思考プロセスをご存じでしょうか。
思考プロセスは、制約理論であるTOCのフレームワークのひとつです。
組織の中で働いていると、以下のような課題に直面することがあります。
「違う部署が対立し協力してくれなくて仕事がうまく進まない」
「仕事のパフォーマンスが落ちている原因が何だかわからない」
思考プロセスを利用することで、職場で起きている問題を解決するのに大きな役割を果たします。
今回は、組織で活動している人皆にとってためになる、思考プロセスについて紹介します。
TOCの思考プロセスとは?
思考プロセスは、どのような状況や環境でも改善できる方法論です。
イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット博士が唱えたTOCの考え方が体系的にまとまっています。
企業や組織の目的(ゴール)の達成を阻害する「制約条件」を見つけ、それを克服するための「システム改善手法」と定義され、もともとは工場での生産性アップを目的とされています。
思考プロセスでは、全てを変える必要はなく、変えるべきものをどのように変えていくかが重要です。
思考プロセスの例
例えば、Eという製品を作るのにA, B, C, Dの4つ部品が1つずつ必要であると仮定します。
また、それぞれ部品を1時間当たり以下の個数作ることができます。
A:8つ
B:6つ
C:2つ
D:5つ
この時、Eをより多く作るためにはCの部品製作のパフォーマンスを向上させる必要があります。
なぜなら、C以外のA、B、Dを製作するパフォーマンスをいくら上げてもEを製作するパフォーマンスは上がりません。
1時間当たり、2つのEを制作するにとどまります。
C以外の部品を製作するパフォーマンスをいくら上げても、Eの製作パフォーマンスは向上しません。
この場合、Eの製作パフォーマンスを下げている制約条件は部品Cであるといえます。
今回の例は4つの比較対象のみなのでどこを改善すればよいかわかりやすいですが、実際の現場ではさまざまな要因が絡まって制約条件が見えにくいことがほとんどです。
ですが思考プロセスを利用すれば、どのような環境であっても有効な制約条件を見つけられます。
TOC思考プロセスで問題解決を図る方法
ここでは、思考プロセスで問題解決を図る方向性について説明します。
思考プロセスでは、変える必要のある本質的な問題が何なのかを特定します。
本質的な問題とは、目的達成に向かううえで存在する数々の”好ましくない事実”を引き起こしている根本的な原因です。
例えば、病気に対するアプローチを考えてみましょう。
従来、個人で病気になった場合はたとえば、
- のどが痛いのであればのど飴をなめる
- 悪寒がするのであれば厚着する
- 食欲がないのであれば栄養ドリンクを飲む
という風に、病気に対して対処療法での処置がほとんどでした。
ですが今では病院へ行くこと等で、それらの症状を引き起こしている根本的な原因、つまり制約を特定することも可能です。 そしてその根本原因(制約)がインフルエンザであれば、抗ウイルス剤を使用した治療を行うことができます。
このような考え方が、制約条件の思考プロセスによる解決法です。
組織運営についても同様で、数々の問題が発生していてもその原因はごく少数であるため、同様の解決方法を用いることが可能となります。
TOCの思考プロセスで解決できる問題点
以下は、企業や組織によくみられる問題です。
- 部門間に長年存在する問題/課題が解決しない
- 組織の中に問題/課題が多すぎて何から手を付けたらよいかわからない
- 何年も改善活動しているが、毎回同じ問題/課題が発生する
- 問題/課題の特定作業ばかりで、解決策が実行に移されない
- みんな違う問題/課題を訴えている
問題や課題を放置する組織はなく、分析と解決策の検討する場合がほとんどです。
しかし分析すると毎回同じ問題や課題が発生してしまい、改善活動自体が停滞、もしくは消滅するといったことも少なくありません。
従来の問題解決手法
従来は、各問題をそれぞれ独立したものとして個別に原因を深掘りし、解決方法を検討して実行していました。
しかし、多くの場合はひとつの問題を解決しても他の問題は解決せず、他の問題を解決すると解決したはずの問題が浮上するという、モグラたたきのような状態に陥ってしまいます。
思考プロセスによる解決方法
思考プロセスによる解決方法には、以下5つのツリーを用います。
- 現状構造ツリー
- 対立解消図
- 未来構造ツリー
- 前提条件ツリー
- 移行ツリー
今回は制約を特定する方法と対立解消図について、弊社でコンサルティングをおこなったシャープ株式会社様の例を用いて説明します。
事例の詳しい説明は、以下の記事でも紹介していますので、気になる方は参考にしてみてください。
問題解決は、企業に課せられた宿命のようなものです。
特に取締役や幹部の方は、日々問題解決に追われている方も少なくないはずなので、ぜひご参照ください。
制約特定の方法
長く解決せずに残っている問題には、必ずその背景に対立が存在します。
なぜならば、「対立がなく自分の考え通りに実行できる」ということは、その問題は既に解決していたといえるから。
悩み続けている問題を解決するには、まず「問題の背後にある対立を明らかにする」ことが重要です。
制約の特定には、事業部門/組織のステークホルダーからそれぞれの問題/課題(好ましくない結果)をヒアリングします。
その後、出てきた問題/課題(好ましくない結果)をマッピングします。
問題/課題(好ましくない結果)をどのように解決していくかについて、今回は対立解消図を用いた例を以下に紹介します。
対立解消図
対立解消図活用例(シャープ株式会社様 TOC新春講演会2018発表資料より)
例として、上記画像にあるような企業経営者が「品質基準を上げ続けなければならない」という問題に頭を抱えている状況を取り上げてみます。
対立解消図では「問題の解決」を「対立の解消」と捉えていきます。
以下対立解消図の読み方です。
《対立解消図の読み方》
A「早期黒字化の実現と輝けるグローバルブランドへ成長する」ためにはB「企業の生命線である品質を向上させる」必要がある。
B「企業の生命線である品質を向上させる」ためにはD「品質基準を上げ続けることに時間をかける」必要がある。
なぜならば[仮定:常に『品質第一』を心にし、お客様のニーズに応え、地震を持ってお勧めできるモノづくりをする]から。
一方で
A「早期黒字化の実現と輝けるグローバルブランドへ成長する」ためにはC「新たな価値のある商品を提供する」必要がある。
C「新たな価値のある商品を提供する」ためにはD’「新規技術開発/基礎検討に時間をかける」必要がある。
なぜならば[仮定:驚きを未来の常識に変える一番の発明企業になる]から。
結果として、D「品質基準を上げ続けることに時間をかける」とD’「新規技術開発/基礎検討に時間をかける」がジレンマとなり対立する。
《解説》
この時対立解消図では、要望を両立できる解決手段を考えます。
例えば、画像の対立解消図を見るだけでも以下二つの解決策が思い浮かびます。
- 品質基準を上げ続けることに時間をかけつつも新たな価値のある商品を提供する
- 新規技術開発/基礎検討に時間をかけつつも企業の生命線である品質を向上させる
また、既存の解決策に囚われずに以下のような解決策も考えられます。
- 品質基準がさらに向上した新規技術開発/基礎検討をおこなう
このように考えていくと、対立は実際には対立ではないということがわかります。
問題が要望するところを両立できる可能性を探せば、お互いにWIN-WINな施策が見つかるはずです。
思考プロセスについてさらに理解を深めましょう!
思考プロセスは、今まで放置されてきた組織の問題点も以下の3ステップで解決できます。
- 何を変えるか?
- 何に変えるか?
- どのように変えるか?
思考プロセスを含めたTOCのさらに詳しい内容を、以下資料にて公開しております。
気になる方は、こちらも合わせてご覧ください。