プロジェクトの納期を守るための効果的な管理手法「CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」。
現在プロジェクトの複雑化やサービスの多様化によって、プロジェクト管理の現場ではプロジェクト遅延やコスト増大・品質低下など深刻な問題が発生しています。
それにより、既存のリソースでより高いパフォーマンスを発揮できるCCPMに注目が集まっています。
しかし、CCPMがどのようなものか理解できていない方もいるでしょう。
本記事ではCCPM導入のメリットや導入手順をわかりやすく解説します。
プロジェクト管理に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
導入編:このようなことありませんか?
プロジェクト管理に頭を悩ませる田ヌ田部長ですが、プロジェクトの進捗など現場の状況をきちんと把握できていないため、的確な指示が出せません。
それにより、プロジェクトが納期に間に合わないなど現場では大きな混乱が起こっています。
また、田ヌ田部長のケース以外にもタスク管理がうまくなされていなければ、リソース不足やタスクのやり直しの頻発といったさまざまな問題が起こる可能性があります。
プロジェクトは遅れて当然なのか?
プロジェクト管理をおこなっていると、上記のような問題に直面することがあるでしょう。
きちんと原因を理解して対策を講じれば、プロジェクトの遅れを防止できる場合があります。
一般的にプロジェクトが遅れる原因には、以下のようなものがあります。
【プロジェクトが遅れる原因】
- 作業項目が漏れており、追加で作業が発生する
- タスクが多く、優先順位をつけられていない
- 仕様変更が多く、計画通りにプロジェクトが進行しない
- 段取りが悪く、タスクに着手するまでの待ち時間が長い
また、上記以外にも「学生症候群」や「パーキンソンの法則」なども挙げられます。プロジェクトが遅れる原因についてさらにくわしく知りたい方は、ぜひ当社が開催するセミナーに参加してみてください。
解決編:強力助っ人CCPM
CCPMとは、バッファ(時間的な余裕)の消費具合と進捗率に注目した管理手法です。
各タスクから見積もり期間のバッファを削除して、タスクのつながりの最後にまとめてバッファを設定する点が特徴です。
目的達成を阻害している制約を特定して、その制約に集中して改善をおこなうTOC(制約理論)をベースとしています。
プロジェクトの実行段階では、個々のタスクで発生した進捗の遅れをプロジェクト全体のバッファが吸収することで、バッファの残り具合を「傾向グラフ」というかたちで確認できます。
これにより、進捗率とバッファの消費具合のバランスを常に監視できるため、従来よりも先の状況を見通しやすくなります。
なお、リソースを考慮に入れたプロジェクトが完了するまでの最長の期間を「クリティカルチェーン」と呼びます。
クリティカルチェーンと似たものに「クリティカルパス」というものがありますが、クリティカルパスはリソースを考慮に入れていない点で大きく異なります。
CCPM導入のメリット
この章では、CCPMを導入するメリットを説明します。CCPMを導入するメリットには、以下のようなものがあります。
【CCPM導入のメリット】
- プロジェクト全体に影響を及ぼすタスクがわかる
- プロジェクトの遅れ具合を把握できる
①プロジェクト全体に影響を及ぼすタスクがわかる
タスクが多い場合、着手しやすいタスクを優先して完了させる方もいるでしょう。
しかし、タスクの中にはプロジェクト全体に影響を及ぼすものとそうでないものがあります。
その違いを見極めてタスクに優先順位をつけておかないと、気づいたら取り返しのつかない遅れが発生していたなんてこともありえるのです。
CCPMではプロジェクト全体に影響を与えるタスクを特定できるため、「優先して着手すべきタスク」「後ほど着手すべきタスク」がわかります。
さまざまなタスクから構成される複雑なプロジェクトでも、CCPMを導入すれば、タスクの優先順位を把握することが可能です。
②プロジェクトの遅れ具合を把握できる
プロジェクトの実行段階でCCPMツール(プロジェクト管理ツール)を活用すれば、傾向グラフからバッファの残り具合をひと目で把握できます。
傾向グラフとは、バッファの消費率を縦軸・プロジェクトの進捗率を横軸で表したものです。
グラフ内はバッファの残り具合で色分けされており、緑色→黄色→赤色の順で、納期に間に合わない危険度が高くなります。
グラフが緑色の領域であればプロジェクトの進捗は順調であるため、マネジメントが介入する必要はありません。
