組織のパフォーマンス向上において、制約への注力が鍵となることをご存知でしょうか。

「改善策をやりつくし、もう対策できることがない…」と、組織の成長に懸念を抱いているマネジメントの方もいるでしょう。

改善策をやりつくしたと思っていても、見つけられていなかった制約を発見することで、組織のさらなる成長につなげることが可能です。

今回の記事では、TOCにおける制約の解消プロセスと、業績改善を実現した企業例を3つ解説していきます。

業態や業種問わず、制約を見つけ改善することは、組織の成長において必要不可欠です。

具体例を交えて解説していきますので、自社の業態・業種に合わせ、ぜひイメージしながら読んでみてください。

ビジネスシーンにおけるボトルネックとは?

ボトルネックとは、瓶の一番口が狭くなった箇所のことです。
ビジネスシーンにおいてボトルネックは、一番生産性が弱い要素、能力や容量が低い要素を言います。

TOCにおける制約とは?

TOCにおいては、ボトルネックが必ずしも制約と特定されるわけではありません。
全体のパフォーマンスを決定づける要素の事を、TOCでは制約と言います。

一番生産性が弱い要素、能力や容量が低い要素であるボトルネックは制約となりえることもあります。
しかし全体のパフォーマンスを決定づける、特定の要素を制約と定義するのがTOCです。

例えば新規ECサイト構築に関する、プロジェクトチームを新しく組む場合。

Webについて知識のない人がプロジェクトのディレクターとなってしまった場合、判断を下す前に1回1回エンジニアに確認をしなくてはいけません。

度重なる確認作業により、プロジェクト全体の遅延が予想されます。

上記の場合、ディレクターがやらなければならない作業が制約になってきます。
計画を立てる場面で、ディレクターの知識不足が工程の後れを発生させているためです。

TOCでアプローチする制約と言われる部分は、この部分となります。

TOCで制約に注目する理由

TOCでは全体の作業効率に対して改善を試みるのではなく、プロジェクトのパフォーマンスを決定づけている、特定の要素に注目します。

特定の要素が制約であり、制約に注力して働きかけることで、プロジェクト全体の生産性が向上すると考えるのがTOCです。

プロジェクトディレクターの知識不足による、作業工程の遅延が制約となっている場合、その工程に向けて働きかけます。

制約部分を強化することで全体の停滞を改善し、トータルのパフォーマンスを改善させます。

制約を解消するTOCの5段階集中プロセス

次に制約を解消していくためのTOCの5段階集中プロセスを、自動車生産ラインを用いて解説していきます。

自動車生産ラインの工程を、以下の4つに分けた場合で解説していきます。
各工程当たりの1時間の作業可能台数が以下の通りだった場合、1時間あたりに生産可能な台数は何台でしょうか?

  1. 20台/1時間
  2. 35台/1時間
  3. 10台/1時間
  4. 25台/1時間

答えは10台です。

ステップ① 制約を見つける

上記の例の場合、パフォーマンスを決定づけている制約は、上記の生産ラインの工程③となります。
制約以外のパフォーマンスは、全体の生産ラインのパフォーマンスには影響しないのです。

TOCでは工程③を制約とし、注力して働きかけていきます。

ステップ② 制約を最大活用する方針を決める

パフォーマンスを決定づけている工程を見つけた後は、③の工程のパフォーマンスを最大化する方針を決めます。

例えば原因がリソース不足であった場合、他の工程よりリソースを補充するなど、対策を打ちます。

ステップ③ 制約以外のすべてをステップ2の決定に従属させる

パフォーマンスを決定づけている制約を解消するため、決めた方針を実行に移します。

ステップ④ 制約を強化する

4つの工程同士の連携をより強化し、定着させます。

ステップ⑤ 制約が解消したら惰性に気を付けてステップ①に戻る

特定した制約が解消した後は、また他の制約が見つかります。
新しい制約を見つけるステップ①にもどり、5段階プロセスを回していきます。

TOCの5段階集中プロセスを回すことにより、フローが大幅に改善し、自動車生産ラインに余剰能力ができるでしょう。

 

