予実管理とは、企業の予算と実績を管理することで、設定した予算通りに計画が進んでいるのかを確認するためのマネジメント手法です。
予実管理を導入することで、予算と実績が大きく乖離している部分を分析して目標達成率を高められます。
しかし、適切な方法で行わなければ、かえって逆効果になってしまうため、どのようなことを意識すべきなのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、予実管理を効果的に行う5つのポイントや適切な進め方を解説します。
プロジェクトの目標が未達に終わることが多いと悩む、プロジェクトマネージャーの方におすすめです。
予実管理とは
企業の予算と実績を管理することを予実管理といいます。
予算実績管理とも呼ばれ、あらかじめ設定した予算とそれに対する実績を比べることで、予算通りに計画が進んでいるのかを管理します。
その目的は、「なんとなく来期の売上が良くなりそう」という属人的な判断・意思決定を避け、定量データによって客観的な分析を可能にする点にあります。
事前に設定した予算に対して、定期的に実績をチェックすることで、目標達成に向けて軌道修正を行えるようになるでしょう。
予実管理を効果的に行う5つのポイント
予実管理を効果的に行うポイントは次の通りです。
- バランスの取れた予算を設定する
- KPIを明確にする
- 予実管理が正確に行える環境の整備
- 予算と実績の分析・対策
- PDCAサイクルを利用する
バランスのとれた予算を設定する
予算を設定する際は、バランスのとれた適切な金額にすることが重要です。
バランスのとれた予算は、企業それぞれによって異なりますが、高すぎる目標を設定してしまうと達成が難しく、チーム内の士気が下がってしまいます。
一方で、低すぎてしまうと予算と実績がかけ離れて適切な分析ができません。
そのため、過去の実績をもとに、目標を達成するためにどの程度の予算が適切かを入念に検討することが大切です。
また、自社事業内容ではどの程度の予算が必要なのかあらかじめ確認しておくことで、効果的に予実管理が行えます。
KPIを明確に設定する
KPIとは、重要業績評価指標と呼ばれ、事業の目標がどの程度達成しているのかを計測するための基準です。
ビジネスシーンでのKPIは、コンバージョン率や新規顧客獲得数など多岐にわたります。
このKPIを明確に設定することで、事業の目標つまり実績が明確になり、実績を達成するために必要な予算を導き出しやすくなるでしょう。
企業が掲げるKPIが利益であれば、利益を高めるためにはどの程度の予算が必要なのか逆算しやすくなります。
また、事業の進捗状況も明らかになり、必要に応じて迅速に対策案を立てられるようになります。
予実管理を行う際には、予算通りに計画が進んでいるのか明確にするためにKPIを設定することが重要です。
予実管理が正確に行える環境の整備
予実管理を正確に行える環境を整備することも重要です。
なぜなら、正確な分析ができないと目標が達成できなくなり、営業利益の低下や社内の連携ミスといった損失につながるからです。
環境を整えるには、後述するエクセルや予実管理システムを活用しましょう。
また、予実管理を正確に行える人材が企業に在籍していなければ、環境を効果的に活用できないため、人材確保や育成も重要です。
予算と実績の分析・対策
予実管理では、予算と実績の差異をもとに分析・対策することが重要です。
分析により、設定した予算通りに計画が進んでいるのか随時確認し、未達成の場合は軌道修正を行うため、新たな戦略を立案することで対策できます。
手法として、エクセルや予実管理システムを利用し、リアルタイムで分析・対策をしていきます。
後述するおすすめの予実管理システムにより、予算と実績の分析・対策を効果的に行えるため、利用すると良いでしょう。
PDCAサイクルを利用する
PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取った、品質管理を改善するためのフレームワークです。
PDCAサイクルを利用することで、予実管理の目的が明確になり、それを達成するための計画を立てられるようになります。
効果的に行うための計画を実行し、その後評価することで、さらに品質向上するための改善案を考案できるようになります。
このサイクルを継続的に繰り返し行うことで、予実管理の品質向上が期待できます。
短期間での改善では効果が薄いため、長期間での改善を心掛けるようにしましょう。
予実管理の手順
予実管理は次の手順で行います。
- 予算目標を設定
- KPIを設定
- 予算と実績の分析
- 分析をもとに対策
- PDCAサイクルを繰り返す
手順を知ることで、実際に予実管理をする際に効果的な対応を迅速に行えるでしょう。
継続すると企業のノウハウとして蓄積できます。
1.予算目標を設定
