上流プロセスは、プロジェクトの中でも特に不確実性が高く、マネジメントが非常に難しい領域です。
実際に上流プロセスの遅れにより、全体の計画が大幅に遅れてしまうことは、珍しくありません。

しかし上流プロセスにおける機能的なマネジメント手法を確立できれば、プロジェクト全体の成功可能性を飛躍的に高めることが可能です。

上流プロセスにおけるマネジメントがうまく機能しないと、上流プロセスが長期化して下流プロセスのスケジュールを圧迫します。

また、上流プロセスの検討不足に起因して下流プロセスで大きな手戻りが発生する、などの大きな悪影響を与えかねません。

今回の記事では上流プロセスにおける問題点と、上流プロセスマネジメントで重要なポイント2つを解説していきます。

マネジメントの際に理解すべき上流プロセスとは


ここで言う上流プロセスとは、システム開発における要求分析/要件定義、製品開発における研究開発/要素開発/製品企画を指します。

プロジェクトの中でも、不確実性やリスクの高い範囲です。

上流プロセスではそれら不確実性やリスクのバランスを取りながら、より質の高いイノベーションが求められます。

上流プロセスマネジメントで求められること

上流プロセスマネジメントの際に必要とされる要素は、以下の通りです。
  1. 高い創造性と独創性
  2. ニーズや要求の言語化
  3. 実現可能性の探索

各自、開発するシステムや製品の品質を方向づける重要な要素。

まずは「高い創造性と独創性」から、みていきましょう。

高い創造性と独創性

上流プロセスでは、既存の仕組みにとらわれない考えや新しい気づき、アイデアを創出する能力が求められます。
そのためには、マネジメントチームの内因的なモチベーションと高い専門性が必要です。

そして創造性と独創性には、リスクを受け入れる企業文化、リスクを恐れない人間性が要求されます。

革新的イノベーションを起こしやすい社内環境か否かも、課題となるでしょう。

ニーズや要求の言語化

上流プロセスでは、市場やクライアントの要求を洗い出し、開発するシステムを何に役立てるのかを言語化。

真に問うべき問題や要求を言葉にし、明確にします。
作業過程で根本的な問題や応えるべき要求がずれてしまうと、後のプロセスが無駄になってしまう可能性が高いです。

言語化し共有することで、プロジェクト工程が根源から逸れないようにします。

実現への可能性の探索

明確にされたニーズや要求、または新しいアイデアがシステムとして実現が可能か、工程を具体化していきます。

例えばシステムの高速化を図りたい場合、処理速度を既存システムの1/2にすると決定。
そして予算やシステムとして実際に実現できるのかを、探っていきます。

下流プロセスに流す前に、確実性を高めるための作業です。

上流プロセスマネジメント頻発する問題点


上記の図を基に、上流プロセスにおける問題点を解説していきます。

意思決定すべきことが多すぎる

上流プロセスである研究開発や要素開発・要件定義などの範囲は、設計や開発・検証評価などに比べ、非常に不確実性が高い領域です。

上流プロセスでは意思決定すべき事項がとても多く、なおかつ決めていく事自体が困難で時間がかかってしまいます。

結果的に意思決定が長期化し、スケジュールを圧迫する原因となりやすいのです。

詳細な計画工程を立てられない

上流プロセスにおける研究開発や要素開発では、試行を繰り返すことで結果が得られます。
しかし、実際に何度目で必要とする結果が出るかはわかりません。

また試行の繰り返しにより、新たなタスクが生まれる可能も十分にあります。
しかし試行により生まれるタスクの詳細までは、事前にはわかりません。

以上のような状況下では、計画を立てること自体が困難です。
仮に計画を立てたとしても、試行の結果によって計画を修正しなければなりません。
つまり計画を立てることで、後の手間が増えてしまうのです。

上流プロセスマネジメントのポイント2つ

上流プロセスにおける問題点が引き起こす悪循環のサイクルから抜け出すために、ポイントを2つ解説していきます。

「意思決定すべきことが多すぎる」「詳細な計画工程を立てられない」という2つの根本問題の解決を図るためのポイントです。

①決めないことを決める|段階的なフルキット

段階的フルキットによって、すぐに決めなくても良いことを決めて、今すべきことだけに集中して取り組める環境を作ります。

上流プロセスのゴールやマイルストーンごとに、以下を明確にします。

  1. いつまでに
  2. 誰が
  3. 何を決めておかなければならないか

マイルストーンごとに決定事項を明確にすることで、すぐに決めなくても良いことにまで着手してしまうことを防ぎます。

段階的なフルキットによって、しかるべきタイミングで、しかるべき意思決定者が、決めなければならないことを確実に決めることが可能です。

②計画を作らない計画|ベロシティバッファマネジメント

ベロシティベースバッファマネジメントによって、タスクの総規模だけを見積もった大まかな計画とタスクの進捗ペース(ベロシティ)から残日数やプロジェクトの進捗状況を予測/見える化します。

進捗状況を予測/見える化することで、状況に応じた的確なマネジメントの実現が可能です。

タスク規模の見積もりは、実際にかかる期間(〇日)や、工数で表現するのではなく、「『●●を実行する』は10ポイント」といった相対的な表現で行い、総量を算出します。

ベロシティは、直近までのタスク完了実績やリソース数量などから、一定期間内でどれほどのポイント数分のタスクを完了できるかという観点で、算出が可能です。

ポイントを押さえて上流プロセスを適切にマネジメント

今回の記事では、上流プロセスについての問題点と、マネジメントのポイントについて解説しました。

上流プロセスで多発する問題点は、以下の通りです。

  1. 意思決定すべきことが多すぎる
  2. 詳細な計画工程を立てられない

上記を解決し、スムーズにマネジメントをおこなうためのポイントは2つあります。

  1. 決めないことを決める|段階的なフルキット
  2. 計画を作らない計画|ベロシティバッファマネジメント

段階的フルキットとベロシティバッファマネジメントを対策としておこなうことで、より適切なマネジメントが可能です。
プロジェクト環境を整えるためにも、ぜひ実践してみてください。