マネジメント携わる立場の方であれば、「CCPM」という言葉を耳にしたことがある!という方は少なくないでしょう。
難しそうで敬遠しがちな略語ですが、正しく理解することでプロジェクト管理を大きく改善する糸口になります。
今回は、そんなCCPMについて解説していきます。
プロジェクト管理の注目用語「CCPM」
そもそもCCPMは、TOCというマネジメント方法の中のプロジェクト管理方法です。
CCPMの理解のため、まずはTOCについて理解しておきましょう。
まず理解しておきたいマネジメント手法、TOC
TOC(Theory of Constraints)とは、日本語で「制約条件の理論」と呼ばれるマネジメント手法を意味します。
企業の繫栄を目的とした様々なツールや考え方を内包し、課題の根本原因である「制約」に絞って対策を行う点が大きな特徴です。
そんなTOCの中で、プロジェクト管理に特化した方法論がCCPMです。
勘や経験に頼らず進捗をコントロールすることで、プロジェクトにまつわる様々なトラブルを避けることが可能になります。
CCPMは進捗を管理するプロジェクトマネジメント
CCPMは、プロジェクトの納期に対する遅延をなくし、円滑なプロジェクト進行を助ける管理手法です。
「Critical Chain Project Management」=クリティカルチェーンマネジメントの頭文字をとって、CCPMと呼称されています。
名前にもなっているクリティカルチェーンとは、簡単に言えばプロジェクトのなかで最長の時間を要する作業の流れを指します。
プロジェクト内の個別タスクのそれぞれを見るのではなく、クリティカルチェーンの流れを見てプロジェクトを管理することが大きな特徴です。
また、プロジェクト管理で頭を悩ませることの多くは、「納期の遅延」に関することではないでしょうか。
CCPMを正しく使用することで、経験と勘に頼りがちだった納期に対する進行管理を、より確実にコントロールすることが可能になります。
関連用語で理解するCCPMのプロジェクト管理
CCPMの意味や有用性についてお話してきました。
プロジェクトに取り入れてみたい、と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは実践でCCPMを使用する方法に迫ります。
まずは関連用語の理解から始めていきましょう。
CCPMをとりまく用語を理解することは、CCPM実践への近道です。
難しそうに見えても、ひとつひとつはとてもシンプルな考え方ですので、ご安心ください。
まずは、根本となる概念である「制約」から解説していきます。
CCPMにおける「制約」とは
TOCにおいて根幹をなすといっても過言ではない「制約」の考え方。
プロジェクト管理においても「制約」は、最も注目すべき要素です。
プロジェクトにおけるパフォーマンスとはなんでしょう?
パフォーマンスとは、プロジェクトにかかる時間のこと、つまり納期を指しています。
では、プロジェクトの納期を決定づける要素とはなんでしょうか?
それは、プロジェクトの中で一番長くかかってしまうタスクの繋がり、つまりクリティカルチェーンが該当します。
プロジェクトにおける制約であるクリティカルチェーンに注目して対策を行うことが、CCPMの基本姿勢になります。
プロジェクト内の制約に注目して対策を取ることが、CCPMの基本姿勢になります。
CCPMにおける「クリティカルチェーン」とは
どんなプロジェクトにも存在する「クリティカルチェーン」についても理解しておきましょう。
クリティカルチェーンとは、別名クリティカルパスとも呼ばれ、プロジェクトの開始から完了までの経路の中で、最も時間を要する経路のことです。
以前までは、「クリティカルチェーン」と「クリティカルパス」は別物として定義されていましたが、現在はほぼ同等の意味合いで扱われています。
CCPMを使用してプロジェクト管理をする際には、このクリティカルチェーンを正確に発見することが大切になります。
なぜなら、クリティカルチェーンこそが遅延の最大の原因=制約である部分を含んでいるためです。
逆に、クリティカルチェーンを正確に把握し、管理することでプロジェクトのコントロールが容易になるということでもあります。
CCPMにおける「バッファ」とは
ビジネスにおいて予備を示すバッファ。
プロジェクトを管理する際、バッファをとった計画を立てることはごく一般的ですよね。
CCPMではこのバッファの設定にとことんこだわります。
例えば、
- タスクごとになんとなく「この程度必要だろう」とバッファ割り当てる
- 不測の事態を見越してそれぞれのタスクにバッファを多めに設定する
こんなこと、していませんか?
なんとなくのバッファ設定では、結局バッファを使い果たして遅延してしまったり、逆に無駄な待ちが生じることも。
CCPMでは、クリティカルチェーンの長さから必要なバッファを算出し戦略的にバッファを配置していきます。
適切なバッファ管理を行うことで、不測の事態に対し柔軟な対応が可能になるのです。
バッファの管理は、CCPMの肝と言っても過言ではありません。
使いこなせば強力な武器になるCCPM
CCPMに対する理解が深まってくると気になるのは「本当に導入で効果が得られるのか?」という部分だと思います。
ここでは、導入によるデメリットの有無についても解説しながら、効果的な導入方法についてお伝えしていきます。
CCPMの導入によるデメリットは?
実際に多くの企業で導入され、効果を上げているCCPM。
導入によるデメリットや自分の会社で使用できるのか、は気になるところですよね。
CCPMの導入は、設備投資や人員の投入による物理的なプロジェクトの改善とは異なり、大きなコストは必要ありません。
気になるコスト面でのデメリットは少ない、と言えます。
デメリットがあるとすれば、CCPMの導入に、最初はメンバーがどうしても戸惑ってしまうことが挙げられます。
今までの通例的な考え方を捨てるとき、抵抗が起きるのは容易に想像できますよね?