予算目標を設定する際には、過去の実績を振り返り、どのような目標を設定していたか調査しましょう。
また、予算目標は達成することが不可能なものではなく、努力次第で達成可能な目標を設定すると、従業員の業務意欲を刺激できます。
例えば、業績が伸びている企業で「前年度の売上を維持する」という目標では、容易に達成できてしまう可能性があるため、「前年度より売上を数%高める」といったように設定します。
予実管理の計画を明確にするために重要な工程となるため、慎重に時間をかけて行うことが重要です。
2.KPIを設定
KPIを設定することで、予算目標をより数値化できるようになるため、今後の分析や対策が行いやすくなります。
KPIの設定方法として、予実管理の目的から逆算し、必要なプロセスを抽出していきます。
その後、抽出したプロセスを数値化し、業務に落とし込みましょう。
例えば、KPIに成約率やリピート率などの項目を設定し、達成するべき数値を決めることで分析しやすくなります。
KPIを設定すると、目標となる数値と実際に表れた数値を比較して、課題の抽出とその改善を行えるようになり、効果的な予実管理につながります。
3.予算と実績の分析
定期的に予算と実績を比較し、分析していきます。
注意点として、主観的な分析ではなく、エクセルや予実管理システムを利用した客観的な分析をするようにしましょう。
主観的な分析では、そのときの企業の状況や分析する人物の感情により内容が左右されてしまうため、適切な分析が行えません。
一方で、数字を使った客観的な分析を行うと、企業の状況を幅広い視野で見れるようになります。
例えば、エクセルや予実管理システムを使えば、数値化された内容を可視化できるようになるため、より適切な分析につながるでしょう。
予算と実績の分析の際には、客観的な視点で良い点や改善点などを抽出しましょう。
4.分析をもとに対策
客観的な分析により、抽出された改善点をもとに予算内に計画が収まるように対策をしていきます。
例えば、総利益の項目で実績が不足しているなら、高額な仕入コストや売価の下落といった複数の原因を探り、そのデータをもとに仮説を立てます。
また、予算に余裕がある場合は、別のサービスの展開を考え、企業の利益を高める施策を考えることも重要です。
5.PDCAサイクルを繰り返す
ここまでの手順をPDCAサイクルに当てはめ、予実管理の品質向上を図りましょう。
PDCAサイクルを繰り返すことで、徐々に精度の高い予実管理が行えるようになります。
計画を実行し、その後評価する工程を繰り返すことで、精度の高い分析が可能になり、抽出した課題に対する最善策を施せるようになります。
予実管理を行う際のよくある失敗
予実管理を行う際のよくある失敗は次の通りです。
- 目的が明確になっていない
- 低すぎる予算の設定
- 設定した予算にこだわりすぎる
よくある失敗をあらかじめ知ることで、実際に予実管理を行う際に効果的に実施しやすくなり、失敗する可能性を下げられます。
予実管理を行う際のよくある失敗を詳しく解説します。
目的が明確になっていない
予実管理を行う際のよくある失敗として目的が明確になっていないことがあげられます。
目的を明確に設定していなければ、予実管理を行っている途中で方向性を見失ってしまいます。
現状、組織内でどのような課題が発生しているかを探り、予実管理でそれをどう解決できるか、メンバー間で議論し結論をまとめることが大切です。
低すぎる予算の設定
低すぎる予算を設定してしまうと、目標も低く設定されてしまい従業員の生産性が低下してしまいます。
目標が低く設定されているため、達成しやすくなりますが、企業の成長にはつながりにくいです。
そこで、合理的な予算の範囲で目標を高く設定することで従業員の業務意欲が刺激され、生産性向上が見込めます。
合理的な予算の設定が困難な場合は、後述で解説する予実管理ツールを利用することで経営管理が行いやすくなるため、効果的な予実管理が実現できます。
設定した予算にこだわりすぎる
予実管理が上手くいかない理由として、設定した予算にこだわりすぎてしまうことがあげられます。
設定した予算にこだわりすぎることにより、予算と実績の不一致ばかりに目が行き、計画通り進めなくなります。
特に、予算と実績を一致させるために無理な業務を行うと、売上の水増しや従業員の疲れの原因になりかねません。
対策としては、予算を柔軟に変更できるようにしておきましょう。
市場環境の変化に合わせて、ある程度予算を変更できる仕組みがあると、予算にこだわり過ぎる課題を解消できます。
予実管理に便利な2つのツール
予実管理を行う方法は次の通りです。
- エクセルで予実管理表を作成する
- 予実管理システムを利用する
それぞれの方法を詳しく解説します。
エクセルで予実管理表を作成する
1つ目は、エクセルで予実管理表を作成する方法です。
