働き方改革の関連法により、残業時間に月45時間・年360時間の上限規制が設けられるため、企業では残業時間を減らして生産性を高めることが重要になっています。
企業にとって、業務の明確化や不要な業務の削除など、残業時間を減らし生産性を高めるために実施するべきことは山ほどあります。
しかし、残業時間を減らそうとしようにも、以下のように悩んでいる方も多いはずです。
- 「なぜ残業時間が増えてしまうのか?」
- 「残業時間を減らして生産性を高める対策方法とは?」
本記事では、残業時間を減らして生産性を高めるための7つの対策方法と5つの事例を解説します。
日本における残業時間の現状
労働政策研究・研修機構が発表している国内統計を見ると、2017年から2022年における総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間の推移が把握できます。
以下の図では、前年同月と比較し、上記3つの時間がどれくらい変化したかを表しています。
残業時間にあたる「所定外労働時間」は新型コロナウイルスの影響により、2020年に一時的な減少傾向を見せましたが、2021年に大きな反動を見せています。
さらに、2022年になると前年同月比4.0%前後で所定外労働時間が推移しており、コロナ前に比べて残業時間が増加傾向にあることがわかります。
残業時間が増加すると、労働生産性の低下や従業員の健康状況の低下などの課題が発生するため、残業時間が増加傾向にある今、企業は残業を減少させ、生産性を高めることが重要です。
残業時間が増えてしまう原因
働き方改革関連法により、残業時間に月45時間・年360時間の上限規制が設けられるため、企業は残業時間を規制内にする必要があります。
しかし、残業時間が増えてしまう原因を知らなければ対策できません。
残業時間が増えてしまう原因は次の通りです。
- 残業ありきの働き方
- 人員不足
- 管理職によるマネジメントの不備
- 繁忙期と閑散期における人員配置の差
残業時間が増える原因を知ることで、それに対しての対策が取りやすくなり、結果的に残業時間の減少につながります。
残業が増える原因について詳しく解説します。
残業ありきの働き方
あらかじめ残業ありきの業務スケジュールを組んでいる企業が少なからず存在します。
また、あえて長時間勤務をすることで、たくさんの残業代を稼ごうと考える従業員もいることは事実です。
このような考えを改めなければ、いつになっても残業時間を減少させられません。
残業時間を減少させるためには、徹底したスケジュール管理が必要です。
人員不足
人員不足の状況だと複数の業務に対応できず、業務過多に陥ってしまい、残業時間が増加する要因となります。
たとえば、スタートアップしたばかりの企業の場合、人員が少なく、残業をしなければ業務を完了できません。
また、人件費削減のため数十人必要なプロジェクトを数人で実施した場合、マンパワーが足りず残業をしなければ業務が完了できなくなります。
このように、残業時間が増える原因として、人員不足による業務過多があげられます。
残業時間を減少させるためには、人員に合う業務スケジュールを組む必要があります。
管理職によるマネジメントの不備
管理職によるマネジメントの不備があると、残業時間が増えます。
なぜなら、残業や休日出勤が増えているにもかかわらず、それらをきちんと把握できていないからです。
残業時間を抑える対策として、管理職が部下の労働時間を把握し、必要に応じて注意喚起をすることが重要になります。
しかし、管理職によるマネジメントの不備があると、部下の労働時間を把握できないため、注意喚起ができず、残業時間が増えてしまいます。
後ほど詳しく紹介しますが、ICTツールの導入によって上記のような問題を解消できます。
繁忙期と閑散期における人員配置の差
繁忙期と閑散期における人員配置の差により、残業時間が増えます。
なぜなら、繁忙期になると一気に業務が増えてしまい、閑散期の人員配置では定時までに対応しきれないからです。
たとえば製造業の場合、繁忙期はいつも生産ラインに人員を投入しているものの、新型コロナウイルスの影響で人が集まらなくなったケースも珍しくありません。
繁忙期と閑散期により、人員配置を変えることで、残業時間を抑えられます。
残業時間を減らして生産性を高める7つの方法
残業時間を減らして生産性を高める方法は次の通りです。
- 業務目的の明確化
- 不要な業務の削除
- 優先順位をつける
- ICTツールの導入
- 柔軟な働き方の導入
- 研修・教育制度の導入
- 年俸制やインセンティブ報酬制の導入
各方法を理解しておくと、残業時間を減少させ生産性を高めようとする際、施策を導入しやすくなり、各従業員の理解度も高まります。
残業時間を減らして生産性を高める方法を詳しく解説します。
業務目的の明確化
1つ目の方法は、業務目的の明確化です。
この方法により残業時間が減少する理由は、業務の目的が明確化され必要な人員やスケジュールなどを適切に設定できるようになるからです。
