「クリティカルパスの意味や必要性を知りたい」
「クリティカルパスの特定方法がわからない」
クリティカルパスは、プロジェクトにおけるタスクを線で結んだ際に最長となる経路のことです。
プロジェクトにおいて重要な意味を持つクリティカルパスですが、詳細な意味や特定する方法がわからないと悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事ではクリティカルパスの意味や重要性、特定方法について詳しく解説します。
クリティカルパスの特定方法を理解しておくと、プロジェクトマネジメントを行ううえで適切な納期管理が行えるようになり、チーム全体の納期遵守率を向上できます。
クリティカルパスとは
クリティカルパスは、プロジェクトに必要なタスクを線で結んだ際に最長となる経路のことです。
そのため、クリティカルパスに含まれるタスクの遅れは、プロジェクト全体の納期遅れに直結します。
クリティカルパス以外のタスクに関しては、程度にもよりますが多少遅れたとしても納期には影響せず、逆にどれだけ早くタスクを完了させても、納期の短縮にはつながりません。
プロジェクト管理者がクリティカルパスを把握することで、タスクの優先度が明確になるほか、効率的なスケジュール管理が可能になります。
クリティカルパスの例
ここでは、より具体的にイメージしてもらうため「納豆ご飯の作成」を例にクリティカルパスについて解説します。
まず、納豆ご飯の作成に必要なタスクと各所要時間は以下の通りです。
- ご飯を炊く(50分)
- タレを入れて納豆を混ぜる(3分)
- ご飯に納豆をのせる(1分)
上記タスクを流れに沿って線でつなぎ、表にしたものが下記になります。
表を見ると、納豆ご飯を完成させるための流れとして「タレを入れて納豆を混ぜる→ご飯を納豆にのせる」と「ご飯を炊く→ご飯に納豆をのせる」の2つがあることがわかります。
この2つの流れにおいて最長となる経路、タスクが遅れることにより完成そのものが遅れる経路がクリティカルパスです。
各経路の所要時間を見てみましょう。
- タレを入れて納豆を混ぜる(3分)+ご飯を納豆にのせる(1分)=4分
- ご飯を炊く(50分)+ご飯を納豆にのせる(1分)=51分
「納豆」経路が4分で完了するのに対し「ご飯」経路は完了までに51分が必要です。
つまり、今回の例においては「ご飯を炊く→ご飯に納豆をのせる」経路がクリティカルパスになります。
「納豆」経路に関しては、ご飯を炊きだしてから47分後に開始しても完成に必要な時間に影響はありません。
一方、クリティカルパスである「ご飯」経路はご飯の炊きあがりに時間がかかれば、かかった時間がそのまま完成時間の遅れにつながります。
このようにプロジェクトにおいて最長となり、経路上のタスクの遅れが直接プロジェクトの遅れにつながる経路がクリティカルパスです。
クリティカルパスの重要性
クリティカルパスを把握していない場合、どのようなリスクが生じるでしょうか。
本来、クリティカルパス上において発生したトラブルは、納期に遅れを発生させないためにも最優先で対処する必要があります。
しかし、クリティカルパスを把握せずに対処をしようとすると、プロジェクト全体の進捗に悪影響をおよぼす可能性が高くなります。
最悪の場合、納期そのものが遅れてクライアントからの信頼を失ってしまうでしょう。
また、クリティカルパスを把握していないということは、タスクの重要性や緊急度を認識できていないということでもあります。
結果的に、急ぐ必要のない経路上のタスクに人員を過剰投入してしまうなど、適切なリソース配分ができなくなるかもしれません。
このようにクリティカルパスを把握しているかどうかは、納期やリソース配分などプロジェクト全体に大きな影響を与えるため、非常に重要です。
クリティカルパス把握による3つのメリット
ここでは、クリティカルパスの把握によって得られるメリットを以下の3つ紹介します。
- タスクの優先順位が明確になる
- 効率的なスケジュール管理ができる
- プロジェクトの精度を高めるデータが手に入る
詳しく見てみましょう。
タスクの優先順位が明確になる
クリティカルパスを把握することでタスクの優先順位が明確になります。
抽出したクリティカルパスは、最優先に進めるべき経路を指し示し、重要なタスクとそうでないタスクをあぶり出せるからです。
タスクの優先順位が明確になっていれば、より効率的なプロジェクト進行が可能となり、納期遅延のリスクを抑えられます。
効率的なスケジュール管理ができる
効率的なスケジュール管理が可能になるのも大きなメリットです。
クリティカルパスを把握する過程において、タスクごとの作業日数や必要工数が明確になるため、細かいリソース調整が可能となり無理や無駄がないスケジュール管理が可能になります。
また、詳細なスケジュールを開発メンバーに共有することで、開発に関わるメンバーが自身の役割やプロジェクトにおける影響度を認識できるようになります。
その結果、メンバー全員のモチベーションや納期を守る意識の向上にもつながるでしょう。
プロジェクトの精度を高めるデータが手に入る
クリティカルパスを設定し、当初の計画と実際の進捗を比較することで精度の高いデータを入手できます。
