クリティカルチェーン誕生秘話

本稿は、著者デイビッド・アプデグローブの許諾のもと、『The Critical Chain Implementation Handbook (Createspace, 2014) の冒頭を抄訳したものです。

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1986年、ノルウェーのエネルギー企業スタトイル社の代表が、ゴールドラット博士のもとに相談に来ました。

北海油田の開発事業者である同社は、必然的にプロジェクト管理のエキスパートになっていました。しかしその卓越した専門知識をしても、プロジェクトを予定通り終えるのは極めて困難なことに変わりありませんでした。彼らは「実は、プロジェクトの期間を予定の4倍に延ばして、あとはただ祈るだけです」と博士に告白しました。

問題はその祈りが届かないことでした。

そして、自分たちが知るプロジェクト管理の知識がすべて書いてあるという2冊の小冊子を博士に手渡しました。博士はそれを見て、プロジェクトではリードタイムが重要で、そのリードタイムを決めるのがクリティカルパスという概念だと知りました。少数のタスクがプロジェクト全体の期間を決めることに興味がわいて、博士は依頼された問題の解決に取り組むことに合意したのです。

 

2週間後、博士はノルウェーのオスロ行きの飛行機の中にいました。まだソリューションが出来上がったわけではありません。

さあ、スタトイル社にはどう言おうか?

博士は聞いた状況をもう一度頭の中で入念に見直すことにしました:

  1. クリティカルパスは組織に驚くほどの集中力をもたらす。それにも関わらず、プロジェクトの期間を4倍に延ばしてどんなに祈ってもいつも遅れる!
  2. 皆そんなに愚かじゃない。特にスタトイル社はプロジェクト管理では世界一だ! 彼らの見積もりはほぼ十分なはずだ……。そんなに大きな倍数を掛けても、まだ時間が足りないなんて、一体なぜだろう?
  3. 時間を食いつぶしてしまう根本的な前提条件を何か見逃しているはずだ……。
  4. プロジェクトの期間は、クリティカルパス上のタスクの期間の合計だ……。
  5. しかし、どのタスクも、実際の期間は見積もりとは違う、それどころか、かなり違うことが多い……。
  6. クリティカルパス上のタスクが見積もりよりも長引けば、プロジェクトもその分長引く……。
  7. 逆に、クリティカルパス上のタスクが見積もりより短くなれば、プロジェクトの期間もその分短くなるはずだ。しかし明らかにそうなっていない! なぜだろう?
  8. 私をどう評価するか教えてください、そうしたら私がどう振る舞うか教えましょう……。
  9. 見積もった期間が約束の期間にされるのなら、十分な“安全余裕”を含むように水増して長く見積もる……。
  10. もし私がタスクマネージャーなら、十分な余裕をもらったから、他に緊急なタスクがあるときは、そのタスクの着手を遅らせてもかまわない……。
  11. 魔法のようにすべて順調にいったからといって、早く終わったと正直に報告すると、次回うまくいかなかったら余裕が確保できない。早く終わっても報告しない方が賢明だ……。
  12. 私がタスクマネージャーで、やることがなく暇にしているとひんしゅくを買うなら、忙しく見せる必要がある。予定より早く終わらないようペース配分しよう……。
  13. これで、遅延だけが蓄積していくことが説明できた……。
  14. しかも、プロジェクトには多くの依存関係と変動要因がある……。そして、同じ振る舞いが繰り返されている……。

飛行機がオスロに近づくにつれて、クリティカルチェーンの最初の重要な前提条件が浮かんできました:

  1. タスクに安全余裕を置かず、プロジェクトバッファと合流バッファに安全余裕を集めなさい! そして、必要な時だけその安全余裕を使いなさい!

 

その後11年間、博士はそのソリューションを拡張・検証しつつ改良してきました。

1997年には、『ザ・ゴール』や『ザ・ゴール2』 と同様のビジネス小説『クリティカルチェーン』を出版しています。

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