具体的には、業務目的が明確化されると、業務で必要な手順や完了までにかかる期間などの全体像を把握できます。
方法としては、業務のゴールを設定することで、そこに至るまでどのような手順が必要が洗い出します。
適切な手順で効率的に業務を進められるようになった結果、業務効率が向上し、残業時間の減少が見込めます。
不要な業務の削除
2つ目の方法は、不要な業務の削除です。
日々行われている業務の中には、不要な業務が多く存在しています。
不要な業務を洗い出すためには、日々行われている業務の分析が必要です。
日々行われている業務を分析すると、不要な手順や無駄な人員配置などが洗い出されます。
洗い出されたものを削除することで、適切な手順や人員配置で業務が進められ、結果的に残業時間の減少し、生産性が高まります。
特に、業務を分析する際には、主観的ではなく客観的に分析することを意識しましょう。
優先順位をつける
3つ目の方法は、優先順位をつけるです。
企業が進めている業務は基本的に一つではなく、複数あることがほとんどです。
そこで、複数ある業務の重要度や納期などさまざまな要素から優先順位をつけましょう。
優先順位が高い順に進めることで、適切な順番で業務が進められるようになり、残業時間が減少し、生産性も高まります。
企業により、優先順位は異なりますが、利益に大きくかかわる業務から優先順位をつけることがおすすめです。
ICTツールの導入
4つ目の方法は、ICTツールの導入です。
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、業務管理やチャットで使用するツールを総称してICTツールと呼びます。
うまく使用できると、業務を効率的に進められるようになり、残業時間の削減や生産性向上に大きく役立ちます。
特に、ICTツールは1つだけを導入するのではなく、複数を併用することで、より生産性向上が見込めます。
例えば、Slackとカレンダーを連携させて、毎朝その日の予定をSlackで受け取れるように設定し、業務の抜け漏れを防ぐことができます。
他にも、SalesforceとGmailを連携させて、取引先ごとに送受信したメールを一元管理できるように設定し、やりとりを確認しやすくすることができます。
こちらはあくまでも一例にすぎず、多くのツールは相互に連携機能があるため、管理やコミュニケーションをシームレスにすすめるこ
柔軟な働き方の導入
5つ目の方法は、柔軟な働き方の導入です。
柔軟な働き方の導入により、従業員に合う働き方を選択できるため、効率的に業務が進められるようになり、残業時間を減少し、生産性を高められます。
具体的には、フレックスタイム制により自分に合う時間で働けるようになります。
また、有給休暇の積極活用することで、ワークライフバランスの管理できるでしょう。
さらに、柔軟な働き方を導入することで、従業員の企業へ貢献したいというモチベーションを高められるため、積極的な導入がおすすめです。
研修・教育制度の導入
6つ目の方法は、研修・教育制度の導入です。
研修・教育制度を導入により、従業員の業務に対する理解度やスキルが高まり、結果的に残業時間を減少し、生産性が高まります。
方法としては、月に一回のワークショップやオンラインによるスキルアップ研修を実施することで、従業員の能力アップにつながります。
また、研修・教育制度を実施した後にアンケートやテストをすると、効果がどの程度なのか確認できるため、おすすめです。
年俸制やインセンティブ報酬制の導入
7つ目の方法は、年俸制やインセンティブ報酬制の導入です。
年俸制やインセンティブ報酬制の導入により、時間ではなく成果で人材を評価できるようになります。
具体的には、一般的な時給制の場合、残業をすることで残業代が給料にプラスされますが、年俸制の場合、報酬は決まっているため、残業をせず定時に業務を終えるように努力するでしょう。
さらに、インセンティブ報酬制の導入により、成果をあげると報酬がもらえるようになるため、従業員は成果を高めるよう、生産性の高い働き方になります。
このようなことから、年俸制やインセンティブ報酬制の導入により、時間ではなく成果での報酬になるため、生産性が向上し、残業が減少します。
残業時間を削減して生産性を高めた事例5選
厚生労働省が公表している「時間外労働削減の好事例集」をもとに、残業時間を削減して生産性を高めた事例を紹介します。
実際の事例を知ることで、どのような対策を取るべきか具体的にわかるようになり、残業時間の削減につながります。
顧客の協力のもと残業実施状況を適切に管理
A社では、顧客の協力のもと残業実施状況を適切に管理する事例の背景として、繁忙期に人員不足になってしまう問題がありました。
そこで、次の取り組みを実施しました。
- 残業の事前申告と実施状況の管理
- 顧客を巻き込んだ業務改善
- 業務の平準化
管理者が残業予定者を正確に把握するため、残業の事前申告を徹底し、毎月2回、従業員の残業の状態を報告してもらう仕組みを作りました。
