生まれた時は、是非、「“組織”を指差す前向きの思考」を思い出していただければと思います。
TOC(制約条件の理論)では、それを支える4つの柱のひとつに
“People are good.(人は善良である)”
という言葉があり、「“組織”を指差す前向きの思考」は、まさにこれを言い表しているのではないかと感じています。
以上
シニア・コンサルタント
後藤 智博
この記事は、弊社サイトで過去に掲載していた内容を再掲載しております。