計画と実際の進行における差異を細かく洗い出して得たデータは、今後のプロジェクトにおいて非常に有用なデータとなります。
次回以降、クリティカルパスを設定する際の参考データとして大いに役立つでしょう。
クリティカルパスの特定方法を4ステップで解説
ここでは、クリティカルパスの特定方法を以下の4ステップで具体的に解説します。
- タスクの洗い出し
- タスクの依存関係の明確化
- PERT図の作成
- クリティカルパスの特定
詳しく見てみましょう。
1.タスクの洗い出し
まずは、プロジェクト完成に必要なすべてのタスクを洗い出します。
タスクの抽出精度が低くタスクの抜け漏れなどがあった場合、設定したクリティカルパスが実は最長経路ではなく、計画の大幅な修正が必要といったことになりかねません。
タスクの洗い出しはクリティカルパス特定において非常に重要な作業となりますので、多少時間をかけてでもしっかりと抽出しましょう。
洗い出しの際は、大きなタスクから段階的にタスクを分解し構造化する手法であるWBSを用いることで、抜け漏れの少ない洗い出しが可能です。
2.タスクの依存関係の明確化
次に各タスクの依存関係を明確化します。
依存関係を明確にすることで「Aが終わらないとBは開始できない」「CとDは並行して作業が可能」といったタスクのつながりを知ることが可能です。
3.PERT図の作成
洗い出したタスクや依存関係を用いてPERT図を作成します。
別名「アローダイアグラム」とも呼ばれるこの図は、タスクや依存関係をネットワーク図で表したものです。
上記の図の見方は以下の通りです。
- 丸はタスク
- 丸内の数字はタスクの順番
- 線上の青字はタスクを完了して次のタスクに取り掛かるのに必要な日数
また、1つのタスクから複数の線が出ている場合は並行して作業が可能であることを示しています。
4.クリティカルパスの特定
最後はPERT図を活用してクリティカルパスを特定します。
クリティカルパス特定に必要な作業は以下の3つです。
- プロジェクトスタートから起算して最短でタスクに取り掛かれる日数の算出
- プロジェクト完了から起算して最遅でタスクに取り掛かれる日数の算出
- 1と2の差異を確認
図を用いて解説します。
①最短日数の算出
スタートから起算して、最短でタスクで取り掛かれるタイミングをタスクごとに算出します。
プロジェクトのスタートから起算し、タスク間の青字の日数を足すことで算出可能です。
また、開始前に複数の経路を持つタスクの場合、前のタスクをすべて完了させておく必要があります。
そのため、最短で当該タスクに取り掛かれるタイミングは事前経路において最も長い日数のものです。
上図の場合、「①→③」の経路における所要時間は5日「①→②→③」の経路における所要時間は6日となるため③における最短日数は6日になります。
②最遅日数の算出
次に①とは逆に最も遅くタスクに取り掛かれるタイミングを算出します。
プロジェクト完成から起算して、①で出した最短日数から青字の日数を差し引くことで算出できます。
上図では、四角内の赤字で記載している日数が最も遅く取り掛かれるタイミングです。
③1と2の差異を確認
最後に①と②の差異を確認します。
確認によって、最短日数と最遅日数に差異のあるタスクと差異がないタスクがあることが判明します。
日数に差異がないタスクをつなげることによってできる一連の経路が「タスクの遅れによってプロジェクト全体が遅れる重大な経路」であるクリティカルパスです。
今回の図では「①→④→⑤→⑥→⑧→⑨」の経路がクリティカルパスになります。
クリティカルパスの注意点
先ほども触れましたが、クリティカルパス特定においてタスクの洗い出しは非常に重要です。
しかし、プロジェクト規模によってはタスクの数は膨大となり大きな手間と時間がかかります。
また場合によっては、つい見落としてしまいがちな小さなタスクが実はクリティカルパスだったということもあり、特定する際には細心の注意が必要です。
そのため、クリティカルパスの特定をする際は、作成の時間をしっかりと用意しましょう。
また、プロジェクト管理ツールなどプロジェクト管理をサポートしてくれるツールの活用もおすすめです。
まとめ:クリティカルパスを把握し効率的なプロジェクト進行を
クリティカルパスの意味やメリット、特定方法について解説しました。
クリティカルパスは、プロジェクトに必要なタスクを線で結んだ際に最長となる経路のことです。
クリティカルパス上のタスクの遅れはそのままプロジェクトの遅延につながるため、経路を把握することはプロジェクト進行において非常に重要になります。
今回紹介した特定方法を参考にクリティカルパスを特定して、効率的なプロジェクト進行に役立ててください。
また、プロジェクトマネジメントを適切に行うためには、クリティカルパスの把握をはじめ、やるべきことが数多くあります。
当社ビーイングコンサルティングは、数々の企業でプロジェクトマネジメントを成功に導いてきたプロフェッショナルです。
プロジェクトマネジメントに課題を感じている方は、ぜひ一度下記資料をご覧ください。
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