みだりに残業を行わないような取り組みを行って業務のスリム化に成功した、好事例だといえるでしょう。
また、顧客からの要望を応えるために残業が必要になる場合があります。
そこで、Win-Winの提案を行い、お互いの業務効率化を進めることで、結果的に自社の労働時間削減と顧客の要望に応えることを両立させています。
このような取り組みの中、業務を特定の人しかできない状況が起こると、非効率的になり残業が増えてしまうため、同時に業務の平準化により、安定性を増してます。
このように、周囲の協力により、残業時間を減少させ、生産性を向上させられます。
ノー残業デーと業務効率向上の目標を自ら決め残業時間を抑制
B社では、ノー残業デーと業務効率向上の目標を自ら決めることで、残業時間を抑制しています。
具体的な方法としては、毎週1日従業員が自分でノー残業デーを設定し、残業抑制の雰囲気を醸成し、業務効率向上の目標を設定して月1回進捗を管理します。
以前までは、定時を過ぎても仕事をしている上司や同僚に気を遣い、仕方なく残業に付き合う従業員も少なくありませんでした。
しかし、対策を実施したところノー残業デーだからという雰囲気により、周囲を気にせず定時で帰宅できるようになりました。
従業員同士でノー残業デーの日程が重なりすぎないよう、ノー残業デー用のファイルを共有し、業務に支障が出ないようにしています。
また、業務効率向上の目標を設定したことにより、やるべき業務が明確になり、ミスの削減や企業の付加価値の向上につながっています。
社内全体の雰囲気が変わったことから、「残業ありきで働く」という考え方そのものが変化しました。
上司の適切な管理による残業時間の抑制
C社では、上司の適切な管理により、残業時間の抑制に成功しています。
取り組みとしては、残業時間の事前申請と独自の「5S」の設定です。
残業時間の事前申請制度を設けることで、上司があらかじめ残業の必要性を判断するようにしたところ、過去1ヶ月あたり30時間以上あった残業時間が半分以下に減少しました。
また、独自の「5S」は、整理・整頓・清掃・清潔・しつけを意味しています。
これにより業務環境がきれいになったことで、探し物をしていた無駄な時間を削減し、結果的に労働時間の削減につながりました。
業務環境の整備により、労働時間を削減でき、残業時間の抑制につながります。
評価と報奨制度の連動による残業時間の抑制
株式会社ミートサプライ草加工場では、人事評価と報奨制度を連動させることで残業時間の抑制に成功しています。
具体的には、長時間労働を行う際に伺い書を提出する仕組みを取り入れ、さらに評価・報奨制度を導入したことで、管理職は部下の労働時間を把握できるようになりました。
評価・報奨制度は、ボーナスに影響する制度です。
それにより、部下の無駄な長時間労働を指導し、安易な残業がなくなりました。
結果的に業務効率化による時間外労働削減につながっています。
無駄な残業を評価・報奨制度に影響することで、ボーナス報酬に直接かかわるため、無駄な残業時間の抑制に成功しました。
業務ローテーションによる残業時間の抑制
F社では、業務ローテーションを導入することで、各従業員がさまざまな業務に携われるようになり、残業時間の抑制に成功しています。
業務ローテーションとは、従業員のスキルアップを目的に戦略的に人事異動をすることです。
導入した結果、経験したことがある業務であれば他の業務のサポートができる労働環境になり、業務量の平準化につながっています。
また、他の業務のサポートができる労働環境の構築により、職場のコミュニケーションが活性化しました。
まとめ:残業時間を減らして生産性を高めよう
本記事では、残業時間を減らして生産性を高める7つの対策方法と5つの事例を解説しました。
残業時間が増えてしまう原因として次のことがあげられます。
- 残業ありきの働き方
- 人員不足
- 管理職によるマネジメントの不備
- 繁忙期と閑散期における人員配置の差
これらに対しての次の7つの対策方法を取ることがおすすめです。
- 業務目的の明確化
- 不要な業務の削除
- 優先順位をつける
- ICTツールの導入
- 柔軟な働き方の導入
- 研修・教育制度の導入
- 年俸制やインセンティブ報酬制の導入
残業時間を減らす対策をすることで、結果的に業務の生産性向上につながります。
また、これらの対策を企業で実施する場合には、プロジェクトチームを作成し、業務環境の問題点を分析する必要があります。
しかし、プロジェクト経験の少ないチームの場合、適切に進めることが困難になり、かえって逆効果になることもあります。
そこで、当社ビーイングコンサルティングにご依頼することをおすすめします。
当社ビーイングコンサルティングは、数々の企業でプロジェクトマネジメントを成功に導いてきたプロフェッショナルです。
働き方改革を促進するプロジェクト立ち上げを検討されている方は、プロジェクトマネジメントのポイントについてまとめた以下の資料をご覧ください。