制約に注力しTOCで業績改善した企業例

続いて制約に注力したことで、業績を改善させた企業事例を3社解説していきます。

3社とも大きな改善へとつながっており、TOCがパフォーマンスの向上において効果的であることを証明しています。

事例①シャープ株式会社様

TOC導入により、開発のリードタイムをなんと30%短縮することに成功しました。
導入から6ヶ月での成果です。

シャープ株式会社様は2012年以降、売上高や利益の減少が続いていました。
構造改革を行うも、低迷と糸口が見えない状態が続き、TOC導入を決定。

開発リードタイムの短縮に加え、魅力的な商品開発にも成功し、量産段階での品質も向上。
遅延をカバーするためにかかっていた経費も、大幅に削減することができたのです。

制約を見つけ出し、停滞を発生させていた根本的な要素を特定し、集中して改善。
集中して制約に注力し、短期間で成果を上げることができました。

2つの制約を特定

TOC導入にあたり、全部門から代表者が集まって制約を特定していきました。

制約と特定できた要素は6つ。
6つの中から、すぐに着手できる制約2つを選定し、解決の方向性を決定していきました。

2つの制約は以下の通りです。

  1. 1年後へ向けた次機種先行検討時間の不足
  2. 戦略・戦術における階層間でのつながりが不明確

①の制約については、CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)を導入することで、マネジメントのあり方を変えていく方針を決定しました。

結果的にタスクの優先順位が明確化し、停滞時間が大幅に減少。
停滞時間の減少により確保できた時間を、先行検討や技術検討にあてることができました。

②の制約については、事業全体の戦略・戦術とその背景となる考え方を明確に伝えられるよう、共有方法を改善しました。

共有方法を改善したことで、マネジメント層と現場の認識のずれが大きく解消。
同じベクトルへ向かって、開発を進められるようになったのです。

事例②アルパイン情報システム株式会社様

アルパイン情報システム株式会社様は、TOC導入により納期順守率を29%から88%へと改善されました。

慢性的な人手不足、個人プレー、共有にかかる時間など多くの問題点があり、TOC導入を決定。
CCPMでプロジェクト全体を、俯瞰して確認できるようにしました。

結果、上流工程が開発の制約であったことが判明。
上流工程で多くの問題が発生し、プロジェクトがスタートしても思うように進まない現状がわかりました。

そこでプロジェクトの同時スタートを回避できる、年度計画を立てることに決定。
全体を見える化したことで、問題が判明し、解決に対策を打てるようになりました。

事例③昭和電線ケーブルシステム株式会社様

TOC導入のより、昭和電線ケーブルシステム株式会社様のプロジェクトにおいて、研究開発の遅延ゼロを達成しました。

導入前より新製品を開発する期間の短縮努力は行っていましたが、平均して2ヶ月の遅延が常習化していたそうです。

そこでTOC導入を決定し、技術開発センターのリーダー以上の層へCCPMの教育を実行。
制約を探すため、遅延原因の入力を徹底していきました。

結果的に、半年間の間に600日以上報告された遅延理由を特定。
特定された遅延理由に対し、徹底的に検討を行いました。

制約に注力したおかげで、2ヶ月の遅延ゼロを実現できたのです。

TOC導入で制約を解消しパフォーマンス向上へ

今回の記事では、ビジネスシーンおけるボトルネックの意味と、制約を解消するための5段階集中プロセスについて解説しました。

制約とは、プロジェクト全行程の中で最も弱い部分、問題となっている特定の要素を言います。

制約を解消する5段階集中プロセスの流れは、以下の通りです。

      1. 制約を見つける
      2. 制約を最大活用する方針を決める
      3. 制約以外のすべてを上記の決定に従属させる
      4. 制約を強化する
      5. 制約が解消したら最初のステップに戻る

      制約に注力し、また次の制約を探して改善を繰り返すことが重要。
      上記のプロセスの繰り返しにより、組織やプロジェクトのパフォーマンスを継続的に改善していくことが可能です。

      TOC導入により、業績やパフォーマンスを改善した企業例も紹介しました。

      企業名 成果
      シャープ株式会社様 開発のリードタイムを30%短縮
      アルパイン情報システム株式会社様 納期順守率を29%から88%へ改善
      昭和電線ケーブルシステム株式会社様 研究開発の遅延ゼロを達成

      制約に徹底的に改善すると、同じリソースの中でより高いパフォーマンスを発揮することが可能です。

      長い業績不振や低迷に悩んでいる方はぜひ、TOC導入の解消を検討してみてください。

      また、TOCのさらに詳しい内容を、以下資料にて公開しております。

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      こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができますので、是非ご活用ください。