しかし、黄色の領域に達すればバッファの回復策を考えて、赤色の領域に達すれば回復策を実行するといった行動が求められます。
また、領域の色だけではなく、グラフの傾きからも進捗状況を把握することが可能です。
グラフが垂直の傾きに近い場合「プロジェクトは進んでいないが、バッファを消費している」ことを意味しており、何か問題が発生していることがわかります。
CCPMの計画手順
この章からは、CCPMの計画手順を解説します。CCPMの計画手順は、以下の通りです。
【CCPMの導入手順】
- プロジェクトを構想する
- ネットワークを構築する
- CCPM式にスケジュールを再構築する
①プロジェクトを構想する
CCPMを計画する場合、まずはプロジェクトを構想する必要があります。
取り組むべき課題などを明確に定義する段階であり、設定したゴールをメンバー間で共有することが重要です。
ゴールを設定する際に決めることは3つあり、それらの頭文字を取って、「ODSC」と呼ばれています。
- 目的:Objectives
- 成果物:Deliverables
- 成功基準:Success Criteria
上記の3つを決めることで、プロジェクトが完成した姿をイメージしやすくなります。
きちんとメンバー間で意識共有がなされていない場合、プロジェクトを進めるにつれて目的から逸脱したり、成果物が期待値を下回ってしまったりする可能性があります。
そのため、5W1Hを意識した目的や成功基準を設定して、そのうえでメンバーへの共有を徹底しましょう。
②ネットワークを構築する
プロジェクトの構想が完了したら、プロジェクトとの基となるネットワークを構築します。
構築する主な方法は、パソコンで構築する方法と壁やホワイトボードを利用する方法の2つです。
ネットワークを構築する手順を簡単に紹介します。
- プロジェクトの構想時に設定したODSCを作業領域の右側に配置する
- タスクのゴールを見据えながら最後から一つずつ書き出す
- タスク同士のつながりが必要十分な関係になっているか確認する
- タスクごとにリソース要件の決定と期間見積りをおこなう
- 作成したネットワークを組織のメンバーに確認してもらう
ただタスクを並べるだけでは、一般的なマネジメントと変わりません。
タスクのゴールを見据えたうえで一つずつ戻りながら抜け落ちがないようにしなければなりません。
その際、タスクの依存関係やリソースなども考慮に入れる必要があります。
③CCPM式にスケジュールを再構築する
ネットワークの構築が完了したら、CCPMの考え方を適用したスケジュールを構築します。
ネットワークの構築段階では、タスクごとにバッファが設けられています。
しかし、タスクは早く終わることも遅れることもあるなど不確実性が高く、正確にタスクにかかる期間を見積もれません。
個々のタスクのスケジュールを細かく守るよりも、プロジェクト全体で辻褄合わせをしつつ、最終的に納期に間に合わせる方が効果的なのです。
そのため、CCPMではタスクごとのバッファを削除して、プロジェクトバッファとしてまとめる作業が必要となります。
CCPM式にスケジュールを再構築する手順は、以下の通りです。
- タスクごとのバッファを一律50%にカット
- リソースの競合が起こっている場合、タスクの実行タイミングをずらして解消する
- クリティカルチェーンを特定する
- プロジェクトバッファをゴールの手前に挿入する
- 合流バッファを挿入する
クリティカルチェーンの長さに応じて、適切な長さのプロジェクトバッファをゴール前に挿入することで、プロジェクトを不確実性から守ります。
CCPM導入の結果
パピ代のアドバイスによりCCPMを導入した田ヌ田部長。プロジェクトの進捗を把握できるようになり、現場のメンバーに的確な指示が出せるようになりました。
また、現場のメンバーも進捗を確認して、頑張るべきタイミングや休んでも問題ないタイミングを把握できるため、プライベートが充実するようになったのです。
このように、複数(マルチ)プロジェクト環境でもCCPMを導入すれば、混乱を招くことなくプロジェクトを進められます。
CCPMは1つの(シングル)プロジェクトで実施しても効果がありますが、複数(マルチ)プロジェクト環境で実施すれば格段に高い効果を得ることが可能です。
マルチプロジェクト環境でのマネジメントは、シングルプロジェクトでの運用とは違ったノウハウがあり、まだ実行していないプロジェクトも含めて先を見通しながら運用していきます。
シングルプロジェクトのノウハウもマルチプロジェクトのノウハウももっと深いものがあります。
世界中で実践され、結果を出しているノウハウを手にして、
プロジェクト成功に役立ててみてはいかがでしょうか。