IoTブームに考えるテクノロジーの6つの質問 その3

 過去2回に渡り、IoT(Internet of Things)のような新しいテクノロジーの本質を捉えるため、TOCの「テクノロジーの6つの質問」をご紹介してきました。

 ちなみに、ドイツでインダストリー4.0を推進するシーメンスのウェゲナー博士は、製造業が直面する課題として、以下の3つを挙げているそうです。

  1. 効率向上
  2. 市場投入までの時間の短縮
  3. 需要に応じた生産

 これらは今に始まった課題ではなく、“フロー”を重視してきたフォード、トヨタ、そしてTOCが、ずっとチャレンジし続けてきた課題そのものと言えます。

 今回は、いよいよ最終回です。
 まず、6つの質問と、大型機械の交換部品にセンサーを取り付け、破損する前に交換するテクノロジーを例にした、前回までの回答例をおさらいします。

  1. そのテクノロジーの真のパワーとは何か?
    回答例)モノと瞬時に双方向でコミュニケートできる能力
  2. そのテクノロジーを用いると、どのような限界が取り除かれるのか?
    回答例)“点検”を行うまでメンテナンスの要否が分からない中で、在庫量、メンテナンス時期、生産タイミングなどを決めざるを得ない限界
  3. これまでの限界に対応していた古いルールとは何か?
    回答例)
    ・スケジュールに沿ってメンテナンス専門要員を現地に派遣する
    ・定期点検する
    ・所定の耐用時間/距離/回数に達したら交換する
    ・交換部品を早め早めに製造する
    ・現地に近い場所に多くの在庫をストックする など
  4. どのような新しいルールを用いればいいのか?
    回答例)
    ・状況に応じて、メンテナンス専門要員を現地に派遣する
    ・機械を稼働させたまま常に遠隔でモニターする
    ・部品の状態に応じて適宜交換する
    ・部品の状況に合わせて、可能な限り直前に製造する
    ・現地に近い場所に多くの在庫をストックしない など
  5. ルールの変化に合わせて、そのテクノロジーにどのような変化が求められるのか?
  6. いかに変化を起こすのか?

 質問5と6の回答例に進む前に、今回、例を大型機械の交換部品に限定した理由についても触れたいと思います。
 それは一言で「IoT」といっても、産業や使用方法、場合によっては同じ業界でさえ「限界」は異なるからです。
 限界が違えば、おのずと、古いルールや新しいルールも違ってきます。
 そのため今回は、大型機械の交換部品に限定いたしました。

 さて、いよいよ残る2つの質問について考えてみましょう。
 5つ目の質問は、「ルールの変化に合わせて、そのテクノロジーにどのような変化が求められるのか?」でした。

 ルールの変化はひとの行動の変化も伴います。状況によっては、ルールの変化にも段階が必要な場合もあります。
 また、テクノロジー側にも、古いルールを前提とした部分がまだあるかも知れません。そのため、真にメリットを得るために、テクノロジーに微調整やさらなる改良を加えることを検討する必要があります。

 例えば、現地に近い場所に多くの在庫をストックしないとして、どこにどの程度在庫を持つべきなのでしょう。地域倉庫?工場倉庫?どれ位の量をストックすべきなのでしょう?
 新しいルールを1つ取っても、多くのことを考える必要がありそうです。

 そして、最後の6つ目の質問は、「いかに変化を起こすのか?」です。
 例えば、大型機械が稼働している現場に近い場所に、常に多めの在庫を抱えていた状態から、必要最小限の在庫量に変更する場合を考えてみましょう。

 日々ユーザーと接している現場のスタッフは、近くの在庫が減ることで、欠品が生じないかきっと不安に思うでしょう。そのため、実際に在庫を減らすという変化を起こす前に、しっかり説明し、合意を得る必要があります。
 そうでなければ不安だけでなく、実際のオペレーションもちくはぐになり、せっかくのIoTの御利益が得られなくなる可能性もあります。
 この最後の質問は、早く・確実に変化を起こすためにも、しっかりと押さえておく必要があり、決して軽視できないものです。

 テクノロジーの6つの質問が紹介されたゴールドラット博士の著書『チェンジ・ザ・ルール』。その原題は”Necessary but not sufficient”、直訳すると『必要だが十分ではない』です。
 いかに魅力的で強力なテクノロジーであっても、それを生かすルールが伴わなければ、「必要」でも「十分」とは言えないということです。

 ここまでIoTを例に、テクノロジーの6つの質問を紹介してきました。しかし、これは必ずしも新しいテクノロジーだけのものではなく、従来のテクノロジーから新たな可能性を発見するためのものでもあります。
 テクノロジーの本質を捉え、「必要かつ十分」なものにするために、是非、6つの質問を活用されてはいかがでしょうか。

シニア・コンサルタント
工藤 崇

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