導入によってトラブルが生じた例には、以下のようなものがあります。
- なんのためにやるのかを伝えず、ただ新しい手順を伝えたところ反発があった
- 新しい管理方法を導入したが、報告があがってこず導入による有効性が判断できない
メンバーに正しく情報を共有することで、社内やチーム内からの反発や振り解を前もって和らげ、みんなから理解される導入が可能になります。
いずれにしても、メンバーがCCPMを理解し使いこなすには、どうしても慣れが必要となります。
導入にかかる時間を短縮するためにも、まずはマネジメントする立場の方がしっかりCCPMについて理解しておくことが大切です。
CCPMの導入成功のカギはツール活用にあり
CCPMを使いこなせるか不安な方もご安心ください。
状況や問題にあわせた最適なツールが既に用意されているのも、CCPMの大きなポイントなんです。
ここでは、主なツールを紹介していきます。
バッファマネジメント
全体の進捗と割り当てられるバッファを可視化してから、プロジェクトを管理するマネジメントです。
適切なバッファマネジメントを行うことで、不測の事態が生じても大きな停滞や損害の発生を回避することができます。
パイプラインマネジメント
組織のリソースの負荷を考慮し、プロジェクトの投入量・投入タイミングを制御するマネジメントです。
無計画なタスクの詰め込みをなくすことで、停滞の発生を抑えます。
フルキット
プロジェクト開始前に、準備項目をリスト化し複数人で共通認識を作ることを指します。
事前に共通認識を作ることで、出戻りを削減し、品質向上や進行スピードの向上も期待できます。
こうした普遍的に使えるツールが用意されていることで、業種や規模を問わず導入できるのもCCPMの魅力のひとつです。
具体的なCCPMの導入手順を知ろう
では、実際にCCPMを導入するとなったらどんなことをしていけばいいのでしょう?
ここでは、CCPM導入時の計画手順を解説していきます。
CCPMの導入手順は、大きく3つのステップで理解することができます。
- プロジェクトの構想
- ネットワークの構築
- CCPM式にスケジュールを再構築
ここでは、導入のための各ステップをご紹介していきましょう。
STEP1 プロジェクトの構想
まずはプロジェクトの構想からスタートします。
取り組むべき課題やゴールを設定し、メンバー間で意識共有する段階です。
ゴールの設定に際しては「ODSC」と呼ばれる3つの内容を決定していきます。
- 目的:Objectives
- 成果物:Deliverables
- 成功基準:Success Criteria
上記の3つを決めることで、プロジェクトの目的や完了時の状態を正確にイメージできるようになります。
メンバー間で意識共有ができていないと、プロジェクト進行中に目的から逸脱したり、成果物の質の低下にもつながります。
明確な目的や成功基準を設定して、同時にメンバーへの周知を図ることが大切です。
STEP2 ネットワークの構築
構想が共有できれば、次はプロジェクトのネットワークを構築していきます。
ネットワークを構築は以下の手順で行っていきます。
プロジェクトの構想で設定したODSCをプロジェクト終盤に配置する
↓
タスクのゴールを意識しつつ最後から順に書き出す
↓
タスク同士が必要十分な関係かどうか確認する
↓
タスクごとに要件の定義と必要期間の見積をおこなう
↓
完成したネットワークを組織のメンバーに共有・検証してもらう
タスクを並べて完了ではなく、タスクのゴールを意識しながら、行きつ戻りつ、抜け落ちをなくしていきます。
ネットワーク構築にあたっては、タスクの依存関係やリソースなども同時に考慮に入れていきましょう。
STEP 3 CCPM式にスケジュールを再構築
ネットワークの構築が完了したら、CCPMの考え方を適用したスケジュールを構築します。
ネットワークの構築段階では、まだタスクごとにバッファを設定している状態です。
STEP3では、タスクごとのバッファを削除して、プロジェクトバッファとして再編成を行います。
スケジュールを再構築する際は、以下の6つの手順で行います。
タスクごとのバッファを一律50%にカット
↓
リソースの競合があれば各タスクの実行タイミングをずらす
↓
クリティカルチェーンを特定する
↓
プロジェクトバッファをゴールの手前に挿入する
↓
合流バッファを挿入する
クリティカルチェーンの長さに応じた適切なバッファをゴール前に配置すると、不確実性に柔軟に対応することが可能になります。
この3STEPを正しく行うことで、プロジェクト管理は確実に改善していきます。
このように導入手順があらかじめ決まっており、導入の道筋ができているのもCCPMのいいところ。
導入手順を守ることで、企業規模や業種を問わずスムーズに導入することが可能になります。
まとめ:CCPMの適切な導入でプロジェクト管理をスムーズに
正しく活用、導入することでプロジェクト管理を大幅に改善してくれるCCPM。
適切な導入にあたっては、プロによるコンサルティングを活用することでより短時間で確実な成果を挙げることができます。
私たちビーイングコンサルティングは、数多くの企業のTOC導入を成功に導いてきたTOC導入のプロフェッショナル。
導入を検討される方に向けて、下記資料にてTOCの導入についてより詳細な解説をご案内しています。
こちらも併せてご覧いただくことで、よりTOCの重要性を知ることができますので、是非ご活用ください。