「効率的にプロジェクトをマネジメントしたい」

「計画通り進まず現場力で対処してしまっている」

このような悩みはプロジェクトマネジメントの現場ではよく起こり得ます。

プロジェクトでは予定通りに物事が進まないケースも珍しくないからです。

計画に遅れが生じて悩んでいるプロジェクトマネージャーの方は、チームにメトリクス管理を導入してみてはいかがでしょうか。

メトリクス管理とは、客観的な数値やデータを駆使してプロジェクトの進捗を正確に把握する管理手法です。

メトリクス管理を導入することで、プロジェクトのスムーズな進行が可能になり、生産性も向上します。

ここでは、計画通りに物事を進めるために有用なメトリクス管理についてご紹介します。

メトリクスとは?

メトリクスとは、プロジェクト活動のあらゆるデータを数値化し、管理しやすいように加工したものです。

メトリクスを算出することにより、勘や経験といった不確定要素を排除し、プロジェクトマネージャーやチームメンバーが一目でプロジェクトの現状を把握できるようになります。

例えば、車のメーターは人間が一目で内容を把握できるよう、速度やガソリンの量といった定量データを加工した状態で表示されています。

もしメーターがなければ、速度の調整や給油するタイミングを経験や勘を頼りに実施するため、ガス欠を起こしやすいでしょう。

メトリクスがなければ物事を正確に判断することが難しく、先行きを予測できません。

特にプロジェクトマネジメントでは、ゴールまでの道筋を正確に予測する必要があることから、メトリクスが重要な要素といえるでしょう。

メトリクスが今注目されている理由

メトリクスは、プロジェクトマネジメントの現場で注目されています。

その背景には、情報技術の発達により昔よりも取得できるデータが増え、可視化できる活動の範囲も大きく広がったという事情があります。

それだけ人が把握しなければならない情報は増えていますが、メトリクスでコントロールできる範囲が広がっていることはチャンスとも捉えられるでしょう。
なぜなら、メトリクスの動きをきちんと把握して戦略を練れば、精度の高い効率的なプロジェクト計画が立てられるからです。

例えばSaaS業界では比較的メトリクスがよく使われており、メトリクスの分析と可視化が成功に大きく貢献しています。

KPIとの違いについて

KPIはメトリクスと似ていますが、メトリクスの方が範囲が広いという点で異なります。

KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語で重要業績評価指標と翻訳されます。
メトリクスの内、目標達成を判断するために重要な指標であるもののみがKPIです。

つまり、KPIはメトリクスの一部と言えます。

例えばプロジェクトマネジメントでは、進捗率や納期遵守率などの指標をKPIとして設定します。

KPIには、目標と実績を比較しながらリアルタイムで軌道修正を行えるメリットがあります。

メトリクス管理とは?