エクセルは手慣れたツールなので導入しやすいメリットがあります。
また、予実管理表のテンプレートもインターネット上に多く存在しているため、比較的簡単に利用できます。
一方で、予実管理システムと比較すると高度な予実管理が行えないため、業務内容によっては機能不足になる場合もあります。
このようなことから、エクセルでの予実管理は、従業員数の少ない中小企業に向いている方法です。
予実管理システムを利用する
予実管理システムを利用することで、高度な予実管理を行えるようになります。
予実管理システムには、予算管理や管理会計などの予実管理に必要不可欠な機能が搭載されており、システム上で管理できます。
特に、資料収集の効率化やデータベースの一元管理などにより、予実管理に必要な工数を大幅に削減できるようになります。
一方で、エクセルのように手慣れたツールではないため、慣れるまでに時間がかかる可能性があるため、注意しましょう。
高度な予実管理が行える予実管理システムは、中小企業から大企業など規模を選ばずさまざまなシーンで利用できます。
おすすめの予実管理システム
予実管理システムはさまざまな種類があるため、どのようなツールを選べばよいのか、迷ってしまうケースも多いでしょう。
ここでは、おすすめの予実管理システムを3つご紹介します。
BizForecast
画像出典:BizForecast
システム名 | BizForecast |
基本機能 |
・収集進捗管理 |
価格 | 要問い合わせ |
BizForecastは、エクセルと連携して利用することで高度な予実管理が行えるシステムです。
エクセルのデメリットとされている情報共有や情報保全の面をシステムによって解消できます。
BizForecastは、エクセルを利用して予実管理をしていた企業でもスムーズな導入が可能です。
また、予実管理に必要な情報収集や集計機能はもちろん、ワークフロー管理画面から各担当者の作業ステータスも管理できます。
Jedox
画像出典:Jedox
システム名 | Jedox |
基本機能 |
・インメモリDB |
価格 | 要問い合わせ |
Jedoxは、エクセルでは解決しきれない課題をシンプルかつスピーディーに解決できる予実管理システムです。
エクセルデータをCSVで取り込めるため、予実管理を効率的に行えます。
また、学習機能を持つAIが組み込まれており、より優れたプラットフォームの構築が可能です。
また、エクセルから乗り換える際にエクセルアドインを使用することで、見慣れたスプレッドシートでデータを管理できます。
Jedoxは次のような企業におすすめのシステムです。
- 自由度の高い業務データ管理プラットフォームの構築がしたい
- 複雑な業務を一つにまとめたい
- エクセルのインターフェースを利用したい
Loglass
画像出典:Loglass
システム名 | Loglass |
基本機能 |
・編成プロジェクト機能 |
価格 | 要問い合わせ |
Loglassは、アナログ運用の多い経営管理のデータを一元管理できるシステムです。
表計算ソフトで管理している予実管理に必要不可欠な、予算や見込みデータなどのデータをワンクリックで統合し反映できるため、集計作業の効率化や経営の機動力向上が見込めます。
Loglassでは、意思決定に必要な情報も一元管理できるため、質の高い予実管理が行えるようなります。
また、マスタ管理を利用することで、経営状態の変更にもタイムリーに対応し、システム上で反映できます。
Loglassは次のような企業におすすめのシステムです。
- 表計算ソフトのデータ収集・統合が煩雑で経営分析の時間がとれない
- 経営会議でスムーズに議論したい
- 組織再編が生じる中で過去のデータを正しく保管したい
まとめ:ポイントを捉えて効果的な予実管理を実施しよう
本記事では、予実管理を効果的に行うポイントや適切な進め方を解説しました。
予実管理を効果的に行うためには次の5つのポイントを意識することが重要です。
- バランスの取れた予算を設定する
- KPIを明確にする
- 予実管理が正確に行える環境の整備
- 予算と実績の分析・対策
- PDCAサイクルを利用する
上記のポイントを意識しつつ適切な進め方で予実管理を行うことで、効果を最大限に発揮できるようになり、予算通りに計画を進められるようになります。
一方で、予実管理は目的が明確になっていない、低すぎる予算を設定してしまうといった点には注意が必要です。
効果的に予実管理を行うためには、プロジェクトチームを自社に設け、適切な方法で対策しなければ、かえって逆効果になり、失敗する可能性が高まります。
当社ビーイングコンサルティングは、数々の企業でプロジェクトマネジメントを成功に導いてきたプロフェッショナルです。
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