信頼がイノベーションを加速させたマツダ株式会社パワートレイン開発本部の事例

はじまり

 

2007年10月、マツダ株式会社のパワートレイン開発本部の中にマツダの将来を危惧し、イノベーションの必要性を考えていた2つの流れがありました。

当時のパワートレイン開発本部長と、のちの推進チームの中心となる方々の2つの流れです。

そのイノベーションを望む流れが交わり、マネジメント層の約150名を集めてプロジェクトにイノベーションを起こすCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)の体感ワークショップを開催させていただきました。

 

 

参加された当時のパワートレイン開発本部長や推進チームとなる方々は、

「Yes=いいね!いけそうだ!」
「But…=トップダウンには過去に苦い経験が。この流れは確実に成功させたい」

という2つの思いから、有志によるボトムアップ導入を決断されました。

それは、パワートレイン開発本部のような非常に大きな組織においても、ミドルマネジメントや現場メンバー自身がCCPMを信頼できる状況になれば、トップダウンで全面展開したとしても上手くいく、マツダの文化となっていくはずだという強い思いでした。

ボトムアップ活動

 

約1年以上の間、プロジェクトへのCCPM適用&実践のボトムアップ活動は続きました。

社内での信頼獲得に向けた草の根活動とも言えるもので、私も推進チームの皆様と一緒になって、毎月のように社内セミナーや勉強会、実践事例発表会を開催し、考え方の理解周知やプロジェクトの計画もご支援しました。

また、その実践ノウハウの共有のみならず、そのソリューションの効果を周知することも徹底しました。

適用範囲を絞ったプロジェクトでの実践も行い、マツダ内での実績も着実に増やしていきましたが、この時期は正直大変でした。

推進チームの皆様と一緒になって、どうすれば信頼を獲得できるのか、イノベーションを起こすことができるのか、常に考えて行動していましたが、なかなか大きく広がらない活動にジレンマも感じていました。

ターニングポイント

 

2009年1月、そこにターニングポイントとなるプロジェクトが現れました。

当初「2年」で計画されていたある市場へ投入予定のプロジェクトに対して、トップマネジメント層から企業戦略の面から「1年」で市場投入するというリクエストが来たのです。

そのプロジェクトのプロジェクトマネージャーから相談された推進チームとしては、やりがいのあるチャレンジとして、全面協力することになりました。

フローを意識した計画作成と実行時の課題エスカレーションと迅速な解決を実践し、プロジェクトメンバー一丸となってチャレンジした結果、、、

当初2年のプロジェクトが見事に1年で完了したのです。

パワートレイン開発本部にとって、今までに経験したことのない画期的な成果を得ることができました。それは、CCPMというソリューションへの信頼を獲得するのには十分すぎる成功でした。

トップダウンによるSKYACTIV TECHNOLOGYプロジェクトへの全面適用

パワートレイン開発本部で画期的な成果を得た頃、マツダは市場から大きなプレッシャーを受けていました。当時は、ハイブリッド車を中心とするエコカーブーム全盛期であり、出遅れてしまったマツダには逆風が吹いていたのです。

しかし、エンジンの可能性を追求していたマツダには“SKYACTIV TECHNOLOGYプロジェクト”が密かに進行していました。

あとから聞いたお話ではありますが、マツダのトップマネジメント層は市場へ大きなインパクトを与える大きな可能性を秘めたエンジン開発を当初予定よりも早期に完了させ、市場へ投入することを決断し、パワートレイン開発本部へ指示を出されていました。

実際には、当初予定していたCX-5プロジェクト完了前に、別の2車種にSKYACTIV TECHNOLOGYを利用したエンジンを搭載し、市場へ投入することになったのです。

パワートレイン開発本部をはじめとするマツダが一丸となった大きなチャレンジが始まりました。

そして、その大きなチャレンジのプロジェクト管理にCCPMが全面的に適用されました。

大きな成功

 

その大きなチャレンジは見事成功を収めました。

全てのプロジェクトが予定通り、さらには予定より早く市場へ投入され、その走り、性能は日本のみならず、世界から賞賛されることになりました。

2012-2013日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞をはじめ、世界各国の賞を総なめする勢いでした。世界がそのSKYACTIV TECHNOLOGYで開発された自動車に驚き、衝撃を受け、マツダエンジンへの可能性を感じざるを得ない状況でした。

この大きな成功は、簡単に得られたものではありませんでした。

世界に衝撃を与えたエンジンの開発者であって当時のパワートレイン開発本部長の思いと言葉、推進チームを中心とした徹底的なサポート、必要なアクションをすぐに実行するために社内外の調整に奔走したマネジメント、そして、関わった全てのプロジェクトメンバーの思いが形になったものだと感じています。

CCPMによるプロジェクト計画を納得するまで何度も何度も練り直し、大プロジェクトをどのように管理すべきかとことん議論して管理方法を構築し、実行段階で納期的に危険な状況がわかれば直ぐにマネジメントが対策を実行。

プレッシャーのかかる大変な状況の中、ご一緒できたことは私にとっても非常に光栄でした。マツダの成功が、自分のことのように嬉しく、街でマツダの自動車を見かけるたび、密かに誇らしく思っています。

CCPMへの信頼がイノベーションを加速させた

 

このマツダの成功は、もちろん何よりも、マツダとそれに関係さえた方々の壮絶な挑戦があってはじめて成し遂げられたものです。

しかし、私はこう思っています。

CCPMへの信頼がその挑戦を支え、SKYACTIV TECHNOLOGYという大きなイノベーションの実現を加速させる大きな原動力の一つになったと。

 

もし、ターニングポイントとなったプロジェクトにCCPMが適用されなかったとしたら、もし、それが失敗していたとしたら、社運を掛けたプロジェクトに適用されることはなかった、そのような英断をくだされることはなかったのではないかと思います。

ひとつの確かな信頼が大きなイノベーションを加速させたのです。

現在

 

現在では、パワートレイン開発本部の全プロジェクトにCCPMが適用され、他部門へも波及しつつあります。

そのイノベーションを加速させたCCPMのマネジメントは、マツダの企業文化の一部になってきています。

イノベーションを加速させるマネジメントが、日々自然と行われている、本当に素晴らしいことだと思います。

“Reliability-driven implementation”

 

私たちが日本で培ってきたイノベーションを加速させるためのノウハウの結集、それが “Reliability-driven implementation”、つまり“信頼駆動型インプリメンテーション”です。

この“信頼駆動型インプリメンテーション”による成果はマツダだけにとどまりません。すでに数多くの企業や組織で結果を生んでいます。

 

TOCICO国際カンファレンス2014 ワシントンD.C.で発表されたプレゼンテーション資料は以下からダウンロードできます。

Bottom-up implementation of Multi-Project CCPM -Case study of Mazda, Japan(英語)