メトリクス管理とは、客観的な数値やデータを加工して作成されたメトリクスを駆使してプロジェクトの進捗を正確に把握する管理手法です。

定量化したデータは重要ですが、そこに分析や解析などの加工を施すことで具体的な施策が生まれます。

例えば、以下の画像は担当したプロジェクト、日付、開発工程等を割り出し工数をデータとして収集したものです。

出典:RDPi

これは単なるデータであり、以上の表だけではプロジェクトの詳細はわかりません。

先ほどの表を開発工程ごとに集計して、時間の推移が理解できるように加工してみます。

出典:RDPi

そうすると、以上の画像のようにプロジェクトの状況が理解できます。

例えば、本来は結合テストより先に単体テストに取り組むべきところを、先に結合テストが実施されていることが多いという点が把握できるでしょう。

さらに次のようなグラフに加工すれば、プロジェクトの状況をより正確に理解できるようになります。

出典:RDPi

以上のように、さまざまなデータを加工されたものがメトリクスです。

データは単なるデータであり、理解できる形になっていなければプロジェクトに活かすことはできません。

順を追って正しくデータからメトリクスを生み出すことで、メトリクス管理が正しく実行できるでしょう。

メトリクス管理の目的

メトリクス管理は、プロジェクトを円滑に予定通り進めるために使用されます。

客観的なメトリクスという指標があれば、精度の高い計画を立てられます。

例えば、案件にアサインされていてプロジェクトを進める必要があった場合、特に管理されていなければ今やるべきことを見つけてこなすのは難しいでしょう。

しかしメトリクスを活用すれば、プロジェクトのゴールを目指すために今やるべきことを明確にできます。

プロジェクトを計画通り進めるためにも、メトリクス管理は重要な考え方です。

メトリクス管理を使ったプロジェクトマネジメントの手順

ここでは、メトリクス管理を使ったプロジェクトマネジメントの手順を紹介します。

1. プロジェクトの指標をメトリクスとして可視化

まずは、プロジェクトの中から指標となりそうな部分をピックアップします。

最終的なゴールから逆算して、途中で何が達成されている必要があるかを考えてみましょう。

例えばシステムの導入であれば、3週間前までには設計を、2週間前には構築、そして1週間前には現地導入作業を終わらすというように決めていきます。

また、測定項目は細かくしすぎないことが重要です。
細かすぎると手間がかかる分管理に時間が取られ、プロジェクトの効率を低下させます。

メトリクスが可視化されれば、よりスムーズなプロジェクトマネジメントにつながります。

2. 基本メトリクスセットを計測

基本メトリクスセットとは、以下の4項目の指標を指します。

  • 工数:
    メンバーが作業に費やした時間
  • 作業要素:
    プロジェクトに必要なタスクを指し、消化具合を見ることで進捗管理が可能
  • 作業成果物:
    作業によってできたもので、システム開発であれば最終的に完成したシステムや途中で作成されたドキュメントが作業成果物に当たる
  • 不具合・課題:
    プロジェクト中に起こりうるマイナス要素。全くないプロジェクトはほぼ存在せず、考慮できないと損失が発生

以上が、プロジェクトの進捗管理を実施する上での必要最小限と測定項目です。

基本メトリクスセットを可視化・把握できれば、効率よくプロジェクトを進められるでしょう。

3. 2軸管理で進捗状況を検証・分析

基本メトリクスが計測できれば、次はアクティビティ軸とプロダクト軸の2軸で進捗を管理します。

メトリクスをどのような工程で進めるかを定義したものがアクティビティ軸です。

アクティビティ軸は、プロジェクトの各工程やメンバー個別の作業に焦点を当てた指標です。

プロダクト軸は、作業によってできた成果物に焦点を当てます。

最終成果物を完成させるまでの作業を分解し、プロジェクトがどの段階の作業まで進んでいるのか示します。

例えば、定義された開発の段階が「設計→構築→運用」だった場合、以下のようなアクティビティ軸に着目します。

  • 予定通りに設計段階から構築段階に移行しているか
  • フェーズごとに適切な評価を行う時間が十分に確保されているか

プロダクト軸に着目した場合は、例えば以下の観点から進捗を管理します。

  • 設計段階ではヒアリングシートが順調に作られているか
  • 成果物が足りない影響で最終成果物の完成に支障をきたしていないか

4. PDCAサイクルの実行

検証が終われば、「計画・実行・検証・改善」のサイクルであるPDCAを回転させます。

実行後には、実行した結果を評価するための時間を設けるようにしましょう。

単にメトリクスを抽出し管理しやすいように整理しても、すぐに成果を実感できるわけではありません。

実行後に改善を加えることではじめてメトリクス管理の効果が現れます。

PDCAを実行する際のポイントは次の通りです。

  • 目標は数値で、計画は具体的に詳細に作成する
  • 計画通りに実行する
  • 無理のない計画にする
  • 定期的に評価・確認する

メトリクス管理を行う際のポイント

ここでは、メトリクス管理を実施する際のポイントを3つ紹介します。

データの抽出はなるべく正確に

メトリクス管理では、データの収集はなるべく正確に行いましょう。

必要なデータがないと、最終成果物が求めていた品質に達しない可能性があります。

メトリクスを洗い出す時点で、抜け落ちている観点はないか確認しましょう。
また、洗い出したメトリクスを順調に計測した場合に満足のいく最終成果物ができるのかを考えるのも効果的です。

精度の高いデータ抽出が、後のプロジェクトの質を大きく左右します。

数値化に否定的なメンバーを説得する

プロジェクトメンバーのなかには、あらゆるデータを可視化・数値化することに抵抗感を覚える方もいるかもしれません。

自分の仕事ぶりに自信がない方は、成績を可視化されることに否定的になってしまう可能性があります。

しかし、メトリクス管理はあくまで進捗や現状を可視化するためのものであり、個人を評価するためのものではありません。

データの可視化や数値化に積極的でないメンバーに対しては、上記の考え方に共感してもらえるよう、丁寧な説明を心がけましょう。

リアルタイムな分析を心がける

リアルタイムの分析を心がけることも大切です。

メトリクス管理によってデータが可視化されたとしても、実行への着手が遅れてしまうとプロジェクトの進行に支障をきたします。

メトリクスを細分化しすぎないことでスムーズな作業が可能になり、よりリアルタイムに近い分析を行えるようになります。

また、メトリクスの収集に専門的な知識が求められる場合、各メンバーへの負荷が大きくなる点には注意が必要です。
この場合は、収集に時間がかかりすぎるメトリクスは管理しないという方針にすることも考慮にいれましょう。

メトリクス管理を実施する場合は、業務・工程の改善業務が発生するよりも前に、あらかじめメンバーをアサインしておくと良いでしょう。

まとめ:メトリクス管理で効率的なプロジェクトマネジメントを

今回の記事の内容を以下にまとめました。

  • 計画通りプロジェクトを進める有用な施策としてメトリクス管理がある
  • メトリクスは、あらゆる活動を定量化した指標
  • メトリクス管理では精度の高いデータの抽出が重要になる
  • メトリクス管理において分析はなるべく素早く行うべき

メトリクス管理によって、定量化された複数のデータを分析し、プロジェクトにおける課題を見つけます。

メトリクス管理で課題を見つけて、それを上手く対策・実行して、プロジェクトマネジメントの効率を上げましょう。

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